学校大ピンチに天才降臨
「……え、なんで?」
教室で、エイジがぽかんと口を開けていた。
突如流れた警告音と聞きなれない機械音声、
《緊急ボタンが押されました。全校ロックダウン開始》
という物騒なアナウンス。
「は?え?誰が!?何した!?」
校舎のあらゆる扉がバタンバタンと閉鎖されていく。
「え!?閉じ込められちゃったの!?」
「なんだなんだ!?」
混乱する生徒たち。先生たちもなぜか右往左往している。
――その頃、警備室。
「いや〜……なんかね?休憩中にモニターの明るさいじってたらね……警備モードってのに入っちゃって……そしたら警告いっぱい出て……ボタン押したら……ドア閉まっちゃったんだよね……」
「いやいやいや!!押すなよそのボタン!!」
先生たちの悲鳴が響く。
「わし、ただ明るさ戻したかっただけなんだけどねえ……」
申し訳なさそうに頭をかく警備員さん。
「で、解除は……?」
「それがね?なんか『管理者ID入力してください』とか出てきて……わしの誕生日じゃダメだった……」
「当たり前だろ!!」
「どうする!?このままだと学校まるごと閉じ込められたままだぞ!!」
「もうダメだ……タクト君……タクト君しかいない……!」
――というわけで、タクト召喚。
警備室のドアが開く。
ひとりの男子生徒、静かに現れる。
「来たか……!」
「天才くん頼む!!」
タクトは状況をざっと見回し、端末に目を向ける。
指を一度鳴らして、静かに言う。
「これ、要するに“操作間違い”ってだけか。セキュリティモードに入っただけで、ロック自体に損傷はない。ちょっと遠回りになるけど……直せる」
先生たち:「おおおおおおおお!!」
「で、どうやって?」
「この端末、ログイン用のパスキーは一時保存されてる。しかも外部接続が許可されてる。つまり、解析して中に入れば、外側からの解除が可能ってわけ」
「わかんねえ……けどすげえ……!!」
――タクト、操作開始。
キーを打つスピードはまさに神業。
タクトの頭脳はまさにバグの領域、周りは尊敬の念をこめてこう呼ぶのです!
【ブレインバグ!!タクト!!】
「ログ追跡……内部パスの再構築完了。
セキュリティ解除コード、上書き」
「できた」
――その瞬間。
バタン!と一斉に開くロック扉。
電気も明るく点灯し、校内に安堵の声が広がる。
「戻ったあああ!!」「タクトくうううん!!」
しばらくして、校内放送が鳴る。
『――学園のセキュリティ誤作動は、現在すべて解決されました。生徒の皆さんは通常通り、授業を受けてください。』
教室内、騒然。
「え、タクト君の声だよね!?タクトが直してくれたの!?」
「マジ!?」「あの警報、ぜんぶ!?」
「よかったー」
タクトファンクラブの面々がバッと立ち上がる。
「タクト様ってば!学校救ってくださったのねー!!」
「天才的解決……かっこいいわー!……」
「冷静でクールで、なのにちょっと優しいところが、んもう!好き!!!」
一方その頃、エイジとマモルは廊下の隅でため息をついていた。
「……なんかまたすごいな、タクト」
「ほんと。俺たちがオロオロしてる間に全部片付けてる」
「てかさ、最近ドキドキしっぱなしなんだけど。学校ってこういうものなの!?」
「いや、ふつうは違う気がするけど」
マモルがふっと笑う。
「エリート学園……まじでバグってるな」
廊下の向こう、クールに歩いていくタクトの背中。
それを見送るファンクラブたちの黄色い声と、
パンをかじりながらニヤけてるエイジ。
今日もエリート学園は、ちょっとだけおかしい。
でも――楽しい。
お読みいただきありがとうございます。
今回は、少しコミカルなトラブル回でした。
想定外のセキュリティ騒動に、タクトの冷静な対応が光った回でもあります。
クールに問題を解決する姿に、ファンが増えるのも納得ですね。
エイジやマモルの反応を通して、日常に潜む非日常が
より楽しく見えるように意識しました。
次回は学園生活のお楽しみ、学食にまつわるエピソードです。お楽しみに。