表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
9/42

9話・新たな第一歩


 【西側護衛団 大講堂室】


 「───進化してないヤツみっけ」

 「例の“東側護衛団“のミレイってやつ探してるバカっすよソイツ」

 「……へ〜。ミレイなんてあんな可愛いヤツ、奪ってやろうぜ。進化してないヒヨコにはあの女なんてもったいねえしな…ッ」


 シンはその言葉に確信したのだ。

 ミレイは生きていると────。


 (ミレイ……絶対に俺は……)


 シンは自分のポケットにある“お守り“を握りしめて過去のことを思い出していた。


◆◆◆

 《西大橋街》──7年前・シン11歳──

 

 「ミレイ……はぁ、はぁ……お前はぇ〜よ!」

 「あはは〜!あんたが遅いのよ!」


 俺の故郷である“西大橋街“はその名の通り、街に大きな橋が掛かっていて、街並みが綺麗であることを今になっても思い出せる。


 「なんでミレイそんなに急かすんだよッ」

 「あんたにいい物見せたいからよ!ほらッ、これ使って見てみて───」


 俺はあの時も“大橋“を自身の金髪をユラユラと揺らすミレイと駆けていた。

 そしてミレイは西側護衛団の基地に向けて自信満々に指を指す。

 当時の俺はミレイから借りた望遠鏡で基地に向けてワクワクしながら見てみる。

 ──だがそこには綺麗な情景や宝があったわけではなかった。


 「……は?大人達が話してるだけじゃん」

 

 ただ、大人が席に座って話しているだけだった。

 だけどその時のミレイの眼はキラキラしていたんだ。


 「やっと……私たち連邦と……仲良くなれたんだ」

 「まぁ、そう……だねッ」


 丁度その時、西側護衛団と政府連邦の西支部が協定を結んだ瞬間だったのだ。

 当時の俺は大人の考える事なんて何ら興味がなかったからミレイの言っている事が全然わからなかったんだ。


 「……やったんだよ、あんたのお父さん。」

 「……」


 ──でも、俺はその嬉しそうな顔や眼を見ていると自分まで嬉しくなったんだ。


 「ほらシンッ!あんたも護衛団になりなさいッ!」

 「はぁ…?それはお前の夢だろ、俺を巻き込むなよ」

 「……なんかさ、あんたならこの“狭苦しい世界“をどうにか出来る気がするし──」


 “狭苦しい世界“

 今考えるとそうかもしれない。

 世界の人口の多くは俺ら超人類と違って何も持って産まれ来てない。

 そしてどの時代も“違う人間“に区別を強いてきた。

 ……今もそうだ。


 “うわ!アイツ俺らと違って───“

 “近づくなよ、人間モドキ“

 

 俺らは普通じゃないんだって、俺らは人間っぽくないんだって、自分に言い聞かせて自分を縛るような世界はミレイが言う通り、とっても“狭苦しい世界“だ。


 「だからさ、あんたも私と新しい世界を見ようよ」

 「……え?」

 「私はこう見えてあんたに嫉妬してるのよ。あんたみたいなバカ素直で真っ直ぐ見据える人、あんたの父親とあんたくらいしか居ないよ……だから───」


 そして俺はミレイに嫉妬していたんだ。

 若いながらも、俺の一歩先にゆくその姿が。

 

◆◆◆


 「──おい、お前“シン“だろ?」

 「……え?」


 シンが思いにふけっていると自分の肩に手を乗せて話して来る人物がいた。

 後ろを振り向いてシンは驚いた様子でそう呟く。


 「ここらじゃ有名だよ、機械兵に無断で攻撃を仕掛けた無能力者(バカ)だってよ」


 髪が短く、筋肉質な男がシンに向けて笑いながらそう言った。


 “バカって直接的じゃね“

 “そんな素直に言ってやんなってバーリア“


 そう言うと辺りの仲間らしき奴らも笑っていた。


 「……は?だってアイツら……」

 「だって……だぁ?……なら勝てよ」

 「……ッ」


 そのバーリアと呼ばれた男は鼻で笑う素振りを見せ、また声を発した。


 「はっ……黙っちゃって……。言っておくが、あと数分で始まる“模擬演習“。まず最初にお前(カモ)を狩って頂点(テッペン)を取るッ!……お?きたきた、始まるぜ」

  

 バーリアは人差し指を上に突き立て、ニヤリと顔を歪ませた。

 そして、その瞬間新人団員達の前に大きなモニターが降りて来る。


 そこには、30代くらいの色黒の肌で黄色い髪色をし、星形のピアスをつけた派手な男と、白いメガネを付けた優しそうな50代程の男が座っている映像が映し出されていた。


 『よっ〜!ひよっこ諸君。私はここの団長の“リース“だぁ〜ッ。みんなよろぴくぅ〜』

 『副団長のロギだ。よろしく』

 

 (この人達が……上層部(トップ)ッ)

 

 シンは固唾を飲み、団長と副団長を見た。

 シンの感覚ではあるが、この二人からはとてつもない覇気と威圧感さえ感じていた。

 

 『みんなの“進化能力種(エボルタイプ)“どんなもんかモニター越しに見ていてやるからな!!』


 (進化能力種(エボルタイプ)……。ルアトさんから事前に聞いていたけどここに居るみんなはどんなものを持っているんだ……?)


 “進化能力種“(エボルタイプ)とは──。

進化形態の総称であり、大きく分けて四つある。


 【自然種】

 自然種は名の通り、雷や炎などの自然現象が体に宿り、それを自由自在に操る事ができるという。しかしながら体力をそれに費やしてしまうため訓練は大変だという。


 【異形種】

 人の形を模さない異形と化す事が出来る。だがしかし、暴走性を伴っていたり差別を多く受ける者が多い。


 【生物種】

 動物などの生物の能力が人間に適用され、高い戦闘力や退避性能を持つ者が多い。だがその反面炎に対して弱点を持つ者も多い。



 【特異種】

 存在が確認されているのが極端に少なく、強力な力を持つ者が多いが、その分前例がないため訓練方法や暴走時に抑えるものを探すのに時間を要してしまう。


 『……じゃあ副団長よろしく〜!あっ秘書秘書、この後デートどう?むり?いやいやそんな堅苦しい事言わずにさぁ〜』


 “え?あれが団長?“

 “マジかよ“

 

 新人団員達はざわめき、不満を出していた。

 他の四名を除いて、であるが───。


 「わぁ〜ッ!素敵ですわッ〜。さすがリース様ッ……かっこいいッ……」


 四名の内の一人“メリカ“。

 ピンク色で全身をコーディネートしており、髪色をピンクで染めている女の子である。戦力面では護衛団に入るための強豪の女子校“マリアーヌ学園“で自身の“進化能力種“【特異種】である『超念力』によりぶっちぎりの一位。


 「………強者」


 四名の内の一人“キリクモ“

 忍者のような姿形をしており、目が見えないほど前髪を伸ばしている黒髪の男。戦力面では政府連邦軍の南支部の支配地域を無所属であり単独であったものの、そこにいた多数の連邦兵士らを殲滅させた。

“進化能力種“は【自然種】である『霧隠』をもつ。


 「ふーん。団長は強そうだけど、同期はそうでもなさそうだ。エリートのボクとは違って」


 四人の内の一人“ミカヅキ“

 全身を鎧のようなものを着ており、顔下半分を鉄製マスクで覆っているオレンジ髪の人物。性別は不明であり、自身もそれを多く語ることはない。戦力面では戦歴を残してはいないが、部隊一位を率いる“サグラ“の母校であり護衛団に入るための強豪校“マスター校“に通っている。

“進化能力種“は【異形種】である『剣山』をもち、対面での戦闘力を発揮する。


 「キッショ、なんだコイツ」


 四人の内の一人“ドラーク“

 目の下に大きな隈を持ち、いつも無表情で髪がボサボサの男。暗い青色のフードが付いている服に黒いジーパンを着こなしている。

 戦力面では今までの戦歴がないため、不測定である。

 “進化能力種“は【生物種】である『暴竜』を持つと本人は言うが戦歴からみて嘘ではないかと噂されている。


 『……団長から話があったように、早速だが“模擬演習“という名のバトルロワイヤルを行う』


 副団長であるロギは続くようにそう言った。

 ロギがそう言うと新団員達は鎮まり返り、話を聞き始める。


 『ルールは簡単だ。今から訓練用の木刀とゴム弾が入ったモデルガンを渡す。それらを使って戦え』


 ロギの言葉が響き渡ると、シンの手元に木刀とモデルガンが手元にワープしたかのように現れる。


 (……ん?この俺の上の値は……?125……?)


 シンはその瞬間、先ほどは無かったはずの頭上に現れた数値に眼を奪われる。


 『それと同時にお前らにHP(ヒットポイント)ゲージを表示させた。それがお前らの体力だ。基本値は“100“であって、それにお前らの()()()がプラスされる』


 (……そういうことか……でも俺……)


 (叔父さんとあんなに頑張って“+25“か……)


 シンは護衛団になるため、リアンに特訓をしてもらっていたが、その数値に困惑していた。


 ロギの言葉にシンに話しかけて来た筋肉質の男“バーリア“が大きな声で言葉を発した。


 「……お゛い゛ッ!クソジジイ!テメェ俺が“100“ってどう言う────」

 『弱いんだよ、お前は』

 「はぁ…ッ!?!?」

 『どうせお前みたいなヤツは仲間で特定の人物を見つけ、()()として痛ぶるんだろうが、その対抗策として“サポート制度“がある』


 (サポート制度……ッ?それって───)


 『ルール違反者に対する“制裁“みたいなものだ。我々の精鋭の部隊の一人一人を新人団員に“ぶつける“、ということだ』


 (違反者が現れた時に助けに来てくれる人が来るって事か……いやいや俺はなんで助けられる前提なんだよッ!ちがう、俺は────)


 『ルール違反は2点。“集団行動による襲撃“、“無駄な暴力行為“この2点だけだ。あとはなんでもあり、だ』


 ロギはそう言って、自身の眼鏡を触り、号令したのだった。


 『さぁ───始めよう。護衛団(ガーディアン)に栄光を』


 そして合計百名の新人団員達は護衛団として第一歩を踏み出した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ