夢の支度と、ひとときの魔法〜爆買いって一度はしてみたい
「じゃあ、行ってくるか──百貨店!」
エイジのひと言で、クラス中がわっと沸いた。
突然のリゾート合宿に、「え?服とか?水着とか?どうすんの??」と騒然となったその朝。
そこへ現れた救世主、腕まくりしてにっかり。
「俺のせいで校舎が建て替えになったしな。準備くらいは任せてくれ!」
本当はすべての準備資金を出してあげたい、でも
前に、マモルにから揚げを奢ろうとしたときのことを思い出していた。
「金銭感覚ってのは“育てる”もんだ。」
「それに何より――俺たちは“横の関係”だろ。仲間なんだから。」タクトのまっすぐなまなざしが、今も胸に残っている。
でも、エリート学園には豊かな家庭の生徒も多い、でも全員ではないはずだ。実力を磨いて入ってきた子も確実にいる。その子にとって、リゾートがただの負担になってしまったらつまらない。
エイジは、思いきって提案する。
「……でも、旅行って準備が一番たのしいじゃん?
いろんなの選びたいじゃん?
だから、“今日だけ全部半額”ってのはどうだろう!せっかくだから準備も一緒に楽しもうぜ!
これなら、バランス取れてるでしょ?」
ニッと笑ってみせると、みんなが目を丸くしたあとで、ぽつぽつと笑いはじめた。
貸し切りの百貨店。
誰もいない広いフロアを、クラスメイトたちが思い思いに歩き回る。
「え、これも買っていいの!?」「この浮き輪、でっっっか!」「わー、これエミちゃんに似合いそう〜!」
その中心で、ひときわ目立つのは──
「どう!?似合う!?」
どーん!でっかいサングラス&つば広帽のエミちゃん。
全員「宇宙人だ……」って口をそろえて笑い転げた。
水着、帽子、サンダル、日焼け止め、かわいいカゴバッグ。
「わー!チュロスある!!」「え、チュロスは関係なくない!?」「いや必要でしょ!」
あっちで爆笑、こっちで大騒ぎ。
タロウ君は、いつもよりちょっと遠くからその様子を見ていた。
──エイジ君、なんでそんなふうにしてくれるんだろう。
楽しそうにするクラスメイトを満足そうな表情で見つめるエイジを見つけてタロウは考えていた。
思い返すと、あの窓の件以来、エイジの言葉がずっと胸に残っている。
「誰かのために動けるって、ほんとすごいことだよな」
自分なんか、って思っていたけど。
誰かの背中を押すやさしさって、こういうのを言うのかもしれない。
「タロウ〜、それ見てるだけじゃなくて試着してみてよ〜!」
「わっ、エミちゃんびっくりした……すごい!何でも似合うね……!」
ひとしきりはしゃいだあと、クラス全員が荷物を抱えて集合。
会計に進むと、スタッフが言う。
「本日はすべて半額となっております!エイジ様、ありがとうございます!」
「やめてやめて!名前出さなくていいから!」
エイジは顔を真っ赤にして叫んだ。
──準備は整った。
クラスのみんなの胸に、ふくらんでいく“期待”のかたち。
明日からは、リゾート合宿。
知らない場所で、知らない時間を、知らなかった一面の自分たちと出会うために──
エイジの“おごり”が、ひとときの魔法となって、走り出した。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回はリゾート合宿への準備編として、百貨店貸し切りイベントをお届けしました。
読んでいて「うわ〜、こういうの行ってみたい!」って気持ちになってもらえたら嬉しいです!
旅行の楽しみは、もう“準備”から始まってると思うんです。だから今回は、そのわくわくをまるごと書きました!
さてさて、リゾート本番はここから!
次回は海辺のパーティに、夕日を見ながらサンセットバーベキュー、そして満天の星空。
リゾートシリーズ開幕、どうぞお楽しみに!!
次回:『エイジのおごりだ!〜リゾート学園、開校!?』
行くぞ、エリート学園・出張編!!