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第1話 あのセリフ

そう、これはつい先日のことになる


<先日>

「は~、今日も長い一日が終わったな」

 俺はいつも通りの授業を終え、本屋へと向かっていた。

もう冬になろうとしており日も落ちてくる。

寒さに耐えながらも足は軽く本屋へと一直線だった。






(今はちょうどお金があるからな。これで漫画やゲームでも買うか)

などとお金の使い道について考えていると、、、

「や、やめて下さい」

 突然の言葉に思考が中断される。

声のする方に視線を向けるとそこは路地裏だった。

一人のまだあどけなさの残る少女と見るからにガラの悪そうな二人の男がいる。

少女は男に怯えている。

見たところ少女は同じ年か少し下のように見える。

(明らかに知り合いじゃないな)



「そ、それ以上こっちに来ないでください」

「おいおい、つれないこと言うなよ、お嬢ちゃん。おじさんたちがいいところに連れて行くからさ」

明らかにやばそうなことを言うやつらに少女も震え始める。

その間にも男たちはじわじわと距離を詰めていく。





 やばい雰囲気だな。

俺は近くにスマホを立てかける。

 周囲を見渡せば路地裏のため人は少ないがあれだけ大声で騒いでいたため人だかりができ始めている。スマホで撮影しているものや何が始まるのかと興奮気味に観戦しているもの《《しか》》いない。そう、誰も助けには入らず、自分は関係ないとばかりに傍観を決め込んでいる。







 っは、さすがだわ。

 俺はその様子に心の底から軽蔑する。さすが今の世の中。誰もかれもが面白半分で見るばかり…あまつさえ人の気持ちなどつゆ知らず写真を撮る人だっている。

俺はその現実にあきれる。



「腕をつかまないでください!」

 そんなことを考えていると今にも少女は男に連れていかれそうになっていた。

「お前らよく見とけよ」

誰に言うでもなく静かにいう。

俺は彼らの方へと足を運ぶ。



「あのー、それぐらいにしてもらえませんか」

軽い口調で男たちに言う。

「ああ??なんだ」

男は少女の腕を離しこちらに近づいてくる。

もう一人は何も言わず威圧するようにこちらを見ている。



(ひっ、近くで見ると余計に怖いな)

俺は男の怖さに若干ひるむ。

(…けど彼女はそんな奴らに耐えながらなんとか一人で逃げようとしてたのか…)


「おい、なんか言ったらどうなんだ」

俺が何も話さないことにいら立ったのか男はわめき散らす。

「いえ、そろそろ引き上げた方がいいかと思いまして」

俺は下手に出ながら男に言う。

「何言ってんだよ」

「警察に通報してた人がいたんでもうすぐくるとおもいますよ?」

「お前が通報したのか!」

男は警察という言葉に反応し、胸ぐらをつかんでくる。

「い、いや、お・・僕ではなくてあそこでスマホを持っている人が通報してましたよ」

俺は傍観してスマホをこちらに向ける男を指さす。

「お前か!!」

「ち、、、違う!そんなことはしていない」

「嘘つけえええ!!」

突然話をふられた男は動揺して答えるが、それが余計に男に真実味を持たせたようだ。

(ふ、ざま~~~)

もちろんそんなことはでっち上げだ。だが、傍観している人が慌てふためく姿を見て俺は気分が良くなった。






ウ~~~~

 

 今にも男が暴れだしそうになっているとパトカーの音が聞こえ始める

「ほらね。ほんとに来ましたよ」

「ちっ、くそが」

俺の笑顔での言葉が気に入らなかったのか男は俺の顔を殴る

「いって」

その衝撃で倒れこむ。

「おい、もう行くぞ」

もう一人の仲間らしき男が言う

「ああ、わかった」

どうやら引いてくれるようだ


「おい、お前覚えとけよ」

俺が難を逃れたと思っていると男が逃げながら叫ぶ

(なんて負け犬っぽいセリフだろう)

俺はそう思いながら逃げていく男たちを見る。


(まあ、暗いし顔も見えてないだろ)

 さきほどの場所へともどり、おいていたスマホのあるボタンを押す。すると先ほどまで聞こえていたサイレンの音が消えた。

(まさか本当にうまくいくとはな)

自分でもあきれながら、俺は彼女の方を見やる




 見たところどこもけがをしてないようだ

「大丈夫でしたか」

「は、はい。」

彼女は先ほどの様子をポカンと見ていたため反応が少し遅くなる。

「あ、あの、助けていただきありがとうございました。ぜひお礼をさせてください」

そう言って頭を下げる。

 俺は改めて少女を見る。礼儀正しく頭を下げる少女はまるでどこかのお嬢様のようだ。

(おいおい、これは最高じゃね??)

などと考えるがすぐに思いとどまる

(いや待てよ。ここはなにもいわず《《あのセリフ》》だけを言う絶好の機会なのでは?)




 この少年には夢があった。

それはラノベや漫画の主人公になること。。

もちろんフィクションであることはわかっているが、それでもなれるならなりたい。

だからこそ、この少年はこんな場面にはこのセリフだと確信し、言う。







「名乗るほどのものではありませんよ」

と、




俺は思い振り返ることもせずその場から立ち去るのだった



***

お読みいただき、ありがとうございます。

次回の更新は今日の夜を予定してます。

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