鞄の中へ
三題噺もどき―きゅうひゃくさんじゅうなな。
黒板の前では、教師が授業をしている。
すらすらとチョークで英文を書きながら、詳しい説明。
……何で英語ってこんなにわかりづらい。
「……」
正直もう、英語に関してはほぼ諦めている。
これも数学と同じように、理解度によってクラスが分けられている。
もちろん、私は数学と同じように英語も苦手なので、一番下のクラス。
なにも理解できない。単語はなんとなく分かるけど。
「……」
黒板の内容をノートに書き写して、教科書を眺めて。
教師が話していることをメモ程度に書いておいて……やっていることは他の授業と同じだし、むしろそれ以上に理解はしようとしているんだけど。
どーにも、もう中学の頃から嫌いだからどうにも。
「……、」
ノートと黒板を見比べて何か違和感を覚えれば、綴りが違うし。
どうしたらこんなミスをするのかと自分ででも思う。
黒板写すのも一苦労すぎる……ほんとに英語って嫌い。
「……」
そもそも、英語の教師が嫌いだからっていうのも、絶対ある。
数学の教師も嫌いだし。私がその教科を嫌いになったのは、教師に責任があると思う。他責思考もいいところだな。
「……」
とりあえず、文句を頭の中で言っていても何も変わらないので。
消しゴムを手に取り、綴りを書き換えるためにノートの上の文字を消す。
もうその間に次に進もうとしているけれど……あの人ホントにこちらの理解度を理解しているんだろうか。
「……」
そんな、たんたんと進められたところで、分かるものも分からない。
じっくりとなんて言っている時期ではないのは分かるが、もう少しゆっくりしてほしいものだ……。まぁ、あの教師は、どっちかと言うと教えたかったのは頭のいい子達だろうからな。そんなのがひしひしと伝わるくらい、こちらを下に見つつ授業をしているのが分かる。
「……」
一部、お気に入りの生徒はいるようだけど。
今日はその生徒が休みだからか、尚のこと。
何のための授業だよ。これだから英語は嫌いなんだ。
「……」
止まらぬ文句をぶつぶつと、心の中で唱え、描き直そうとシャーペンを持ちなおす。
消しゴムを持ったままと思ったが、邪魔なのでそこらに置いた。
―つもりだったのだけど。
「……、」
何を見誤ったが、机のギリギリ端の方に置いてしまい。
そのまま、下へと落ちて行った。
その先にあるのは、いつも横にかけている小さな鞄。
「……」
綺麗にそこに入っていったらしい。
床を見てみるが、消しゴムらしき影は全くない。
椅子の下かもしれないが、生憎スカートで隠れるので見えはしない。
でもまぁ、落ちたような音はしなかったから鞄の中だろう。
「……」
鞄の中には、小腹を満たすために食べるお菓子が入っている。
朝食をいくら食べても、2時間目くらいにはお腹がすくのだから不思議だよな。
まぁ、確かにあまり量は食べていないが、それでも昼食までは保つだろうと思って食べてきているのに。毎朝、吐きそうな思いをしながら。
「……」
昼休みに弁当を食べるときに持っていく分も入っている。
今日は、ましゅまろと、フルーツ味の飴、チョコレートをすこし。
ましゅまろは、あの子が好きだとっていたやつを、たまたま見つけたので買ってきた。
私はあまり食べないから、あの子にあげるつもりではある。
「……」
うん。
まぁ、そんなことは置いておいて。
さっさと消しゴムを取って授業に集中し直さないと。
「……」
なんとなく、黒板を見つつ、授業の流れを見つつ。
右手だけを鞄の中に突っ込んで消しゴムを探し出す。
袋の端が皮膚に当たり、地味に痛いが、消しゴムがないと困る。
なんやかんや書き間違えた……また。
「……、」
こつ、と硬いものがあたり、ゴムの感触だという事を確認する。
指先でつまみ上げ、落とさないようにしつつ、鞄の中から、無事消しゴムを回収する。
授業中に何をしているんだろうか。
「……」
退屈な英語の授業も、もう終わりを迎える。
この後は昼休みだ。
……さっさと終わらないかなぁ。
お題:ましゅまろ・スカート・消しゴム




