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3人のお約束

   ◇◇◇


 そんなこんなで放課後になる。

 俺はホームルームが終了し、自由という名の時間を噛みしめながら放課後の予定を立てているクラスメイトを見ながら考え事をする。


「…………」


 最近の俺は、とても珍しいといか、独特な学生生活を送っている気がする。


 橋本にめちゃくちゃ嫌われているのは意味不明だし、そのせいで一部の男子の恨みがましい視線でこの世の全てを敵に回した気持ちになったりと……波乱万丈だ。


 主には俺の心にダメージを負わせイベントが満載だったが……その中でいいこともあった。それは――。


「おー久我ちゃん! 昼も聞いたんだけど放課後は開いてるんだよね!? ゲームのことを語り明かそうぜい!」


「あ、ああ……」


 こ、このボッチ陰キャの俺にも趣味であるゲームのことを話せる人ができたのだ。飯塚とは昼休みにさらにゲームの話で意気投合して、ついには遊びに行く約束まで取り付けた! 


 ま、マジか俺……クラスメイトと遊びに行くだけでも奇跡なのに、飯塚のような美少女ギャルとだなんて……。


 そ、そのせいか、な、なんか周りからも注目されていて居心地が悪い……飯塚も人気があるっぽいからな……。


「ねぇねぇ、久我ちゃん、駅前のカフェ行こうよ! モンブランが超絶品らしいんだ! ゲーム話のお供には最適じゃん!」


「あ、ああ……」


「もう、同じ反応、ばっかだね。まあ、久我ちゃん、ゲームのことに饒舌になるから、楽しいし、可愛いと思うけどね~」


「か、可愛いって……」


「いいから! 早く行こうよ! 時間がもったいない――」


『ふふっ、随分と仲良くなったんだね?』


 飯塚が俺の腕を引っ張るとまたもや満面の笑みの橋本が話しかけて来た……相変わらず、目はまったく笑っておらず俺に対してはゴミを見る目だ。


「え、えっと……何か?」


「………………」


 俺の問いかけを無視して、ゴミを見る目のチャンスタイムを継続させる橋本。もうビッグボーナスにまっしぐらだ。


 だが、そんな雰囲気に気が付いてか、気がついてないのか、飯塚はそんな橋本に不思議そうに首をかしげる。


 どこか、悪戯っぽく橋本の反応を楽しんでいるような雰囲気だ。


「えっ? 私と久我ちゃんが仲良くしてちゃだめ?」


「いえ、駄目ではないわ。『他人以下』の久我峰崎の行動を指定することなんてできないもの。だから、本来口を出すことではないのだけど……」


「にひひ、もしかして、久我ちゃんを取られて嫉妬しちゃってるとか?」


 えっ? そうなの!?


「ふふふっ、面白いこと言うのね? ゴミを取られて嫉妬するわけないわ」


 あ……はい、違うみたいですね。


「私はただ……久我峰崎が可愛い女の子と出かけるのが心の底から憎くて仕方がないだけよ」


「可愛いなんていやだなぁ。もう~」


 お前嬉しそうだな……。

 まあ、それはそれとして……。


「その溢れんばかりの憎悪は何処から出てくるんだよ」


 あっ、あまりの理不尽に思わず言い返してしまった……。

 すると、橋本は眉毛をぴくっと吊り上げる。どうやら俺の言葉にムッとしたようだ……だが、俺もそろそろ我慢の限界だ。


 この辺でガツンと言っても罰は当たらないだろう。


「ああの、橋本さん、僕が何かしましたでしょうか? 何かこちらに不備があるのでしたら御教授いただけると幸いです……」


 これが俺流のガツンだ……最強だ。


「…………」


 俺がそう聞くと、橋本は張り付いていた笑顔を消し、どこか不機嫌そうにそっぽを向いて一言。


「別に……」


「えっと……」


 や、やっぱり、遺産の件だろうか……というか、冷静に考えたら、ここで橋本に遺産の件を言われたら大騒ぎになる。


 あれ? そう言えば……クラスの連中、俺の遺産の件は知らないよな……知ったら、大騒ぎになったり、噂になる案件だし……。


 ということは橋本は俺が話した事情を黙ってくれているのか?


「……何よ? そんなに見つめられると気持ち悪いんだけど」


「わ、悪い……」


「…………ふん」


 な、なんかいたたまれない空気になったな……ここから逃げ出したい……。

 とか、考えていると、俺たちの様子をニマニマと観察していた飯塚が、小悪魔的な笑みを浮かべながら、また一言――。


「私たち、今からカフェ行くんだけど、よかったら橋本ッちも来ない? あっ、『デート』なんだけどね♪」


「デート!?」


「デート!?」


 俺たちの声が重なる。

 こ、こいつ何言ってるんだ? 俺たちいつからカップルに……待て、デートに行くからと言って付き合ってるわけではないのか?


 こういう勘違いのせいで俺はモテないのではないか……ここは否定せずに大人の対応を……。


「…………ふーん」


 とか、思っていたが、橋本の視線がもうブリタニアの皇帝みたいな視線だったので、思わず考えを改める。


 やっぱり、誤解させたままはよくない。デーと言うことは否定しよう。うん。誤解させたままはよくない……。


「あ、あの……」


「行く……」


「……えっ?」


「だから行くって言ったの。ごめんさいね、デートの邪魔しちゃって」


 こいつ不機嫌そうに何言ってるんだ……えっ? く、来るの?


「にひひ、そうこなくちゃ! 橋本ッちがこういうのに来てくれるの珍しいから、楽しくなってきちゃった♪」


 いやいや、お前は場をカオスにする天才か!?

 えっ? マジでこの3人でお茶するの?

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