表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

森の中から

 今までずっと代わり映えのしない森の中を歩き続けていた訳だが、ついにその景色に変化が訪れた。

 と言っても、それは好ましい変化ではない。

 今僕たちの目の前に広がっているのは、鬱蒼としげる木々ではなく、岩を積み上げて作られた巨大な壁だった。


 ただの壁だったなら破壊すればいい訳だが、これはそうはいかない。壁の上には数体のゴブリンが辺りを見渡していて、壁の入口らしき場所では頻繁にゴブリンが出入りをしていた。


 ゴブリンの村、と言うよりは、ゴブリンの国という感じだ。僕たちがイメージする様な村とは規模が十数倍は大きかった。


 そして厄介なのはここからで、これは迂回ができないのだ。というのも、この国があるのは、森の中に急に反り立つ崖の唯一の切れ目だからだ。つまり、ほぼ90度の山と山の間にあるたった一つの通り道に、通行止めをするように国が作られているのだ。


「ふ、浮遊魔法で崖登れないの?」


「この高さだと、魔力がギリギリなんだよね、それに二人は使えないでしょ、」


 前にも話したように、体内の魔力がゼロになるとその生物は死んでしまうのだ。それは人間も例外ではない。

 登ってる途中で魔力が切れそうになったらと思うと、実行する事は難しそうだ。


 アクナの、いっその事足で登るか、という意見は僕たちの息ぴったりな絶対に無理。によって阻止された。


「でもどうするんだ?崖まで迂回となると、最低でもプラス5ヶ月コースは間違いないぜ?」


「それはそうなんだよね、、、」


 付け加えておくが、正面突破は無理だ。確かに僕たちは強いが、あくまで強いだけだ。最強ではない。

 相手がゴブリンだった場合、一度に100体は相手出来るかもしれないが、1000体来たら普通に負ける。

 そしてここにはそれ以上いるだろう。つまり、僕がこの城壁目掛けて思い切り爆破無法を放ったとしても、僕たちの墓場がここになるだけだ。


 となると方法はひとつしかない。簡単に言ってしまおう。こっそり侵入して、こっそり反対側に抜けるのだ。単純だろう?


 単純だが、難しいけどね。


 となると作戦を考えなくては行けない。

 そしてその過程で、今までみんなの使える魔法とか、みんなの手の内を全然知らなかったということに気づいた。


 別に隠していた訳じゃない。今まで目の前に現れた敵をぶちのめすだけだった僕たちは、頭を使う必要も、連携を組む必要も無かったから、自分のできることとか、みんなに伝えておく必要がなかったからだ。


「僕から話すよ、前にも言ったけど、得意なのは魔法で、一応全属性使えるけど、細かいのが苦手かな。とりあえず炎とか水とかを作って飛ばすのが得意だよ。特殊なのは浮遊魔法くらい、かな」


「俺は色んな武器を錬成できるだけだな。あとは潜伏っていう5秒だけ自分と自分に触れている人を透明にできるスキルと、敵のヘイトを自分に向けるスキルとかだ。」


「わ、私は、回復かバフしかできない、、、」


 ……みんな意外と便利な物を持っているようだ。思い立ったら吉日と、早速色々と組み合わせてみることにした。そうすると、思っていたよりかなりいい感じだった。お互いの手の内を明かした今、僕たちはかなり連携が取れていた。


 実際どうしたかと言うと、何回か練習したのだが、


 まず、イサノは三人全員に移動速度上昇のバフをかけ、その直後、アクナが全員に潜伏をかけると三人一気に森から抜け出し、城壁まで走った。城壁から50メートルは木が伐採されていて、丸見えになっている、潜伏が無かったら一瞬で見つかっているだろう。

 城壁にたどり着くと同時に、僕が腐食魔法で壁を人が一人ギリギリ這って入れるような穴を開けると、そこに飛び込んだ。


 ここまでで5秒。ちょうど潜伏魔法が切れた。


 しかし、そこは壁の近くの家の裏だったようで、誰にも見つかることはなかった。


 家と壁の間の狭いスペースを三人で1列になって立ち止まった。


「次潜伏魔法っていつ使える?」


「1時間後だな、」


 りょーかいとあいずちを打って、ちゃんと全員が着いてきていたことを確認すると、少し右に進んでみる。


 自分たちが隠れている家の影から少しだけ顔を出す。


「おお」


 そこには大通りが広がっていて、それに沿って家がいくつも並んでいた。それは人間のものほど洗練されてはいないし、道と言ってもすこし整備されただけの土の道なのだが、立派な街と言って遜色無いだろう。

 やはり、彼らは野蛮な獣などではなく、人間と同じ知性ある種族なのだ。通りを通る大量のゴブリンと、立ち並ぶ露店を見ながらそう実感した。


「こっからどうするか、」


 大通りに堂々と出ていく訳にもいかず、かと言ってずっとここに隠れている訳にも行かない。

 そもそも、なんで夜じゃなくて真昼間に実行しなのかと、今更ながらに気がついた。


「ど、どこかの屋根裏部屋、とか?に、夜まで隠れない?」


「……そうするか、」


 辺たりを見渡す。どうやら、石づくりの真四角の家が多いようで、屋根裏部屋がある様には思えない。

 どうしたものか、、、


「***************!!!!!」


 頭上から意味の分からない叫び声が聞こえた。ビックリして上を、3人同時に見上げた。


 まずい、


 僕らが隠れている家の影を、その家の窓から見下ろしていたゴブリンと目が合った。僕たちに気づいて叫び声を上げたのだろう。


「やばいやばい!どうする!」


「くそ!、、仕方ないか、」


 3人で目を合わせた。それは、無言の同意だった。


 次の瞬間、アクナが真上に向かって目にも止まらな速さで斬撃を繰り出した。

 そして、僕たちの足元にゴブリンの首が転がった。


「……ちょうどいい、あの部屋を借りよう、、、」


 人と同じような文化と生活を持ち、ただひっそりと街のはずれに家を構えて住んでいた彼女を、自分たちの都合で、向こうに敵意が無かったにも関わらず殺したのだ。果たして、これは勇者の所業なのだろうか。


 多分この世界の人間は、たかがゴブリンなんだからいいだろう?というのだろう。


 あるいはこの場所にいたとしたら、少しは考えが変わっただろうか、


 それは無いか、と呟いた後に、僕は2人に続いて窓をくぐった





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ