表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/26

第5話 自己紹介

(これはチャンスだな)

 校内案内のために移動していると皇さんが口を開く。

「そういえばまだ、あなたの名前をうかがっていませんでしたね。改めまして、私の名前は皇桜華です。よろしくお願いします」

自己紹介の機会をうかがっていると向こうからチャンスが訪れる。





(今度こそ自己紹介するぞ)

「お、俺の名前は南条薫。こちらこそよろしくお願いします」

少しどもったが何とか今度こそ自己紹介ができた。




(ついに言えたぞ!あとは探している男が俺だと伝えるだけだ)

もうすぐ大金が手に入ると思い、気分が上がる。

「先ほどの玉木さんとは仲がよろしいんですね」

「ん?ああ、幼稚園からの付き合いだからね。いわゆる幼なじみっていうやつだよ」

「なるほど」

腑に落ちたように納得する。

その所作一つとっても無駄がなく上品だ。

(ほんとにお嬢様なんだなぁ)

 彼女に見惚れる。




(あれ???そういえば俺、彼女にため口で話してなかったか)

自分の言動を思い出し、サーと血の気が引く。




 俺はこれはまずいとばかりにすぐに一つの行動に出る。

「すみませんでした。皇財閥のご息女ともあるお方に失礼な物言いでした」

全力の謝罪。

90度に曲げ、誠心誠意謝る。

(これで許してもらえるはず)


「顔を上げてください。私はそんなことまったく気にしてませんよ。むしろ先ほどまでの口調で話してもらう方が好ましいです」

慌てた様子で言う。

(あれ?)





「いえ、私のような身が恐れ多い」

「ですから、本当に先ほどのような口調で構いません」

少しくらい表情になりながらも心からそう願うかのように返す。

初対面(?)である俺からしてもわかる悲しい表情だ。



(…なんだか、さっきまでの口調の方がいいのかもな)

「ならそうさせてもらうよ」

「っ!はい!!ぜひそうしてください」

俺が口調を戻すとすごくうれしそうに無邪気に笑う。





(か、かわいい)

脳内で悶える。

「でも、あとで無礼だなんて言うなよ」

「言いませんよ、そんなこと」

俺の一言に不満そうにこちらを見る。




「私は皇財閥の娘ということもあり、多くの方に距離を置かれていました。まるで雲の上の存在であるかのように…。私も周りの望むよう気高くあろうとはしていますが、普通の友達が欲しいんです。ですが、周囲の人はそんな私は求めていない。むしろ、私をより高みにあげ、あわよくば自分も、、、。以前の学園ではそのようなよこしまな気持ちで近づいてくる方ばかりでしたから。なので南条さんのように身分など気にせず話しかけてもらえて本当にうれしかったんですよ」


「そうか・・・」




(心が痛い!!!)





(敬語は使わなかったが、それはただ単に友人が少ないから距離感があまりわからないだけであって・・・それに、こんなに話しかけるのも俺が探している人だと言ってお金をもらうためだし・・・)




 そう、南条薫には邪な気持ち《《しか》》ないのに近づいているだけなのである。

だからこそ、彼女の純粋に喜んでくれる様子に胸がズキズキと痛くなる。




(う〜ん、これはすぐに言っていいもんなのか?)

彼女の様子に判断に困る。



「見てください、あれはなんですか?」

思案していると彼女の言葉により意識が現実に引き戻される。

「ああ、あれは蝶の標本だよ」

皇さんは移動中にある展示物に興味津々だ。

「とても綺麗ですね」

「皇さんの学校にはなかったの?」

「そうですね…私の学校には画家さんが学園のために書いてくださった絵ぐらいしか」

「そ、そうなんだ」

(いやそっちの方がすごいだろ!?)






「・・・以上が大体うちの学校の主な施設かな」

あらかたの案内を終え、クラスへと向かう。

「ありがとうございます。とても分かりやすかったです」

「そ、それはよかった」


丁寧にお礼を言われ、ドキリとする。

その笑みは天使のように可愛らしい。

確かに、多くの人が寄ってくるのもうなずける。


 次第に教室に近づくなか、、、

(よし、さっきは悩んだがやっぱりあの男を探しているだろうしな。うん、別に他意はない。お金目当てではないからな)

誰に言うでもなく一人つぶやく。



「あ、あのさ」

「はい?」

「今皇さんが探してる男って・・・」


ガララっ

「皇さんが探してる男って実は俺なんだよね!!」

扉が勢いよく開き、俺がついに名乗り出ようとしていたら一人の男子生徒がそう宣言する。

「え?」

皇さんが戸惑う




(なんでそうなるのーーー?!)

俺はその光景に驚くしかなかった。



***

お読みいただきありがとうございます。

一度、ここで更新はストップします。

次回の更新は一月中旬ごろにキリがいいところまでまとめて更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ