『神様』ゲーム
何度も何度も作り直しても、この世界はダメだった。
「何故こうもうまくいかない」
天界から下界を見下ろしながら、私はため息をつく。
人間の悪行と言う悪行、戦争と破壊。
何度その悪しき点を改善しようと、人間は再び戦争と破壊を繰り返す。
「なぜそこまで争いを望む」
人間の業とはここまでひどいものなのかと、頭を押さえるばかりだった。
何をどうしても彼らは平和を望まず、互いに憎しみ合い、殺し合い、そして奪いあう。豊富な資源は山とあるのに、それを分け与えようとせず、むしろ独占しようと躍起になる。
あまりに哀れ、あまりに愚か。
「そこまで戦いを望むのであれば、より面白いことをさせてやろうか?」
私は手を動かして、世界に新たなる難題を突き付けた。
神による人生ゲーム。
争いが争いを呼び、そして血で血を洗う醜いゲームを。
「生きることだけを考え、他者を蹴落とし、利を得ることを如何様にでも考えればよい」
人類全員の目の前に浮かび上がるウインドウ。
『争いを望む全人類に告げる。我は神なり。全知全能たる神なり。貴様らに我のとっておきの遊びを享受してやろう』
そして課題を出す。
一人一人に課せられた課題。
殺人。
強盗。
強姦。
あらゆる罪という罪を人間に課し、よりより混沌とした世界へと導くたった一手の遊戯。
成功した者には報酬を、時間内に成功しなければ罰を、死を。
「遊び尽くせばいい、奪い尽くせばいい。貴様ら人間にはそれがお似合いだ」
悪態をつきながら我は下界を見る。
いざこうした現実を目の当たりにすると人間は固まるものだが、事態を把握した人間はさっそく行動を始める。課題に沿って行動を始める人間たち。悲惨な光景が少しずつ広がっていく。
「そうだ。それでいい」
下界で繰り広げられる混沌。
むしろ私はこうした世界を見たかったのかもしれない。
「最終的な最高の報酬を与えてやらないとな」
世界をクリアした人間には神になるか神たる私を殺すかの権利を与えてやろう。
私が死んだところで、このゲームを見た神が跡を継ぎ、また同じようなゲームをすることは解っているが。
神は神、所詮は神。
こうして試練を乗り越え成長していく人間を、もしくは壊れていく人間を見るのが大好きな生命体なのだから。
「もっと踊れ、もっと暴れろ」
下界で早々に行われるえげつない行為。
突如として始まった弱肉強食の世界を前に。
人間としての本質を試される。
そして周囲から聞こえる神々の笑い声。
神の本質はこれなのだ。
こうでなくてはならないのだ。
そしてまた、このゲームを止めようとする神もまた現れるのだろう。
「神は争いごとが大好きだからな」
天界と下界で繰り広げられる争いを。
私は死んでも忘れることはないだろう。
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【集】我が家の隣には神様が居る
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