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歓声

 僕たちはとりあえず北に向かって歩いているが、未だに人間領から出ることができていない。

 原因としては、僕らがかなりの迂回をしていることが大きい。


 地図に載っている人間の国や村などは極力避けるようにして、できるだけ森の中を進むようにしている。


 もうあんな目には遭いたくないものだ。


 おかげでここまで人の気配は一切ない。それはそれで少し不気味だが、背に腹はかえられないだろう。


 今思えば、僕らの旅は森の中から始まった。あの時はいつまで歩けばいいんだという気持ちが大きかったが、今となっては森の中は安心できる物になっていた。


 そんなこともあり、地図は今や必需品となっている。そして、最近みんなで地図を見ていて気づいたことがある。


 なるべく目立つように、人間の国には赤いインクで印をつけた。するとどうだろう。地図の半分以上が赤に染まった。


 圧倒的に人間の国がほかの種族のものより多いということだ。話に聞いていた、エルフやドワーフと言ったような人間ではない種族の国は、数える程しか存在しない。


 彼らは人間と違って、僕らのことを受け入れてくれるのではないかと考えたことがあったが、どうやら前例があったらしい。


 やはりお得意の迫害主義のようで、ゴブリンなどに対しては魔物扱いのスタンスを崩していないようだ。

 僕らが行っても同じ目にあうだけだろう。


 結局は皆同じって事だな、ある意味ではね


 そんな事より、もう1つ大発見があったのだ。


 この森には「石ころ」がいるのだ。いつも通りアクナが見つけて指さすと、イサノは、これもまたいつも通り嬉しそうに駆け寄った。


 やはり懐かしいそのビジュアルと奇妙な動きは健在で、僕らを見るなり全速力で逃げていった。


 イサノはまた石ころを捕まえて遊んで、


 僕とアクナは顔を見合せて苦笑いをする。


 多分、いつまでもこの感じは変わらなんだろうな


 それも悪くない。「ちゃんと逃がしてやるんだぞ。」僕らは、いつも通りそう言った。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 ある日、今日も三人で山道を歩いていた。代わり映えしない景色だが、そのおかげか、ちょっとの変化にも敏感になった。


 どこかからか物音がすると、


 ああ、これはあの動物の足音だな。とか、空気が薄くなってくると、今はどのくらいの高さにいるんだなとか、そういうのだ


 その日は全く聞き覚えのない音がした。


 そういう時は大体いつも好奇心が勝つ。戦って負けるようなことが無いからかもしれない。

 警戒心と言うのが皆無なのだ。


 まあ実際、もう人間領にいるような動物に負けることは絶対にないだろう。


 話を戻すと、


 その日は全く山で聞き覚えのない音がしたんだ。


 当たり前だよな、普通はこんな山奥にいるはずも無い生物なんだから、


 とにかく、僕らは音の主に近づいた。


 今思うと、これが僕らの過去最低の過ちだったと思う。


 どうしょうもなく馬鹿な、過ちだ。



「にん、げん、、?」


 思わず口から声が漏れた。動揺して体が動いてしまった。それは僕だけではなく、三人ともだ。


 こんな山奥に人間?ありえない。人間がこんな場所に、、、


 考えつく理由は一つだ


 盗賊、


 彼らは山奥を拠点にしていると聞いたことがある。だからといって遭遇するなんて、、、


 いや僕たちが自分から近づいたんだ、、


 何はともあれ音を出してしまった。早く逃げないと━━━━━


 目が合った。その瞬間、未だかつて無い程の恐怖に襲われた。


僕の体は凍りついてしまった。

 

向こうも驚いたようだが、すぐにこちらに武器を向けると、「う、動くんじゃねえ!!」


 と大声を出した。


 そう、動くな。と


 つまり、人間から動くなと命令されたのだ。

 ご存知の通り僕らには刻印がある。人間の命令には逆らえない。それが例え、盗賊であってもだ。


 三人全員が固まる。


 すぐに僕らを人間たちが囲った。囲まれて気付く、この盗賊、ものすごい規模だ。目に映るだけで四十人はいる。


 こっちに武器を向けながらジリジリと近づいてきた。そして動かない僕たちを見て、話し合いを始めた。


「お、おい、こいつらの髪色、魔人じゃねえか、」


「気持ちわりい、なんでこんなとこにいんだよ。」


「……お、でも一匹女だぞ!」


「おまえ、、いくら女だからって魔人はありかよ、」


「いや、でも聞いたことがあるぞ、、」


 一人の男がニヤリと笑った。


「帝国の貴族はむしろ魔人の女の方が興奮するっていうド変態がいるみたいだぞ」


「はは、まじかよ、そりゃ傑作だな」


「しかも、こいつ面はいいじゃねえか!」


 それを聞いた、集団の中で一際大きな男が大声で叫んだ


「高く売れる事には違いねえなあ!女ぁ馬車に詰め込め!」


 必死に動こうとするが、体が言うことを聞かない。刻印が焼けるように痛い。しかし今はそんなことは言ってられない。


 痛みなんて今はどうでもいい。しかし、いくら抗おうとも体が動かない。


「やめろ、離せ!」


 一人の男がイサノ腕を掴んだ。魔人に触れるのが嫌なのか、わざわざ手袋をつけている。


「ほか2人はどうします?」


「あーーー、、、殺しとけ」


 うーーす。と、やる気のない返事とともに盗賊がこちらに歩み寄ってくる。

 しかし体は動かない。


 くそ、これじゃあいくら強くたって意味が無い。


「なあ、まこと、」


 アクナは何故か冷静な声で語りかけてきた。


「なんだ!動けそうか?!」


「……ああ」


「え?!」


 思わず声が出た。僕が全力でやっても無理なのに、どうやって、、、


「………前に話したよな、俺は呪いへの耐性があって、少しくらいなら刻印にも逆らえるって、、、」


 次の瞬間、


 目の前の盗賊二人の首が飛んだ。


 血しぶきを上げながらふたつの胴体は崩れ落ちた。


「あ、アクナ、」


 アクナの目から血が流れている。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「刻印、発動してないのか?」


 そんな僕の問いに、少し自慢げな声が帰ってくる。


「いいだろ、実は俺、生まれつき呪い耐性があったみたいで、ちょっとくらいならこれに抗えるんだよ。まあ、やり過ぎると頭が焼き切れるんだけどな。」

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 会話を思い出し、今の状況をただ喜ぶことはできないと悟った。


 しかし、アクナは止まることなく盗賊を殺していっている。目にも止まらぬとはこの事だ。


 イサノを捕まえていた男の首が飛んだのと同時に、僕はそこへ駆け寄った。


「もういい!!アクナ、もう動ける!!逃げよう!」


 アクナの速度はどんどん落ちていき、今では盗賊と互角になっている。力がだんだんと無くなっていっているんだ。


「だめだ!!!この状況で人間からは逃げられない!!」


「でも!!、、、このままだと、」


 僕にも呪耐性があったら良かったのに、、、

 一緒に戦えたらどんなに良かっただろうか、、、


「あれがあるだろ!ほら、水魔法のロケットだよ。ちょうど二人乗りだろ」


「二人乗りじゃあダメじゃないか!!僕らは三人だろ?!!」


 身体中から出血しながらアクナは叫んだ。


「動けるうちに早くしろ!!!」


 また人間から命令される前に早く逃げないといけない。だから早く、アクナも━━━━━━━━━


「早くしろ!!!!」


 目や鼻や耳からも血が流れていた。イサノは泣いていた。僕が、決めないといけない。


 決めるって何を?


 ここに残って何ができる?


 アクナの稼いだ時間を無駄にする?


 気づいた時にはイサノの手をとっていた。浮遊魔法を発動した。下を向く、アクナは僕らを見て笑っていた。剣を捨て、僕らに向かって手を振った。

 僕らも手を振った。笑顔は作れなかったけど、大きく手を振った。


 アクナに向かって剣が振り下ろされた。下で盗賊たちの歓声が聞こえる。僕らは目を逸らした。


 水魔法をいつもよりも強く発動させた。


 僕とイサノは二人で勢いよく飛んだ。









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