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シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
37/42

37話・最悪の未来へ


 《大講堂室(住宅街フィールド)》

 

 突如入団式の最中、新人団員の前に現れた反乱軍の長“ゼフォドラ”は復讐の為にシンに襲い掛かる。

 そこでシャド隊はゼフォドラの侵攻を食い止めんと彼の前に立ちはだかった。

 そんなシャド隊はゼフォドラの実力に対して抗えず、苦戦を強いられる事になるものの、援軍としてサグラ隊が駆けつけたのだ。


 「━━━グォォォ!!」


 人狼と化したサグラ隊”ウォル”は縦横無尽に地を駆け、ゼフォドラへ突進を開始する。


 『ギガガガガガカ━━━━━━━』

 「う、うわぁぁぁ!?!?逃げろ!」

 「なんで施設内にッ!?」

 「殺さないでくれ!!」


 一方その隙を突き、内部に侵攻する機械兵らが戦闘する術がない職員達に向けて飛びかかろうと躍起になる。


 たが彼らの前に、サグラ隊“レオ”が赤と黄が混じった長髪をなびかせながら、拳に付いている金属製の機械をバチバチと鳴らし、目を瞑り立ちはだかる。


 彼女は閉じていた瞼を開くと、敵兵に向けて一喝する。


 「……こっから先は通さないよッ!!」


 レオは一体の機械兵に対して突進するかのように地面を蹴ると、ほんの一瞬で機械兵の頭部に彼女の拳が到達する。

 ━━まるで”磁石”がくっつくような、事象であった。

 

 『ガギガガガギガガ━━━━』

 「━━━吹き飛べェェェ!!!!!!」


 彼女は当てた拳の力を抜くと、その行為とは裏腹に大声で叫び始める。

 その瞬間、その機械兵は職員らが居ない方向へ一直線に吹き飛んでいく。

 そして吹き飛んでいった一体の機械兵は粉々に砕かれ、そこからは動く気配など微塵も感じさせないものだった。


 『ガガガ……攻撃対象変更』

 

 だが、他の多数の機械兵がレオの存在に気づくと共に、赤い目を光らせながらレオの方向に目線を移す。

 その姿を見たレオは真剣な目を突き返して笑って応えた。


 「ふふ……こっから先を通りたきゃ……私を止めてみなよ」


 「……うわー、レッドのダンナ。レオのやつスイッチ入っちゃったよ。こりゃ夜に酒何杯飲まされるか……ひぃー、想像しただけでも気持ち悪くなってくる」

 「メガロォ!!テメェ、レオの酒癖の話は良いからよそ見してないで戦えバカ!!」


 レオのその笑みはどこか楽しげな少年のようで、手のつけられない猛獣のようなオーラを放っていた。


 ◆◆◆


 ━━レイside━━


 そしてその戦闘が始まったばかりの時、レイとキリクモはシンを探しにフィールドを彷徨っていた。

 そんな中、レイが歩きながらキリクモに向けて口を開く。


 「……あともう少しで”最悪の未来”にたどり着いてしまう」

 「“最悪の未来”……というと?」


 レイはキリクモからの問いに苦しそうに回答する。


 「このままじゃ……シンが死ぬ。シンだけじゃない、色んな人がもう少しで死に絶える。……そして東側と同じように西側も壊滅に追いやられる━━━━そんな未来が待ってる」

 「……何を根拠にそのような事が言えるのだ」


 キリクモは怪訝そうに苦しそうに呟くレイに突き返す。


 「……考えてみよ、今の状況を━━━」


 そしてキリクモは更に戦況をまとめるために、自身の服から液晶が付いた端末を取り出し、今居るフィールドの3Dサイズの地図を画面に表示させてレイに見せる。

 

 「……今の戦況をまとめよう。今はゼフォドラ様と対してシャド隊、リアン隊、サグラ隊が戦闘中で戦況は数的有利により優勢」

 「そして一方の機械兵残党を掃討するためにダーラン、サグラ、ジェイト殿、シェーナ、レイゲンが動いている、と言ったところ。恐らくもう此処は打破できているであろう」

 「……その“最悪の未来”が現れるなんて事が今の状況ではそうは思わないはずだ」


 だがレイはその発言に対して不安そうな態度でキリクモに向かって言葉を発した。


 「……そう。今の状況のままならそう思う」

 「何が言いたいのだ」

 

 レイは全てを口にするために、自身の目をキリクモにあわせて息を詰まらせないようにゆっくりと次々と言葉を吐く。


 「自分は昔から少し先の“未来”が目に浮かんでしまう」

 「いわゆる“進化能力”っていう人を超えた能力でね」


 レイは輝きを失ったエメラルドの色をした眼をキリクモに向けながら、語る。

 その姿は泣きそうな少女のようで、先を見据える賢者のような不思議なものを感じさせる。


 「……」


 キリクモはその美しさか、同情か。

 口を閉ざし、レイの言葉を耳に入れる。


 「……自分はその未来が少しでも良くなるために行動して、避けるべき未来を避けてきたつもりだった」

 「でも、今回の未来はどうシュミレーションしても、その未来から避けられない。一つの”手段”を除いて」


 言葉は淡々としていたが、どこか悲しげな声色と表情をしたレイ。その姿にキリクモは疑問を投げかける。


 「……その手段…とは何だ」

 「自分の命。そう、私自身がゼフォドラの囮になる未来が一番“最悪の未来”から遠ざける事ができる━━━」


 レイはなんと、自身の命を差し出してまで壊滅的な未来を変えようと案を出してきたのだった━━━━。


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