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8.スライムは魔王より強い(上)

 スライムは娼館の筆頭護衛剣士だったから、酔っ払いやモンスターをどうにかするのには慣れていた。


 今も騎士団の王都砦の外では、モンスターが騒ぎを起こしていた。


「俺が勇者を食ってやるぜェ――!」


 勇者アルベール様は、スライムがいた子爵家の領地でも大人気だった。


 スライムには魔王たちが、『勇者のニオイ』が好きな気持ちはわかる。


 スライムもスライムだった頃、ベルナールの匂いが大好きだったもの。


 勇者アルベール様も、きっとすごく良い匂いがするんだろうなぁ。


「早く出てこい、勇者ァ――!」


 モンスターがあんなに騒いでいるなんて、街のみんなの迷惑だよ。


「私が行って、捕まえて、冒険者ギルドに突き出します」


「冒険者ギルド!?」


 ベルナールが訊き返してきた。


「王都には冒険者ギルドはないの?」


「いや、あるが……」


 それなら問題ないよね。


「勇者ァ――!」


 外では、モンスターがベルナールを呼んでいる。


「騎士団長、副団長、とても我々の手には負えません!」


 悲鳴のような声で叫んでいる人がいる。


 早く行ってあげたいな。


 スライムは、みんなを守れるように強くなったんだもの。


「ミシェル……、私も君を危険な目にあわせたくないのだ」


 ベルナールが悲しそうにスライムを見ていた。


 今のスライムは、弱っちい『水色のプルプルしたの』とは違うんだけどな……。


 スライムだった時、スライムはいきなり死んじゃったからね……。


 ベルナールはスライムがすごく心配なんだろうな。


「いやいや、お熱い! この中年には、とても見ておれません」


 知らないオジサンは、意味不明なことを言いながら、部屋から出ていった。


 まだモンスターは火も吹いてないし、火球も打ってきてないみたいなのに、なにを言っているんだろう……。


「騎士団長、副団長、来てください! 前の騎士団長たちと宮廷魔法使いの連中が攻撃を続けていたところ、手と顔に変身しました! 様子が変です!」


 部屋の外では若い男が泣きそうな声で叫んでいた。


「手と顔に変身とは? なにを言っている?」


「魔王なんだよ。手、顔、手系のってたまにいるの」


 ベルナールがすごくおかしな表情をした。


 娼婦たちが『王都の騎士様』はお上品だって言っていた。


 ベルナールは魔王のことを知らないんだね。


「第二形態に変身すると、大きな左手と顔と右手っていう三つのパーツに分裂する魔王がいるの。ねえ、もう行ってあげようよ、ベルナール。みんな困っているみたいだよ」


 スライムなら新参者の手、顔、手系の魔王なんて、すぐに捕まえて、みんなを安心させてあげられるよ。


「あ、ああ、行くか。そうだな、行かないとな」


 ベルナールは戸惑いがちに、うなずいてくれた。

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