喧嘩するほど仲がいい?
◇◇◇
俺と飯塚……そして、橋本の3人は何故か一緒にお茶をすることになり、飯塚が行きたがっていた駅前の喫茶店に向かっていた。
道中会話はなく、俺は緊張でガチガチで、橋本は冷静な表情で時折俺と飯塚に観察するような視線を送ってくる。
そして今この状況を作りだした元凶の飯塚だが……とても楽しそうな感じで、その足取りは軽く、今にもスキップをしそうな勢いだ。
(こ、こいつはなんでこんなに上機嫌なんだ? と、というか……な、なんでこうなった……)
いや、陰キャの俺がこんな美少女たちと放課後にお茶しに行くとか、この世の物理法則はいつからパッパラーになった?
現に教室で俺たちが駅前の喫茶行くと聞いていたクラスメイト達からは強い驚きと、嫉妬の感情を向けられた。
特に嫉妬はやばかった……まあ、俺と飯塚たちはマリオとセミぐらいの身分差があるから気持ちはわからんでもないけど……。
「あっ! ここ、ここ! 新規オープンしたらしくて」
そんなことを考えていると飯塚が目当てにしていたカフェに到着した。
外装は近代的でいてお洒落でどこか外国の大きな街にありそうだ。人気なのか飯塚のような今時の女子高生たちで賑わっている。
……俺にとっては間違いなくアウェーだ。
「チーズケーキが有名なんだ! 橋本さん、甘い物って好き?」
「うん、カロリーさえ気にしなければ毎日でも食べたいぐらい」
「わかる~。甘いものって食べると幸せハイマックスって感じ」
「…………」
こ、ここは無理しても会話に混ざべきじゃないのか?
だって、このまま存在が空気になるともうなんかもうどうしたらいいかわから亡くならなそうだし……。
「あ、ああ、俺も甘い物好きだぜ! ザッハトルテとか……」
「はぁ? お前の意見など聞きたくない。お前の好みを聞くぐらいなら、ミトコンドリアの生態について研究したほうが有意義。はっきり言って、脳のメモリーの無駄遣い以外なんでもないわ」
「…………」
うん、めっちゃ裏目に出た……橋本から痛烈なカウンターが飛んできた。な、なんでこいつは俺に対してだけ、こんなにもゴミを見るような目ができるんだ?
普通なら悲しむところなんだろうが……マジでなんか変な趣味に目覚めそう
「くすくす、2人は本当に仲がいいんだね」
「…そんなことないよ」
「はぁ? どこが?」
俺と橋本が一斉に反応をする。
それを見ると、飯塚がますます楽しそうに笑う。
こ、これは仲がいいと言えのるのか? いや、その逆な気がするんだが……。
「何よ? 気持ち悪いからこっち見ないでもらってもいい? これだから、久我峰崎のような男の相手をするのは嫌なのよ」
「…………」
うーん……相変わらず俺への態度は悪い……ここまで露骨に嫌われていると、なんか本当に一周回って可愛く見えて来たな……。
うむ、我ながら変態だし、どんな精神をしてるんだ? とは思うけど……これがいかついおっさんだったら、号泣してるだろう。
「何よ。黙ってるんじゃないわよ……気持ち悪い」
「…………」
さっきはなんか恐くて下手に出たが……可愛く見え居ている今となっては、俺が言い返して、橋本がどんな反応をするか見たくなってきた。
うん……さんざん言われてるんだし、ちょっと言い返してもバチは当たらないだろう。
「…橋本、俺の事を散々気持ち悪いと言っているが、ここまで着いてきて、俺の事をストーカーしてきた、お前の方はどうなんだ?」
「ストーカー!?」
あっ、俺のカウンターがきいたのか、酷く動揺した。
その様子は小動物が怯えているようで可愛い……。
「わ、私が!? お、お前、頭いかれてるの!? 何がどうしたら、そういう結論に達するの!? 尊敬するわ!?」
「いや、だって――」
「だってじゃ、ありません!」
「…………」
何だこの顔を真っ赤にしてる可愛い生物は……。
それは飯塚も感じたらしく、にやにやと橋本を見ている。
「くすくす、こんなにとりみだしてる橋本ッち初めて見たな」
「そ、それはこいつが……! もう、このお店に入るんでしょ?」
橋本は恥ずかしさを誤魔化すように先にお店に入っていった。なんかほんと可愛いやつだな……。