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秘密  作者: ゆりか
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過去からの電話

よろしくお願いします。

……他の小説も完結していないものばかりで中途半端ですが……

今回は完結させるぞーー!!

他の小説も頑張るぞーー!!

TRRRRR……

吉沢里香は携帯電話の着信音で目が覚めた。里香は一度伸びをした後、ベッドから勢いよく飛び降りた。部屋のドアを開け、リビングへ行くと父の大輔が座りながら新聞を読んでいた。母の美香は朝食のサラダを作っていた。

「おはよう」

大輔が新聞を読みながら言った。

「おはよ! 毎日毎日新聞読んで……よく飽きないよね。何か面白い記事あった?」

里香は牛乳を注ぎながら大輔に言った。

「新聞は毎日毎日新しい記事があるから飽きることなんてないよ。面白い記事は……フィギュアスケートの浅田真央ちゃんが全日本グランプリで2位になったぞ」

「そんなのテレビでもいいのに……古き良き時代の人なのねお父さんは。でも、真央ちゃんはスランプから脱却できてよかったよね」

二人で何気ない会話を交わしていると、美香がサラダを持ってきながら二人に言った。

「はいはい二人とも、さっさと食べて下さいな」

「はーーい」

里香と大輔は声を合わせて返事した。

ご飯を食べ終わり、里香と大輔は一緒に出て行った。里香の中学校と大輔の職場は方向が一緒なので、二人は浅田真央について雑談しながら歩いた。分かれ道まで来ると、里香が冗談交じりで大輔に言った。

「じゃあな大輔。ちゃんと稼いでくるんだぞ」

「バカ! お前こそちゃんと勉強しろよ」

そう言って、笑いながら大輔は職場の方向へ歩いて行った。里香が通学路を歩いていると、友達の千佳子が里香の方へ走ってきた。千佳子は息を切らしながら里香に言った。

「おはよう里香」

「おはよ!」

「相変わらず里香はお父さんと仲がいいよね」

「そう?」

里香は何気ない答えを返したが、内心ではその通りだと思っていた。友達たちは父親のことを毛嫌いする子たちがほとんどだった。しかし、里香は全然そんなことはなく、むしろ父親の大輔が大好きだった。学校へ着き、教室の扉を開けると勉強している子が数人いるだけだった。

「ちょっと早めに着いちゃったね」

千佳子は里香にそう言うと、

「うん……でもまあ、私たちも勉強しますか。期末試験も近いし」

と里香は答えた。里香と千佳子は隣同士の席に座り、教科書を開いて勉強を始めた。

 授業開始が近くなるにつれて、教室には続々と人が入ってきた。朝練が終わったサッカー部員たちが、チャイムが鳴るか否かのギリギリになって入ってきた。里香と千佳子も自分たち席に戻り、教科書を机から出そうとした時、

TRRRRR……

里香の携帯電話が鳴りだした。里香は慌てて携帯電話をマナーモードにした。特に誰にも気づかれなかったので、里香はホッと胸を撫で下ろし着信履歴を見た。すると、そこには『非通知』と表示されていた。里香はいたずら電話だと思い、すぐに携帯の電源を切った後、カバンにしまって教科書を出した。チャイムが鳴り、担任の安藤が来て授業が始まった。

4時限目の授業が終わり、給食の時間になった。里香は携帯の電源を入れると、着信があったことを示す青い光が携帯から出ていた。里香は携帯を開くと、目を疑った。携帯の着信履歴が87件になっていた。着信履歴を見ると、すべてが非通知の設定で掛けられていた。里香はその異常さに恐怖を覚えた。よほど青ざめた表情をしていたのか、隣の友達が声をかけた。

「大丈夫? 里香ちゃん。具合でも悪いの?」

「うん、大丈夫……ありがとう」

そう言って友達に笑いかけ、友達に心配を掛けまいと、いつもより少しワイルドに給食を食べた。

給食を食べ終わって、里香は父親の大輔に電話を掛けた。大輔はすぐにその電話に出て、里香に質問した。

「どうした? 何かあったのか?」

「その……朝から非通知で何十件も非通知の電話が掛かってきて……」

「……その電話に出たのか?」

「ううん。電源切ってたから出られなかった」

「……里香、今日は授業が終わったら迎えに行くから、俺が行くまで学校の外に出ちゃ駄目だぞ」

「……うん」

「あと、その非通知の電話も出ちゃ駄目だぞ」

「うん。わかった、ありがとう」

そう言って、里香は携帯を切った。そして、里香が再び携帯の電源を切ろうとした時、

BRRRRR……

携帯が震えだした。また、『非通知』からだった。里香は大輔の言葉を思い出して、電話に出ようかどうか迷ったが、結局通話ボタンを押した。

「もしもし……」

震える声で里香は話した。

「……」

「もしもし……もしもし……」

「……」

無言が続いたので、里香は無言電話かと思った。続けて里香は話した。

「もしもし……」

「……私は……加藤大輔が何をしたのかを知っている」

突然、その声が飛び込んできた。その声は、低い女性の声だった。電話はそこで途切れた。里香は『大輔』と聞いて父親の大輔を連想した。だが、苗字が『加藤』なのですぐにそれを打ち消した。気味の悪い電話で里香は怖くなった。しかし、その意味深な言葉が、『加藤大輔』という言葉が、里香の心に強く残った。

授業後、里香は教師の安藤から職員室に呼び出された。里香が職員室へ行くと、そこには大輔がいた。何やら教頭先生と盛り上がっているようだった。大輔は、里香に気付くと教頭との話に区切りをつけて里香の方へ歩いてきた。そして、安藤に挨拶をすると里香を連れて職員室を出た。校門を出た辺りで、里香は大輔に話しかけた。

「迎えに来てくれてありがとう」

「うん。怖くなかったか?」

「ううん。平気」

「当分は、俺か美香が交代で送り迎えするからな。教頭先生とは、その話をしていたんだ」

「そんな……大丈夫なのに」

「うん……だと思うけど、念のためにな。ずっとじゃないから」

「……わかった。ありがとう」

内心、里香もホッとしていた。友達に話すと余計に心配や気を遣わせてしまうし、何よりあの電話は凄く不気味だった。大輔にあの電話について聞きたいことがあったが、『電話に出るな』と言われていたので聞けなかった。

家に帰ったら、母の美香が笑顔で2人を出迎えた。美香は電話のことは何も聞かなかった。里香は美香のそのような振る舞いに感謝した。話すことでまたあの電話を思い出してしまうし、何より母に余計な心配を掛けたくはなかった。しかし、里香には一つだけ美香に聞きたいことがあった。

食事中、大輔が席を外した時を見計らって、里香は美香に質問した。

「お母さん、お父さんて婿養子なの?」

「ん……違うけど、どうして?」

「ううん。なんでもない」

「変な子ねぇ」

そう言って美香は笑った。里香はやはり『加藤大輔』と『吉沢大輔』は別人だと判断した。そのことは、里香を凄く安心させた。

深夜の1時過ぎ、里香は眠ることが出来ずにベッドから飛び出した。どうしてもあの電話が気になり、眠りにつけなかった。喉が渇き、里香は1階の台所へ向かった。すると、リビングに明かりがついていた。リビングを開けると美香が座っていた。里香に気付くと、美香は笑顔でに言った。

「どうしたの? 眠れないの?」

「うん……お母さんは?」

「私も今日は少し眠れなくって。そうだ! 今日は久しぶりに一緒に寝ようか?」

「もう子供じゃないんだから」

「子供じゃないんだったら私のお願いを聞いてよ」

「もう。しょうがないなぁ」

「ありがと、里香。じゃあ、先に行ってて。私は少し後片づけしていくから」

そう言って、美香は束になった手紙を片づけた。美香の瞼は少し腫れているような気がした。里香は美香に質問した。

「その手紙は何?」

美香の手の動きが一瞬止まったが、再び手を動かし里香に返答した。

「私が昔もらったラブレター」

「えっ! そんなに一杯あるの?」

「私はこう見えてもモテモテだったんだから。あなたも、私のDNAを受け継いでるんだからもう少しモテてもいいんだけどね」

「ほっといて。ねぇ、その手紙見てもいい?」

「駄目。これは、お父さんには内緒だよ。お父さんきっと嫉妬しちゃうんだから」

美香は頑固なところがあって、『駄目』なものは絶対に『駄目』だった。里香は手紙を諦めて冷蔵庫にあったペットボトルの水を少しを飲み、大輔と美香の部屋に向かった。部屋のドアを開けると、大輔が寝ていた。美香はその隣に寝転がった。安心したのか急に睡魔が襲ってきて美香が部屋に戻ると美香は眠りについていた。美香は、里香の様子を確認するとソーッと部屋を後にし、外へ出た。そして、先ほどの手紙が入った箱を庭に埋めはじめた。手紙の入った箱を庭に埋め終わり、美香はその上に、カサブランカの鉢を置いた。


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