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開幕:式典前のざわつき

体育館の裏手、開式直前。

壇上の準備が進む中、空気は少しずつ緊張感を帯びていた。


その中心に、タクトがいた。


首席――当然のように式辞を任されている。

胸元のバッジが、その存在を証明しているかのようだった。


だがその直前。

エイジは、教師の一人に声をかけていた。


「すみません、式辞……俺にやらせてもらえませんか?」


その一言が、小さな波紋を生んだ。


「えっ、式辞って……」


「代表変えるの、今から……?」


ざわつく新入生たちの中から、タクトがゆっくりとこちらへ歩いてくる。


 


「ちょっと待って。それ、俺がやるって話になってる」


その言い方に怒気はなかったが、静かな重みがあった。


エイジはタクトの目をまっすぐ見て言う。


「うん、聞いてる。君が首席ってことも知ってる。けど……少しだけ、理由を聞かせてくれない?」


タクトは目を細めた。


「理由?…」


 


エイジは頷いた。そして、迷いなく口を開く。



「俺、みんなと仲良くなりたくてこの学校に来たんだ。

生まれてから、同世代とちゃんと話したことなんて、ほとんどない」


「だから、目立つとか偉そうとかじゃなくて、単純に“名前を覚えてもらいたい”。そのきっかけが欲しいだけなんだ」


静かに、でも確かに伝わる口調だった。


 


タクトは少し目を伏せてから、ぽつりと言う。


「……俺は、友達を作るために式辞を読むわけじゃない」


「うん。だから、君には“その必要がない”ってことだよね?」


 


エイジの返答は柔らかく、でも隙がなかった。


「だったら、俺がやっても問題ない。違う?」


タクトは、返せなかった。

頭脳バグのタクトはこれまで当然のようにいつだって首席で式辞を読んできたのだ。

友達が欲しいから式辞を読むなんてエイジの発想に驚いて、タクトは珍しく言葉を詰まらせてしまった。


 


その空気を感じ取った教師が、小さくため息をつく。


「しかし、そう簡単にはいかない。式辞は理事会の承認も必要で――」


 


「寄付すれば、調整できますか?」


エイジは淡々とスマートフォンを取り出し、手慣れた様子で操作する。


「このくらいの金額で、通りますか?」

と言いながら、1億円の寄付手続きの完了画面を教師に見せる。


《学園基金への寄付:1億円 エイジ》


 


ピン、という通知音が走った瞬間――


「今の通知……!」


「“エイジ”って……!」


「え、あのマネーバグ!? 実在してたのかよ……!」


「うわ、顔もめちゃくちゃ整ってるし、制服オーダー品じゃん!」


「本物はじめて見た!カッコイー!」


「えぐ……リアルな金持ち主人公だこれ……」


周囲の空気が、一気に沸騰したようにざわめいた。


 


だがその中心で、エイジはいたって冷静なまま、微かに微笑んだ。


理事長がにっこりと微笑み、喉を軽く鳴らす。

「ふむ……寄付は教育の礎です。異論はありませんよ」


 

「そういうことなら…。わかったよ」

タクトもうつむきながら言う。



マモルがぽつりとつぶやく。


「エイジ君、すごいな……なんか、見てるとワクワクする……!」


 


タクトは黙ったまま、背中を向けた。

ほんの少し表情がゆるむ。


(……まあ、たまには誰かの式辞を聞くって言うのもおもしろいか)


タクトは整った字で書かれた式辞の原稿を無駄のない所作でポケットにしまった。


 


こうして、式典は幕を開ける。

ちょっとした波乱と、ひときわ強い視線を集めながら――

いかがでしたか?

今回はエイジの“初・主張”――新しい環境で自分を示す回でした。


エリート学園での最初の戦いは、まさかの「入学式」から。

ただ式辞を読むだけなのに、そこに重なるのはバグ、プライド、そしてエイジの“想い”でした。


エイジは、金を使うことにためらいがありません。

けれどそれは、何でも買えると驕っているからではなく――

むしろ、“買える範囲でなら、できることは全部やりたい”という、まっすぐな気持ちの表れです。


タクトの戸惑いも、マモルの驚きも、

そのすべてが、エイジという存在に新しい色を重ねていきます。


そして次回、ついにエイジの“式辞”が始まる――

壇上から語られるのは、お金でもバグでもない、“まっさらな想い”。


爆誕・金持ち転校生の青春、その第一声をお楽しみに!

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