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北への道のり

 街からとにかく離れるために、山の中を黙々と歩き続けた。北へ、北へ、目的は変わらない。僕らは魔王を殺さなくちゃいけない。

 1時間ほどたって、自分が信じられないほど空腹なことに気がついた。


 そう言えば、僕は魔力枯渇で気絶していたのだ。その間は当然何も口にしていなかったはずだ。


「あのさ、僕ってどのくらい寝てたの?」


「……2日くらいかな、随分魔力使ったんだな、」


「2日?!」


 よくそんな寝てこんなにも動けていたものだ。


「私が、回復しなかったら、ちょっと危なかった、」


「……ありがとう」


 二人はそこまで言ってハッと何かに気がついたようだった。


「そう言えばまこと、なんも食べてねえじゃねえか。腹減ったろ。」


 言いながらアクナは街で買った丈夫なリュックの中からガサゴソと何やら探り出した。


 すぐにほれっ、と渡されたのは、パンと干し肉だった。これも街で買ったものだった。

 このふたつはどうやら保存が聞くらしいと聞いてから、ちょくちょく買いためていたのだ。


 正直パンも干し肉も硬いし、味も薄い。美味しいと言えるものではなかったが、空腹の腹はどうやらそれでも歓迎のようで、すぐに食べきってしまった。

 本当に腹が減っていたからか、味も気にならなかった。


 一息つくと、また僕たちは立ち上がり、歩き出した。あまり会話はなかった。

 何を話していいか分からなかったんだ。


 この三人でいる時に気まずさを感じたのは初めてだった。だからさらに戸惑って、気まずさは増していった。


 今はただ歩くことだけに集中していた。


 その日は本当に必要最低限以外の会話をしなかった。僕たちは、お互いにすら怯えていたのかもしれない。いちばん信用し合っていたはずなのに、、、


 人が少し怖くなっていた。と言うのには少し語弊があるかもしれない。どちらかと言うと、人と関わるのが怖くなっていた。


 森で大きな生物と遭遇した時、しかし僕らの連携だけは健在であった。

 戦いにはぎこちなさは一切存在しなかった。


 その夜。僕らは寝袋で眠った。


 森で寝るのに体が痛くならないのは初めてだった。

 街でいろいろ買ったおかげで僕らの生活は何かと不便が無くなった。


 正確な地図のおかげで同じところをぐるぐる回ることはなくなったし、新しい服を買って、もうボロボロな見た目では無くなったし、皮袋で水を持ち運べるようになったし、虫除けの薬のおかげで刺されることはなくなった。


 でも


 なんだか生きずらくなった。


 会話が無くなったし、アクナは前しか見ていないし、イサノはなんだか怯えているようだった。


 だがこんな状況、そう長くは続かないだろう。なんたって僕らは、この三人じゃないと成立しないんだから。これまでの時間だってあるんだ。


 そう簡単に崩れるようなものでは無い。


 そう思っていたが、次の日も次の日も、そんな様子は変わらなかった。


 どうやら、僕が思っている以上に事態は深刻な様だ。


 しかし、確かに最初の方は僕も会話する気分に慣れなかったし、何を話していいか分からなかった。


 でも、今は違う。


 2人といつものように話したい。前みたいに、


 でも、時間が経ちすぎた。あるいはほか2人はそうは望んでいないのかもしれない。


 僕が何も行動を起こせないまま日々がすぎていった。


 しかしこの空気を何とかしたいと思っていたのは、やはり僕だけではなかったようだ。

 そして結局、いつだって最初に手を差し伸べてくれるのはアクナだった。


「なあ、まこと。」


 ある日突然話しかけてきたアクナに僕は酷く驚いた。ギクシャクした感じがずっと続いていたからだ。


「ど、どうしたの」


「なんか、最近俺たちずっと気まずい雰囲気だろ?」


 驚いた。なんでもないように言ってはいるが、それを言うにはかなりの勇気が必要だっただろうに、


「……そうだね、確かに」


「俺はな、お前らと前みたいに話したいんだ。まことは違うか?」


「いや、違くないよ!」


 違うはずがない。二人は僕にとって、唯一の仲間なんだから。


 良かったよ。と、アクナは笑いながら言った。しかしすぐに真剣な顔になった。

それからすぐに、前までの様ないつもの調子に戻って話し始めた。


なんだか少し懐かしかった。


「問題は、イサノなんだ。」


「……そうだね。」


 あれから彼女は、人との関わりに怯えているところがある。


 無理もないだろう。


 しかしそれは僕たちに対してもそうだった。彼女はいつも何かに怯えているようだった。


 僕たちの、「イサノの心を開く大作戦」が始まった。


 僕たちは何があってもイサノの仲間であり、友達だと言うことを知ってもらわなくてはならない。


 だが、そんな事を信じてもらう方法なんてあるのだろうか。

 ただでさえ、彼女は人間不信みたいな状態だと言うのに、


 ということで、まず初めは話しかけることから始めた。


 おはよう。おやすみ。みたいな挨拶程度だが、彼女は小さな声で返してくれた。完全に拒絶されているわけでは無いようだった。


 ホッと胸を撫で下ろすが、やっぱり会話を避けたいのか、すぐにそそくさと早足になってしまう。


 こんな時普通に話しかけていいものなのだろうか。


 そもそも相手は女の子である。僕たちに勝手がわかるはずがない。全員のコミュニケーション能力の低さが露呈したのだった。

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