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そっくり

 ゴブリンは独自の言語と文化を持つ種族の1つである。


 知性は他種族と比べると劣るが、繁殖力は全種族の中で最上である。魔族系列では無く、人間に近い種族であるものの、その見た目から人間からは魔族と呼ばれ、討伐対象となっている。


 魔族勢力でないに関わらず、人間勢力から敵対認識されている唯一の種族であるゴブリンは、各地の森の奥深くに勢力を持っている。

 これが人間が容易に森林地帯に干渉できない主な原因である。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 この森に入ってから半月が経過しようとしていた。そして半月の間、毎日毎日、歩いて食べて寝て、歩いて時々戦って、そしてまた歩く。

 ずっと変わらない景色にいい加減参ってきている。


 それに最近はキノコと肉しか食べていない。これ栄養バランス大丈夫なのだろうか、、、


「どれくらい進んだんだろう?」


「わかんない、」


 イサノもいい加減この生活にうんざりしているようだ。最初は全てが珍しくてワクワクして目を輝かせていたのだが、、


「案外、同じとこをぐるぐる回ってるだけだったりしてな、」


「おい、そういうこと言うなよ、」


 そう言われるとそんなような気がしてきて、なんだか歩くのが馬鹿らしくなってきた。


「はあ、ここら辺でさ、一旦休憩にしない?」


「そうだな」「うん、」


 他の2人も同意見だったらしい。3人同時に腰を下ろすと、なんだかドッと疲れを実感した。こんな時、ひとりじゃないということはとてもありがたく感じる。


 疲れて立ち止まった時、話し相手がいなかったら逆に精神的に疲れてしまう。


 僕たちがする雑談はだいたい決まっていて、魔法の話か、食べ物の話か、それか元いた世界の話だ。


 普段あまり喋らないイサノも自分の世界の話になると、小さい声だが饒舌になる。

 こんな場所だったとか、こんなものがあったとか、こんな遊びをしたとか、みんなで自分の世界の自慢みたいになって、でもそれがとても楽しかった。

 ふたりが話す世界はとても楽しそうで、素晴らしい場所に聞こえた。


 だから僕たちで目標を決めた。もし、皆で魔王を倒すことができたら、その後、この責務から解放されて自由になったら、3人で元の世界に戻る方法を探してそれぞれの世界へ皆で行こうと、きっと、これまでの人生で一番の旅になるだろう。


 静かな森の片隅に、小さな三つの笑い声が響いた。数ヶ月も同じ話をしているのに、何度でも僕たちは僕たちの夢の話でワクワクすることができた。


 そんな僕たちの真横に、まさに文字通り横槍が刺される。


 鋭い音を立てて木に刺さったそれを見て、僕たちはぎょっとして声を出した。


 一目で槍とわかる代物が目と鼻の先に飛んできたのだから、


 慌てて索敵魔法を始める。一体相手は何者なんだ、、そもそも動物では無い。だとしたら人間か?


 いた、後方、、、5メートル先?


「危ない!後ろだ!!」


 だが気づくのが少し遅かった。振り返った時には棍棒がイサノ目掛けて振り下ろされようとしている。


 僕の声に反応したイサノはかろうじて体を動かしたおかげで頭を思い切り殴られることはなかった。

 しかし、太い棍棒が腕に当たった瞬間、なにか硬いものが折れるような音がした。妙に生々しい音だ。


「うぐっ、」という低い声とともに、イサノはその場にうずくまる。イサノの細い腕が変な方向に曲がっているのがわかった。


「まこと!!」


 アクナは盾になるように前に出ると同時に大声を出した。


「わかってる!!!」


 回復魔法は自分には使えない。


 こうなったら僕がイサノを連れて戦線離脱しなくては行けない。緊張して呂律が回らず、少し早口気味なまま声を絞り出す。


「癒しの光よ、今ここに集まり彼の者を再び歩ませよ、」


 回復魔法は苦手だ。ヒールより上の回復魔法は詠唱が必要になってしまう。それに僕ではイサノのようにエキゾヒールは使えない。でも、これができる限りの魔法だ。


「ハイヒール」


 溢れ出た光の塊は少ないが、確実に壊れた腕を修復してゆく。折れ曲がっていた腕が元の位置に戻るまで、僕は魔力を消費し続けた。


「よし、」


 元に戻ったは戻ったが、多分完治はしていない。だか痛みはかなり引いたようで、息を切らしながら小さい声で、「ありがと」と聞こえてきた。


 その頃にはアクナが敵を一掃していた。イサノ横にしたまま立ち上がる。


「………ゴブリン、か」


 そこら中に散らばっている死体の山の正体は、人型ではあるが、人ではなかった。

 その顔を見て、一言思い浮かぶのは、「醜い」という言葉だけだ。背は低く、肌は緑がかっている。


 顔を上げると、アグナと目が合った。


「可哀想な奴らだよな、こいつら。俺たちとそっくりだ。」


「そうだね、、、」


 この醜い見た目が彼らの迫害を招いた。この見た目から、彼らは魔物と罵られた。

 そしてその魔物も、魔人も、人間も、彼らの味方ではない。彼らの味方は彼ら自身しかいない。それ以外は全て敵だ。


 そうして、こんな森の奥深くまで追いやられたんだ。


 たしかに、彼らと僕たちはそっくりだ。


「もし僕たちがゴブリンの言葉が分かったら、分かり合えたかもしれないね。」


「そうかもな。」


 このまま森を進めば、彼らの本拠地にもたどり着くかもしれない。その時は、、、出来れば戦いたくないものだ。




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