海と不思議な店
ひたすら明るい物語を作りたくて筆をとりました。
その店は不思議なものを売っていた。
波の音が聴こえる、まるで海と空の境界線は曖昧で不思議に感じられるように、その店の店内は不思議な雰囲気に満ちていた
「なにをお探しかい?」海の近くにしては山姥のような店主が話しかけてきた。僕は答えた「あの…。幼なじみと両想いになりたいんです。明日一緒に夏祭りに行くんですが、彼女の想いが分からなくて…。なんか良い物ってありますかね」「そうか、ならこの魔法の貝殻があるよ」そう言うと妙に光って見える貝殻を差し出してきた
「値段は500円ね」「買います!」
僕は使い方を店主から教えて貰うと直ぐに自宅へと早足で駆け出した。潮の満ち干きを繰り返す美しい海を眺めながら
『君の想いを貝殻の裏に書いて、表には彼女と君の本名を書く。書いてから24時間以内に彼女も同じ想いになったら結ばれるだろう』
僕は店主の言葉を思い出しながら表に僕と幼なじみの名前を書いた。「でも24時間以内だよな…」夏祭りは明日、隙を見て記入しよう。
次の日、幼なじみは待ち合わせの場所に海のような青色の浴衣を着て現れた。「どう?キレイでしょう?」「キレイだよ」「本当に?」
そんな会話をしながら僕が昨日、駆け足で通った道を今日は彼女のペースに合わせてゆっくりと歩く。美しい海を眺めながら
「ちょっと休憩してもいい?私、疲れちゃった」そう言うと彼女は近くのベンチにそっと座った。僕はポケットから貝殻とペンを取り出してサッと『想い』を記入した。
「どうしたの?今、書いたの?」「秘密だよ」「えー、知りたい」「なら、今の想いを教えて?そしたら教えてあげる」潮の満ち干きを繰り返す海のように、僕の心臓は鼓動を繰り返している。
彼女は海を見ながら答えた「想いかぁ。あのね、海に住む魚も、空を飛ぶカモメも、近所の猫も、私たち二人も含めた人間も、生きとし生けるものが幸せでありますように。かなぁ」彼女は海よりも美しく、空よりも澄み渡る笑顔でそう答えた。
「僕も同じだよ!」そう言って魔法の貝殻の裏面を彼女に見せる『生きている全てのものは幸福でありますように』僕が書いた文字を彼女が読み上げる。
〜数年後〜
僕らは結婚した。二人で海を見ながら妻となった幼なじみに言った。「美しい海だね」すると彼女は言った「私は、海よりも美しい心の人が大好きよ」
『生きている全てのものは幸福でありますように』そう書かれたあの時の貝殻を見ながら彼女はそう言って微笑んだ。
僕は涙が流れてきた。僕の心はまるで全てを包み込む海のように優しく、澄み渡る空のように穏やかな想いに包まれた。
【終わり】
読み終わった貴方様も幸せでありますように