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4.スライムは生き返った(上)

 スライムは、勇敢に騎士団に向かっていったんだ。だって、ベルナールは大事なお友達なんだもの。


 自分がただのちっぽけなスライムだということすら忘れて、とにかくベルナールを守らなくちゃって思ったんだ。


 それで、気がついたら、人間の女の人に抱っこされていたの。


「かわいい女の子ですよ」


 スライムは妙な布に包まれて、別な人間の女の人に渡された。


 黒い髪に、スライムみたいな水色の目をした、綺麗な女の人だった。


「ミシェル、お父様がね、男の子でも女の子でもミシェルにしようって」


 綺麗な女の人は、スライムを抱いて泣き出した。


 ずっと後になって知ったんだけど、お父様はスライムの名前を考えるのが面倒で、男の子にも女の子にも付けられる名前を一つだけ言ったんだって。


 お父様は立派な貴族の侯爵様なのに、お金がなくて困っていたらしいんだ。領地経営というのが上手じゃなかったんだって。


 それで、平民だけどお金持ちの家のお母様と結婚したの。


 お父様は、本当は継母と結婚したかったんだって。お金のために結婚したお母様のことは、大嫌いだったみたい。それで、お母様にいっぱい意地悪していた。


 それは違うんじゃないかな、ってスライムは思っていた。だけど、お父様と継母は「こうでもしないとやってられない」なんて言っていた。





 スライムはお父様が酔って、お母様を襲ってできた子供みたいだった。


 お父様と継母は、お母様がお父様を酔わせて誘惑した、なんて言っていたけどね。


 スライムは、お母様はお父様を誘惑したりするわけないと思うんだ。


 お父様は、ずっとお母様に意地悪していたんだもの。


 お母様が誘惑なんて、絶対にするわけないよ。





 お母様の実家も、お母様が意地悪されていてもほったらかしだった。お母様に侯爵と結婚してもらって、助けてもらっているはずなのに。


 スライムはお母様の妹と、一回だけ会ったことがある。


 お母様の妹は、スライムに「お母様を守ってあげてね」なんて言っていた。その時、スライムはまだおむつをしている二歳だった。


「はー、お姉様のために良いこと言ったわー」


 お母様の妹は、スライムを残して満足げに歩いていった。


 二歳児にお母様を守れるわけないと思うんだ。


 本当にお母様を守ってあげたいと思っているなら、大人であるお母様の妹が、自分で守ってあげないといけないよね。


 スライムはお母様が実家でも意地悪されていたんだと思ったよ。





 このお母様の実家は、侯爵家にお金をあるだけ全部とられたみたいだった。


 お父様が継母と、お母様の実家にはもうお金がないと言っていた。


 それからしばらくして、使用人たちが、お母様の実家の人たちが、奴隷として他国に売られていったと噂していた。


 スライムはお父様と継母がすごく怖かった。





 スライムが五歳になると、お母様は亡くなってしまった。


 当然だよ。


 スライムを生んだばかりの時から、ずっと働かされていたんだもの。


 お母様が「身体が辛いのです。休ませてください」ってお願いしても、お父様は「平民なんだから働け!」って怒鳴っていた。


 スライムはどうして生き返ったのかとか、考える暇がほとんどなかった。お母様を助けるにはどうしたらいいか、考えなくちゃいけなかったから。


 やっと赤ん坊じゃなくなって、お母様と一緒に働いたりして助けられるし、お父様にもいっぱい反論できると思ったのに、お母様は死の国に行ってしまった。


 スライムは残酷なモンスターだから、お母様が死の国に行って、少しだけほっとした。これでお母様はゆっくり休める、なんて思ったんだ。


 人間がモンスターを怖がるのって、こういうところなんだろうなと思ったよ……。

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