夢
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「━━━━━今日から……………………」
1、、、、2、3、4━━━━━5。
5年も経ったのか。
長いようで、短かった。いつの間にか終わったようで、とてつもなく長かったように感じる。
「今日から魔王討伐へ、国外へ出てもらいます。」
「は……はい。」
突然告げられた。5年間、全く変わらないルーティンで、かわらない食事で、変わらない部屋で、変わらない服を着て過ごしてきた。
信じられない。
この部屋を出る?どころか、国外へ出ていくだって?そんなことが許されていいのだろうか、、、9歳のあの日から、僕の世界はこの小さな部屋で全てが完結していた。
この場所こそが今の僕の全てと言っても過言じゃないかもしれない。
そこからいきなり放り出すだって?とんでもない。鳥籠の中で育った鳥は、飛び方は知っていても、生き方は知らないのだ。いきなりカゴから外へ解放されても、自由への喜びなんてものは感じない。だって、自由の意味すら知り得ないのだから。
さっきから、背中がピリピリと痛む。少し反抗的なことを考えすぎたかな。
小さくため息をつくと、前へと歩く。いつも閉じているはずの扉は空いていて、それにどこか不気味さを感じるのと同時に、少し期待も混じった興奮が僕の足のスピードをあげる。
それらに背中を押され、振り返ることなく牢獄を後にした。
「…………それで、僕はこれからどうしたらいいのでしょうか、」
5年間で、僕のことを担当する人はどんどん変わっていった。今ではもう、何人目か分からない。
いつも気だるそうにしていた男は、今日に限っては機嫌がいいようだ。自分の制服の襟を指でいじりながら、意気揚々と言った感じで僕の問いに答える。
「さっきも言っただろ、魔王だよ。魔王討伐。お前の仲間が来るからここで待ってろ。」
「……はい。」
男は舌打ちをすると、いつもの調子に戻って愚痴を始める。多分わざとだろう。僕に聞こえるような大きな声が耳に入ってくる。
「くそ、高給の仕事があるってから受けたのに、これじゃあ割に合わねえじゃねえか。半魔人の相手はストレスが溜まって仕方ないんだよ、まあでも、それも今日で終わりだがな。」
機嫌が良かったのは、今日限りでこの仕事を辞められるからだったのか。それにしても、、半魔人か。僕は、魔力回路以外は人間なんだけどな。
ん?ていうか、仲間?
それに僕のって言ってたような……
「おい、来たぞ。」
急いで男が向いている方向を見る。
そこには、僕と同じ服を着た、同じくらいの歳の男の子と、背の低い女の子が既に立っていた。久しぶりに同年代くらいの人を見て、なんだか緊張してしまう。
それよりも目に付いたのは、2人とも、不思議な髪の色をしていた。男の子の方は、少し薄い青色。女の子は、雪を被ったように真っ白な白髪だ。地毛だろうか?こんな髪色、今まで見た事がなかった。この世界の人々は茶髪が多いらしく、それ以外の色は見たことが無い。
僕が黙っていると、女の子がもう1人に話しかける。
「こ、この人が。さ、最後の一人、、、ですか?」
「多分そうだと思うぞ。俺らと同じ服来てるし、」
2人はゆっくりと近づいてきて、こちらを物珍しそうに見つめる。
「すごい。真っ黒だ。面白い髪色だな」
男の子は、力強いが、優しさを孕んだ声で僕の前に手を出した。
「俺はアクナ。よろしくな。こっちは………おい、自分で言えよ。」
「わっ、、私は……イサノ。、、です。」
かなりぎこちなくなりながらも、俺は精一杯の返事をする。
「……よ、よろしく」
…………え、がお?
僕に笑顔を向けてるのか?一体どういうことだ?
気持ち悪くないのだろうか…………しかしまあ、嘘だとしても人に好意的に笑顔を向けられるのは、、、悪い気分じゃないな、
「僕は、、まこと、僕は斎藤誠、です」
もうほぼ忘れかけていた自分の名前を、久しぶりに思い出す。そうだった。僕は地球に生まれた斎藤誠だったんだ。
「まこと、か。いい名前だな。」
前に出された手を握り返す。しかし、男の子、、アクナは嫌な顔1つしなかった。いいのか?僕は半魔人だぞ?気持ち悪いとは思わないのか?
それにしても、一体何者なんだ。この人達は他の人達とは何か違う。それに、僕と同じ服を着てるし……
「混乱してるよな。わかるよ。俺達もついさっき色々と知らされたんだ。」
隣でイサノが、素早く頷く。…………こんな感じの動物いたな、、、なんて言ったっけ、ああそうだ。「うさぎ」だ。うん、小動物だな。
「一体、何を知らされたんですか。」
「えっと、まず。魔人の魔力回路に適応した子供は1人ではなくて、3人だったって事だな。」
「……3人!?」
僕以外にあと二人もいたのか!同じ境遇の子供が!
会ってみたい!一体、今どこで何をしているのだろ━━━━━━━━━━
……いや待てよ、、、、なるほど。そういう事か。今ちょうど、目の前に2人。「仲間」がいるじゃないか。
つまり、この3人で魔王を殺して来いと言いたいわけだ。魔力回路に適応することが出来た、異界の子供3人に、、
「理解できたようだな。」
「今でも、ちょっと信じられないな。」
どうやら僕は、「ひとりじゃない」らしい。彼らは僕と同じなんだ。それだけで、僕の中を何年も渦巻いていた孤独が消え失せる気がした。その時、後ろから大きな声が響く、
「おい!おまえら、準備出来たぞ。こっちに来い」
一度も開いている所を見たことが無かった大きな門。その扉がゆっくりと開いてゆく。強い陽の光がそこから漏れ、僕らの牢獄を明るく照らした。




