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シンギュラリティ  作者: ラーメン
機械行進編
6/42

6話・機械


 【西側護衛団リアン隊室】


 ルアトはドレットに指示を出した後、レジスタンスについての情報を組織の大型モニターで探っていた。

 その最中、リアンからの通信が急に掛かる。


 “ビービービービー”


 「……ん?隊長から連絡……?」


 ルアトは通信機を手に取り、電源を入れる。


 『…………』

 「……こちらルアト…。隊長?なんか発見ありました?急に通信くるなんて暇なんですか?というか」

 

 ……だが、電話の主は何か違っていた。

 その沈黙の先に強い殺気に似たものが、ルアトには伝わり、体の震えが止まらない。


 『……リアン隊。副隊長ルアト』

 「ふ、副団長…ッ!?!?」


 そう、電話の相手こそ“西側護衛団“のナンバー2であり、“皇兵士級“、“上兵士級“、“下兵士級“を束ねる大幹部の“副団長ロギ“である。


 ロギという男は、白いメガネを掛けた初老の男であり、一見優しげな顔立ちをしているものの、実際には団員からは“心が無い人間“や、“暗鬼“と称されており恐れられている。


 『隊長は何処だ。お前達は何を企んでる』

 「い、いや〜パトロールで、ただのパトロールで今現在不在で──」


 ロギはルアトの返答に遮る形で会話を押し付ける。


 『なぜ、()()()と今付け加えた?なぜだ、質問に答えろ』

 「……いや副団長とお話出来る機会なんてないですし、緊張してしまって…はははぁ……」

 『では今お前がここの責任者という事か?』

 「は、はい、あはは……」


 ロギはその不自然さに疑問を抱くと共に、リアン隊にとって衝撃的な事を告げる。


 『リアンが帰団次第伝えろ』

 「は…はい、な、何をですか」

 『リアン隊へ“強制監査“を明日投入する。』


 “強制監査“とは──。

 護衛団の各隊にとって避けねばならない処遇である。スパイ疑惑が掛かっている人間が所属する隊に強制的に監査員を投入して不法行為を探ったり、今回のように他の隊には無い“行動“があった際に直々に副団長が下す事がある。


 「は、はいッ!?い、いや俺らは何も……」

 『護衛団規定第156条を読み上げろ』

 「……“団員は秘密事項を伴う調査を行う際、指揮官級の承認を得なければならない。ただし皇兵士級を除く。“……です」


 ルアトは自らそう言うとビクリと肩を振るわせる。

 そう、気づいてしまったのだ。

 ルアトが使用していたモニターは組織のものであり、全て“管理“されていることを────。


 『そう、その通り。レジスタンスについての調査は“こちら“で行う。お前らは命令に背くな、それだけでいい。お前らは組織の機械であれ』

 「……はい」

 『では明日、監査を投じる。“護衛団(ガーディアン)に栄光を“』

 

 ロギはそう言うと通信を切る。 

 それに対してルアトは頭を抱え、机に突っ伏したまま声を漏らした。


 「自由を手にしたいとする機械と上の意向を聞くしかできない人間(俺ら)……どっちが“機械“かわからねぇよ……チクショウ」



◆◆◆


 【東街】


 「グギギギギ…」

 「……」

 

 シンは四方八方を数体の機械兵達に囲まれていた。


 「ガガガガガ…」

 「ギグギガガガガガガ‼︎」

 「ギグ‼︎ガガガガガ‼︎」


 (G500型同士で会話してるのか……?頷き合っていてコミュニケーションが十分に取れてる……。旧型を改造してあぁなっているのかもしくは─────)


 ───シンの思考が巡ったその時、腹に激痛が伴う。


 『“ザー・ノイド“進行する。』


 目の前に居たのは“G100型“。2200年現在では販売が停止している護衛型アンドロイドのプロトタイプであった。


 「……ッぐッ‼︎」

 『標的の損傷を確認、もう一撃を準備』

 「お〜、“ザー“!いいパンチだ」


 ライオットに“ザー“と呼ばれたG100型という機体は他のG500型よりも二回り程大きく、二メートル以上の機体である。

 

 (……なんだこの機体……プロトタイプなのになんだこの力の弱さは……)


 プロトタイプの強みはその図体の大きさと単純な“力強さ“であった。速さを犠牲にした代わりに、力の強さに技術を振り、その力こそ車一台をただの鉄塊に変えるほどのもの。だが、この“ザー“は違っていた。

 

 (……長年使用した結果の老朽…?あるいは改造の失敗か…?いや、どっちにしろ……)


 『───もう一撃を開始』


 ザーはシンの顔面を目掛け再び拳を振り上げる。

だが、シンはその動きを見切っていた。


 (……やるしかない!!!!)


 顔面に向けて放たれる拳を受け流し、相手の胸あたりまで跳び上がるシン。


 『……』

 

 (G100型の弱点ッ!!胸にあるコアだッ!)


 “G100型“の弱点はその絶大な力の代わりに膨大なエネルギーを要する。

 そのため、胸の辺りにコアという大きなものが目立つように設置されており、この機体以降に出た機体には燃費が悪いためコアの取り付けは行われていないという。


 「……ッ!!!」


 シンは体を捻らせ、歯を食いしばりながら自身の足を敵機の胸に向けてキックを繰り出そうとした───。


 「────お〜すごいね、シン」


 コアに向けて蹴り出さんとしていた矢先、ライオットが楽しげに言い放つ。


 “───でもザーにはコアなんて無いよ。“


 そこには何も無かった。


 (……は?)


 すると、前にいた筈のザーに後ろへ回り込まれる。

 あまりの速さにシンは言葉を失ってしまう。

 

 「……っ……」


 シンは後ろを振り向く。

 目の前には拳が其処にあった。


 『……ガガ……ガガガガ』


 しかし、ザーの拳は目の前で止まっていた。

 ザーの目と思しき場所が赤色と青色で交互に点滅し、目線がシンのズボンの中にあった“お守り“に行っていった。


──その直後、青い閃光と共に暴風がシン達を襲ったのだった。


 シンはその風によって地面に叩き落とされるものの、立ち上がる。


 「痛ってて……なんだよ、これッ……」


 だが、そこには異様な光景が広がっていた。


 『ジジジジ……一部…損…損傷』


 ザーは腕一本が風によって切り刻まれ、なくなっており、他G500型は死屍累々となってバラバラに倒れていた。


 ……だが、当事者であるライオットはその場から消え去っていた。


 「……西側護衛団、ドレット」

 

 ドレットと称した青年は気だるそうにそう言って帯刀していた長刀を抜き、ザーに対して構えた。

 


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