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 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈外が騒がしくて目が覚める。あのまま眠ってしまったようだ。ゆっくり起き上がって辺りを見渡す。


 相変わらずの血の匂いが鼻をツンとさした。でも眠ったおかげか頭は妙に冴えている。

 横になっている二人に声をかけると、すぐに起き上がってあくびをした。


 二人の「おはよう」に対して、自分もおはようと返しながら外を覗く。

 何やら門の近くに人だかり、ならぬゴブリンだかりができていた。


「ねえ、なんだろうあれ。」


 目を細めて見てみるが、ワチャワチャしていて分かりにくい。狭い窓から顔を出さないようにして外を覗き込み、三人でそれを見ていると、だんだん何が起きているのかが理解できた。


 ゴブリンの集団の中心には人間がいた。

 というより、人間が一人道の真ん中に立てられた太い丸太に縛り付けられていた。


 それを中心に集まったゴブリンが、彼目掛けて石やら何やらを投げているようだった。ゴブリンたちは何か大声で叫んでいるが、何を言っているかは分からない。

 遠くて分かりにくいが、随分とボコボコにされたようだ。石がぶつかりそうになってもピクリとも動かない。あるいは、彼はもう死んでいるのかもしれない。彼からはあまり生気を感じられない。


 あの人はどうしてあんな所に縛られているのだろうか、どこかから拉致されたのか、それとも攻めてきた人間の兵士を捕虜にしたのか、、、


 とにかく、このまま放っておけばあの人間はタダではすまないだろう。最悪、というか確実に生きては帰れない。

 そして僕たちは人間を助けなくてはいけない。見捨てることを刻印は許さないだろう。というか、刻印がもう既に僕らに彼を助けろと訴えかけてきているようだ。

 僕たちは常に人間のために動かなくてはならない。それが例え敵地のど真ん中だとしてもだ。


 北の門も目前だと言うのになんとも面倒なことになった。


 ともあれ、善は急げだ。時間が経てば経つほど状況は悪くなる気がするので、さっさと救出してさっさと脱出だ。


 そして、脱出と言ったらちょうどいい方法があることを僕たちは同時に思い出した。


「ロケットだ!」


 例のボツになった移動方法である。あれなら一瞬で離脱することができるだろう。


「あそこに飛び込んで、あの男の縄を切ったらそいつと一緒に即脱出だな。」


「でも、君らはどうするの?あれで飛べるのは2人までだけど、、、」


「俺らは潜伏スキルで一足先に外で待ってる。安心しろ、どんな飛んでき方しても受け止めてやるから」


「け、怪我しても私が治すから、大丈夫」


 なら安心だ。と笑いあったあと、イサノのバフを一通りつけてもらった。


「じゃあ、外で落ち合おう」


「……りょーかい」


 僕は、狙いを定めて窓を飛び出した。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 着地と同時に地面に強い衝撃波を加えて、まわりのゴブリンがそれでよろめいたすきに縄を焼き切った。


 ここまで完璧


 倒れ込んできた男を抱え、すぐに浮遊魔法を発動した。しかし、地面の揺れでよろめいていたゴブリンたちもすぐに立ち上がって、手に持っていた石を思い切り投げつけてきた。

 いくつか当たって強い痛みが走るが、我慢して魔法を続行した。


 ちょうどいい高さまで上がると、例のごとく強い水圧で水を放射した。

 作戦通り、僕は男を抱えたまま門を飛び越えて遠くまで飛ぶことができた。門の外は今まで見てきた景色と違って、森でも石の家でもなく、広い草原だった。なんだか視野が一気に広がった気分だ。

 しかしこれも例のとごく、勢いが制御できない。すごいスピードで地面が近くなってきている。


 と、思った時、僕らのスピードに追いついてきて、地面に着く前にアクナが僕らを受け止めてくれた。やっぱりすごい運動神経だ。


「助かったよ」


「結構ギリギリだったけどな、」


 ともあれ作戦は成功だ。抱えてきた男をその場に下ろす。草原の中でも背の高い草が多い場所だったようで、屈めば身を隠すことができる。

 そこにイサノが遅れて走ってきた。


「アクナ、早すぎ、、」


 急いできたようで、息が切れている。


「あ!まこと、怪我してる。いま、治してあげる。」


 それでも、僕の傷にはすぐに気づいたようだ。


「……ありがと、ついでにこの人にもかけてあげて、」


 ……さすがイサノだ。みるみるうちに僕らの傷は癒されていった。

 この人はまだ息をしていたので、イサノの回復魔法があれば完全復活だろう。傷を治したら気絶から目を覚ますのをその場で待つことにした。


「それにしても、ここなんだか落ち着かないね。」


「そうだな、周りに木がないとなんだか裸にされた気分だ。」


「今までずっと森にいたからね、」


 イサノが周りを何度か見渡して、少し落ち込んだように言った。


「石ころも、いない」


「たしかに、森にはどこでもいたのに、」


 なんだか寂しい気分になった。だけど、やっとあの森を抜けたという嬉しさもあった。

 本当に長かったが、まだ魔王は遠い。旅はまだ終わってはいないのだ。


「ここは、どこだ?」


 見知らぬ声がどこからともなく不意に聞こえてきて、心臓が飛び出しそうになったが、すぐに全員が臨戦態勢になって周りを警戒した。


 そして振り返り、すぐに声の主が誰だかわかった。


 さっきまで気絶していた男である。困惑して、周りをキョロキョロと見渡していた。

 僕は恐る恐るだが声をかけた。


「……大丈夫ですか?」


 僕の声を聞いて、男は初めてこちらを認識したようだ。僕らの方に目を向けて、質問をしようとする。


「一体何がおきて━━━━━━━」


 そこまで言って、その男は固まった。


 目を見開いて僕らを見ている。段々と、彼の顔色が真っ青になっていった。


「あの、ほんとに大丈夫ですか?」


 僕は男に手を差し出す。しかし、男はその手をすごい勢いで払い除けた。

 パチンッという鋭い音と、男の「近寄るな!!!」という声がその場に響く。


「おま、お前ら、そ、、その髪色は、お前ら!人間じゃないだろ!!ま、魔人め!こっちに近寄るな!」





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