探偵
どうやら最初から裏に回ったほうが本命の部隊だったらしい。よく考えてみたら、松明を光らせながら堂々と攻めてきたら夜に攻めてくるメリットがない。正面の敵がわざと光を放ち、僕らの気を引いているうちに、闇に紛れて裏まで回ってきていたのだ。気づくのがもう少し遅かったらその奇襲をもろに食らっていただろう。
アクナは敵を前にして唖然としていた。思ったより数が多い。それにかなり強い。自分にとって一体一体は造作もないが、量が多いことが問題だ。
近接戦闘のメリットは、個で圧倒的に強い敵相手に一対一で有効に戦えるところである。しかし大量の敵が相手となると分が悪くなる。対して魔法は、高い火力で広範囲に攻撃を放てる。つまり多数の敵に友好的に戦うことができる。
そんな余計なことを考えているうちにやつらはすぐに門を破った。
目の前には大量のゴブリン。まことは今正面の門で戦っている。さっき言ったように分が悪い相手ではあるが、今回は俺がかなり頑張らないといけな――――
身構えた瞬間、背後からとんでもない量の矢が飛んできた。しかし、それは俺を狙ったものではなかった。それらはまっすぐ敵のゴブリンに向かって飛んでいく。それと同時にもはや聞き取れない怒号が波のように押しよけ、騒がしい足音が迫ってくる。
なんだ?と振り返ろうとする。それより先に横を屈強な兵士や冒険者が走り抜けていった。それから少しもしないで彼らとゴブリンの戦いが始まった。少しの間呆気に取られてその様子を眺めていた。
すっかり頭になかったが、そういえば彼らは仲間で、ゴブリンという共通の敵を持っている。俺は一人で戦っているわけではなかったのだ。
そうと分かった時、まるで自分が無敵になったかのように感じた。出所のわからない幸福感と万能感で俺の中は満たされていった。
自分たちは孤独な存在ではなく、一つの大きな組織に属しているという状況は俺の心補奮い立たせた。
気がつくと、俺は即座に剣を作り出し、彼らのように戦場に飛び込んだ。
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空を見上げる。
もうすでに朝日は昇り始めていた。
光が大地を照らすのと同時に、目の前の惨状がだんだんと姿を現してゆく。
強力な魔法によって大きくゆがんだ平原に、数時間前までゴブリンだった肉の山ができていた。
そこにはもう動いているものは一つだってなかった。
アクナたちはうまくやっただろうか、、、魔力が枯渇して疲れ切った体を引きずりながら壁に取り付けられた梯子に足をかけ、一段ずつ下がっていった。
「おーーーい」
遠くから声が聞こえた。
よく知った声だ。
「だいじょうぶだったか?」
「そっちこそ、大丈夫そうには見えないな、」
大仕事の後だったが、アクナはいつも通り飄々としていた。
「魔力を使いすぎただけだよ、外傷はない。」
「念のため後でイサノに見てもらえ」
「そうするよ、、、」
とにかく、何とかなったようだ。
めまいが止まらない。あー、くそ、魔力を使いすぎた。
一度眠ったら、これは、しばらく、起きれそうには、、、な、い
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最近見る夢の話をしよう。
まずこの夢のスタート地点はいつも決まっている。アクナとイサノに出会う前の、あの牢獄だ。この場面はいつも僕の記憶を鮮明に呼び起こしてくる。
簡単に言うと、いやな気持にさせてくる。
しかし場面はすぐに切り替わった。
森の中だ。隣には二人がいる。三人で冒険して、焚火を囲んで、森を抜け出して、、、、、
そして次の場面は、、、、、
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騒がしい。
外が妙に騒がしい。
ここは、、、、ああ、いつもの宿のベッドだ。
起き上がらずに横を確認する。
この部屋には誰もいない。
扉の奥から人の声がする。声を荒立てているようだ。
ここからじゃ何を言っているのか聞き取れない。
重い体を無理やり起こして、ベッドの下にそろえてあった靴を履き、最低限の身支度を終えると扉を押し開いた。
「近寄るんじゃねえ半魔人!!!!!!」
次の瞬間、僕の耳にそんな言葉が飛んできた。
しかしそれは僕に向けらたものではなかった。
部屋の前で、アクナとイサノに向かって一人の男が怒鳴りつけていたのだ。
そしてその声と、彼の顔を見て一瞬で確信した。
もうこの街にいることはできないと、、、
その男の顔には見覚えがあった。あの一瞬だけだったが、鮮明に覚えている。ゴブリンの国から救い出した、あの時の男だった。
彼は僕らの正体を知っている。
言い逃れはできない。
男はすぐに僕の存在に気が付くと、大声を上げた。
「 お、お前もだ!!!隠れてないで出てきやがれ!!!」
その言葉に、僕は従うしかなかった。
騒ぎにつられるように、この宿中の人たちがやってくる。中には僕たちの知り合いもいた。イサノと仲がいい女の子も野次馬に加わった。
男はここぞとばかりに声を張り上げる。
「皆さんっ!!!!あなた方は騙されていますっ!!!」
なんだなんだとさらに人が集まってくる。男は僕らを得意げに指さした。
その表情は、まるで極悪犯の正体を突き止める探偵のようだった。
「皆さん勇者は知っていますか??魔人の一部を取り込んだ汚らわしい存在ですっ!!!」
「その勇者こそっ、この三人組なのですっ!!!!」
野次馬たちは一斉に僕たちのほうを見た。そこには困惑とも、不信感ともいえる感情が渦巻いていた。




