2つの問い
俺は橋本の言う通り、俺はマンションの下の階のオートロックが入り口に向かった。俺の気持ちとしてはめんどくさいのが5割と橋本みたいな美少女とお話ができる喜びが5割……っていう感じだ。
まあ、橋本が俺を訪ね来た理由は大分謎だし、あんなに嫌ってた俺に話とか、あまりいい予感はしないよな……、
そんなことを考えていると――。
「遅い……」
俺が入り口に到着すると、橋本が不機嫌丸出しで、吐き捨てるように言い放つ。うん……とてもじゃないが、学校のアイドルと言われている人がしていい顔ではない……。
まあ、俺もわざわざ家に来たクラスメイトをぞんざいに扱うほど、腐ってない。陰キャは自分に絡んでくれる人には優しいのだ。
「悪い、それで用は――」
「黙りなさい。あんたと、話したくないし、必要最低限の会話だけ言うから」
「…………」
いや、今気が付いたけど……俺は陰キャでとても優しいけど、そこまでドMではない……少し前までは橋本に蔑まれることに喜びを感じていたが……。
今は少し言い返したい気分になってくる。
「久我峰崎? 私は――」
「何が、話したくないだよ。橋本が勝手に来たんじゃん」
「……………」
わおっ……視線で人を殺せる殺気だ……めっちゃ恐い。
「むっ……私が来たのはお前に言いたいことがあったからよ」
「ああ……ゲーム好きだと勘違いされたことか? それは悪いとは思ってる。俺が適当にいい訳しちゃったから……」
「ふん……」
あれ? てっきり、死ぬほど罵倒されると思っていたのだが……な、なんかバツが悪そうにしている。
なんか、顔は不機嫌そうだが、どこか申し訳なさそうだ。
「あれは私が冷静でいれば、避けれたことだわ。だから、あれは私に責任。お前は気にしなくていい。というか、気にされると気持ち悪い」
「お、おう……」
なんか調子狂うな……俺はもっとこいつに罵倒されないと満足できない身体になってしまったのか……うん、ただの変態だ。
「私が言いたいことは2つよ。1つはお前……遺産のことは人に言わない方が良いわよ? お金のことなんて人に言ってもいいことなんて何もないし、お前の場合は額が額だしね。お前、このままだと馬鹿だからお金目当ての人に利用されそう……」
「え……?」
予想外だな……。
これ、口こそ悪いが普通に心配されているよな……?
「もう1つはお前と飯塚さんが一番プレイしているゲームって、なんなの? 喫茶店で聞いた気がするけど、忘れたから聞きに来たわ」
「え、えっと……」
予想外な質問が続いて、うまく言葉が出てこない。
「いいからさっさと言う」
「あ、ああ、『グランド・ニート』だけど……」
「……頭の悪そうなタイトルね。わかったわ……嘘を吐いた以上はそれなりの知識はつけてくるわ……はぁ、まったく……もうお前と話すことはないわ」
そう言いながら橋本は去っていこうとする……。
「ま、待ててって……もう少し、話を……」
「ふん、悪いけど、私はあんたとこれ以上話すことはないわ……遺産の話、きちんと守りなさいよ……?」
橋本は振り返ることはなく、去っていった……。
わざわざ忠告しに来たのか……? やっぱ、あいつ悪人になり切れてないな……というか、何で俺の家を知ってたんだ……? 謎が多すぎる……。