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17話 新たな伝説 2

マコテルノのもとへ、まばゆい装備をまとった一人の冒険者が歩み寄ってきた。

彼は驚いた様子で、五聖の力を称賛した。


「あの魔獣に即座に攻撃できるとは……お若いのに大したものだ。無事に討伐できて助かりました。これからもよろしくお願いします」

(こいつら、頭おかしいのか。ガキの怖いもの知らずか……まあ、ここで褒めておけば報酬ももらえるな)


マコテルノは「そんなことはありません」と謙遜しつつ、視線を少し落とした。

他の四人も(この魔物って、そんなに強いのか?)(特に手応えなかったけど)(まあ、普通に倒せたよな)(むしろ腹が減っただけだ)と、それぞれ自分たちの強さを意識していないままだった。


(本当に、俺たちにとっては何の手応えもない敵だった――)


その隙に仲間たちは、すでに倒した魔物の解体を始めていた。やがて、あたりには香ばしい匂いが漂い始める。


周囲の冒険者たちは「そんな魔物食ったら死ぬぞ」と口々に警告したが、五聖たちは一切気にせず、手際よくさばき続けた。


すぐそばでは、ガルディアの腹の虫が盛大に鳴っていた。(腹が減りすぎてやばい……)


魔物は食用にできたが、普通、魔獣は食用にしない。強い聖属性で浄化しなければ食べられなかった。


周囲の冒険者たちは、「こいつら本当に人間なのか……?」といった目で五聖を眺めていたが、

(ここで食わないともたない)(絶対、次はヤバい)(とにかく休めるうちに休まないと)

(テルノがむちゃぶりするからな……と、皆の心はなぜか一つにまとまっていた)


五聖たちは、周囲の視線などまったく気にせず、魔物の肉をひたすら平らげていく。


周囲からは、(これ高く売れる)(俺が先に見つけた)(くそ、もっと探せ)という心の声が溢れている。


その食べっぷりと香りに誘われて、ついにはほかの冒険者たちも集まってきた。

そして一口食べた者が、思わず叫ぶ。


「なんだこれは……うますぎる!」(死なないだろうな)(大丈夫そうだ)(食ってみるか)


気がつけば場にいた全員が手を伸ばし、山盛りだった肉料理の皿も、みるみるうちに空になっていく。

五聖は、大量の料理もてきぱきと作り続け、ついには魔物の身体は骨しか残らず、きれいさっぱりと消えてしまった。


満腹の余韻が漂う中、ラグナードが(やっぱりな。まだ“奥”があるよな)と心中でつぶやく。


周囲を見回せば、薄暗い通路の先には、さらなる穴が口を開けている。(ここが最深部じゃなかった)(みんな、まだ終わりじゃないぞ)


冒険者たちの多くは、これがゴールだと思い込んでいたらしい。(まあ、普通はそう思うよな)


このとき――

通路の奥の闇の中では、気配を完全に消して様子をうかがう“物たち”が、じっと潜んでいた。

マコテルノたちも、その存在にはまだ全く気づいていなかった。

だが、不穏な気配だけが、ほんのわずかに視線を巡らせ、彼らの動きを追っていた。


メルカニアは、ごく自然に他の冒険者たちへ「私たちは少し休憩したら奥へ進むけど、みんなはどうする? この先は、たぶん“とんでもない何か”が待ってると思うけど」と呼びかける。


その一言で、半分以上の冒険者が(もう無理)(帰ろう)(命あっての物種だ)と、迷わず帰路についた。

それでも残った者たちは(なにがあるんだ?)(まだ先が見たい)(五聖の背中を見てみたい)と、好奇心か意地からか、五聖の背中を追い続けている。


まばゆい装備をまとった金髪の美丈夫は、顔が引きつるのを必死に堪えていた。

(くそ、ここが終わりじゃないのか……いや、やつらについていければ大金だ)


やがて、次の穴へ進むと、今度はさらに強力な魔物たちが湧き出すように次々と現れた。

そのたびに逃げ出す冒険者が一人、また一人と増えていき、ついには五聖だけが奥へと進み続けていた。


先ほどの金髪の美丈夫も、ついに観念して「……すまない。僕も、これ以上は足手まといになりそうだ」とつぶやき、闇の向こうへと姿を消した。(こんなところで死ねるか、こいつら異常だろう)


マコテルノがそろえた装備は、この戦いで驚くほどの威力を発揮していた。(装備の選択はすべて計算通り。精神系も遅延属性も、すべて対策している)(今の世界で強さを分けるのは、この“組み合わせ”なんだ)


(精神を惑わせる攻撃、遅延属性……この世界の魔物は、一筋縄ではいかない)(でも、抜かりはない。すべての組み合わせには意味がある)


ラグナードは肩をすくめ、(……結局、残ったのは俺たちだけか)と心の中でぼやいた。


メルカニアは冷めた調子で(まあ、いたところで邪魔なだけだし。むしろ、いないほうが動きやすいってもんでしょ)と心中で笑う。


フィーネは(私の魔法がなければ……死人が出ていた。誰も死ななくてよかった)と安堵の感情が湧いていた。


ガルディアは(……何か来る)(油断はできん)と真っ赤な瞳をさらに鋭く輝かせ、髪を逆立て、神経質に辺りを見回していた。(この緊張感……嫌な予感がする)


マコテルノは(さあ、早く奥まで行こう。時間がかかるほど、状況はさらに厄介になる)と仲間に意志を伝える。


(よし、やってやるぜ!)

(テルノが言うから仕方ないけど、早く帰りたい……)

(うん、がんばる……テルノのこういう時の横顔はステキ)

(怖い、でも僕が守る)


一行が進み、やがて再び巨大な部屋へとたどり着いた。


そこには、ツカミ・ケタノス魔獣が五体、まるで壁のように立ちふさがっていた。

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