森
我慢しなくてもいいとは言ったものの、、、
さすがに寝すぎてしまった。気づけばもう太陽は真上まで登ってきている。座って寝たせいかズキズキと痛む腰を持ち上げ、大きく伸びをした。
すると不意に隣から明るい声が響く。
「お、やっと起きたか。」
どうやら、二人はここで僕が起きるのをずっと待っていてくれたようだ。
どのくらい待たせてしまったのだろう。申し訳ないな、
「まこと。ねぼすけ、だね」
これもまた死角から不意に声をかけられる。声のした方を見上げると、彼女が大きい丸太の上で足をパタパタとさせていた。どこへ行ったのかと思ったらそんなところにいたのか。
「……うん、こんなに寝たのは久しぶりだよ、」
まあ本当は僕が一番最初に起きたんだけどね、結局二度寝したけど。ちょっとだけ悔しい。
そして、少しばかり間を置いたところでアクナが本題に入った。
「じゃあ、そろそろ作戦会議だな。」
みんなを集めて、目の前に大きの地図をばっと広げて1箇所を指さした。
「昨日の夜見張りの時に考えてたんだけど、多分俺たちが今いるのはここだ。」
赤い丸で囲んである王国の真上にある森、赤い丸は多分僕たちがずっと居た王国だろう。えっと名前は、、、アード王国?人間絶対主義王国じゃないんだ。
その時急に刻印が痛んで思わず声がこぼれた。
「……おいおい、今ろくなこと考えなかっただろ、」
くそ、気が抜けてた。あんまり人にとって否定的なこと考えちゃダメなのに。そうだ、、、僕たちは勇者なのに。
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【勇者になって魔王を殺してもらいます。】
【人間を救う勇者になってください。】
【あなたは勇者です。】
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何回も言い聞かされてきたじゃないか。僕らは人間のために生きて人間のために死ぬ、勇者だって。
少し気が抜けて、自分の使命を忘れるところだった。これは遠足じゃない。魔王を殺すための旅なんだ……
「気をつけろよ……まあ確かに、この世界の人間はろくな奴が居ないのはわかるけど。」
え?おいおい、そんなこと言ったら!……って、あれ、
驚いた。アクナはまったく痛がっている様子を見せない。
「刻印、発動してないのか?」
そんな僕の問いに、少し自慢げな声が帰ってくる。
「いいだろ、実は俺、生まれつき呪い耐性があったみたいで、ちょっとくらいならこれに抗えるんだよ。まあ、やり過ぎると頭が焼き切れるんだけどな。」
「……、じゃああんまやりすぎないでね、、、」
無駄話もありながらも、これからの予定は順調に決まってゆく。今は魔王どころか人間の国の圏内を出てすらいない。魔王がいるのはここからずっと北の方だ。当面の目的は、この森を抜けること。ちょうど森を北にぬけた先に村があるらしい。そこを目的地にした。
それにしても地図を見る限りとんでもなく広い森になっている。一体どれだけかかることか、先が思いやられるばかりだ。
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……この森の名前は「迷いの森」……
この森をその名たらしめるのは、ある1本の木であった。
小さな虫などを動く触手で捕食するだけの植物だったそれは、人の国では雑草としてすぐに刈り取られてしまう。そうでも無くても、大きくなる前に切り落とされる。
しかし、人の全く寄り付かないこの森の奥深く。それは着実に成長していった。近づく生物全てを捕食してさらに大きくなり、そしていつしか、森のあらゆる生物を捕食するに至った。
今日も今日とて獲物がやってくる。おお、今回は大物だぞ。しかも1、2、3もいるではないか
狙いを定めて、、、思い切り触手を飛ばす。
が、なぜだ?届かない。
いや、自分の触手が綺麗に切り落とされている?………………………
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「あっぶねー!」
いきなり高速で飛んできた三本の太い蛇のようなものをアクナはものすごい反射神経で切り落とした。よく見たら、なんかかっこいい剣を握っている。
これが魔法で出した剣か、普通の剣とあんまり変わらないな。
なんて呑気なことを考えている場合では無い。次から次へと新しいのが飛んでくる。なんだこれ、なんかの触手だろうか?
だがしかし、アクナ以外にこの攻撃に対処出来る人がいない。僕の魔法はみんなを巻き込んでしまう。それにイサノはほぼ回復しかできない。
「くそ、キリがない。」
最初は一方の方向から飛んできた触手も、今は四方八方あらゆる方向から飛んでくる。しかも切っても切ってもすぐに回復するのだ。
それをアクナは2人を守りながら完璧に防ぎきっている。さすが勇者、神業だな。
「まこと!敵の本体見つかりそうか?!」
「……今探してる!!」
索敵魔法、全魔力と神経を集中させて索敵範囲を広げてゆく。だが、一向にこの触手の根元に届かない。一体どこにいるんだ。もう半径一キロ圏内は探し尽くした。まだ遠いか、
「そろそろ、、、限界だそ!」
触手の数もどんどん増えてゆく、三人を守るアクナの神業もだんだんと遅れをとり始める。
どこだどこだどこだ、、、、あ
「いた!!あれは、でっかい木?」
この場所から2キロ離れた場所に生えている大木、そこから触手が飛んできている。あんなところから僕たちを察知して狙ってきたのか、
どうやら向こうもとんでもない相手らしい。でも、
「魔法で倒せそうか?!」
「……植物にはやっぱり炎だよね。」
良かった、炎は僕の得意分野だ。
片目をつぶり、指で銃の形を作って狙いを定める。こうすると狙いやすくなるのだ。
この辺りかな、、、残念だったね、僕も遠距離攻撃得意なんだ。
「バン!」
指先から飛んだ光は、これもまたものすごいスピードで大木にまで届いた。
それが当たった瞬間、2キロ離れたこの場所でも少し光が見えるくらい大きな爆発が起きた。
近くに大量にあった触手は力が抜けたように地面へと落ちる。時間差で爆発音が聞こえてから、ここらの木々を揺らした。良かった、ちゃんと効いたみたいで。
「すごいな!あんな遠いのに、しかもあの威力で詠唱なしってほんとに得意なんだな。」
「いやいや、アクナもものすごい運動神経だね、目で追えなかった。」
初めてだったけど、意外と戦えるものだ。
お互いを称えあっているといきなり肩を触られる。
「……タイヒール」
なんだなんだ?いきなり体がものすごく軽くなってきたぞ。
「わ、私今日なんもしてない。から、魔力結構使うけど、疲労消す魔法」
どうやら守ってもらうだけだったのを気にしていたようだ。て言うか疲労消すって便利だな、、正直歩き続けだったから助かる。
「ありがとう。助かるよ、特にアクナは動いてたしね」
「ああ、これならあと三体あいつが来ても大丈夫そうだ。」
僕たちの初戦は全員無傷、思ったよりも良い形で勝利を収めた。




