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連休明け、日焼けして登校してくる子を見ると、なんだかちょっぴり羨ましいよね

連休が終わり、少しだけ日焼けした顔がちらほらと戻ってくる登校初日。


連休中に校舎の工事も無事に終わり、みんな新しくなった校舎にわくわくしていた。

ピカピカの内装。透き通るような窓ガラス。


連休中、合宿を楽しんだ生徒たちも、ピカピカした顔で登校してくる。

マモルは、合宿中に毎朝走っていた早朝ランがすっかり気に入り、

「やっぱ朝走ると、気合い入るよな!」と、コースを変えながら毎朝走っているという。

タクトは、合宿で少しだけ泳げるようになったのが自信になり、家の近所のスイミングスクールに個人レッスンで通い始めた。

「頭がすっきりする感じ、すごくいいんだよね」と、新しい自分をどこか楽しんでいる様子だった。


みんながみんな、さわやかに登校してくる。……かと思いきや。


「やばい……あはは、またやっちゃった……」


ボサボサの髪にクマをつくった顔で、エミちゃんがズタボロになって教室に現れた。


なんでも、合宿初日の生演奏とコース料理に、ものすごく刺激を受けたらしく、

帰ってから一気に創作モードに突入。

毎晩、制作に没頭していたのだという。


「気づいたら朝になってるのが、三回くらい続いちゃってさ……でも最高だった〜!」


テヘッと笑うエミちゃん。その目は寝不足でも、力強く輝いていた。

そして、このとき彼女が生み出した作品は、のちに美術界でとんでもない評価を受けることになる――なんて、まだ誰も知らない。


***


さて、そんな中、エイジはというと、特に変わらず。


「ふむ、今回も課題を外注に回して……っと」


学校から少しばかり出ていた課題も、例によって外注でクリア。

完成度も高く、提出も完璧。エイジの余裕はいつもどおり……のはずだった。


……のに。


「エイジくん、放課後、職員室に来るように」


担任の先生の声が、少しだけ険しい。


(え……?完璧だったはずじゃ?)


不思議に思いながら放課後に行ってみると、先生は静かに、じわじわと怒っていた。


「完璧すぎるんです。このレベルを素人がこなすとは、ちょっと思えません。……これ、外注しましたね?」


「えっ!?し、しました!」

即答するエイジ。


「課題を自分の能力マネーバグを使って完成しました!

お金の力で最大限の完成度!つまり、外注です!」


自信満々なエイジを見て、先生は今度は少し呆れたようにため息をつきながら言った。


「課題というのは、“完成させること”が目的じゃありません。自力で取り組むことが大切なんです!」


「えぇ〜……!」


「というわけで。エイジさんには課題を追加します。

1週間以内に、自力で制作して、再提出してください」


「じ、自力で!?……家庭教師はあり……ですよね?」


「まあ、それは。でも、教えてもらうんじゃなく、自分で考えてください!」


「……はい……」


こうしてエイジは、連休明け早々に思わぬ重荷を背負うことになった。


とはいえ、やると決めたらやるのがエイジ。

放課後は図書館、休日は自宅やカフェで、黙々と課題に向き合った。

みんなも、どこかその様子が微笑ましくて、遠くから「がんばれー」とひそかにエールを送っていた。


そして、課題締め切り前日。


「できたーーー!!!間に合ったーー!!」


両手を広げて喜びを叫ぶエイジ。


「やったね、エイジくん!」

「この課題、ほんと大変だったもんね」

「この外注では得られない達成感!!自分で何とかするってのも悪くない……かもな!!」


気づけば、何気なくそばにいてくれた友達が、にこにこしながら祝ってくれていた。


「……ところで、エミちゃんは課題やったの?」


「うん、私もさっきギリギリ終わったとこ!」


「連休中、ずっと忙しそうだったもんね」


「うん!でもこれで無事提出〜!」


そして翌日、提出。


「うん、よくできています。……完璧とは程遠いし、かなり荒削り。でも、これが“本当の正解”ですよ。よく、自力で解決しましたね」


「はいっ……やったぜー!!」


教室の窓から差し込む光が、少しだけ、いつもよりやわらかく感じた。


お読みいただき、ありがとうございました!


今回はゴールデンウィーク明けの、何気ない学校生活のひとコマ。

でもその中には、それぞれの小さな“変化”や“成長”がちゃんとあって、彼らが自分のリズムで歩いていく様子が描けたらと思いながら書きました。


エイジは、いつもスマートで器用なように見えて、でも実はまだまだ学びの途中にいる存在。

そんな彼が、自分の力で何かをやりきったときの「やったぜ!」には、小さなドラマが詰まっています。

そして、それをそっと見守る仲間たちの存在も、この物語のやさしい空気をつくってくれています。


日常って、派手じゃなくても、ちゃんと特別なんだなって、改めて思います。


さて、次回は――

作者がひそかにお気に入りの「タクトファンクラブ」のお話をお届けする予定です。

(※ファンクラブは、過去に『ep.6 襲撃と覚醒、そして告白』でエイジを襲撃しています。)


どうぞお楽しみに!

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