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シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
36/42

36話・反撃の狼煙


 《住宅街フィールド》── シャドside──


 シャド隊はゼフォドラに向けて作戦Ωを実行し、隊員で一斉包囲を仕掛けた。

 シャドがゼフォドラを固定し、キール、ザイン、ステラルがそれぞれの特質を生かし、意表を突く。


 (一斉に包囲し、一気に叩く。悔しいが今はこれしか手は無い)


 シャドはそう思考しながらも自身の闇により生み出した“蛇”の力を増幅させる。


 ───だが、それはシャドが思っているよりもゼフォドラの実力は高いものだと思い知らされる事になる。

 そしてその瞬間、ゼフォドラは迫り来るシャド隊を察知すると、なんと自身の身体から前方位に向けて無数の針が飛んでいったのだ。


 「がぁぁぁぁあ!!!」


 その針はまずステラルの身体に突き刺さり、全身の神経を痛みという刺激で覆われる。

 まるで毒に侵されたかのようにみるみる内に血色が悪くなるステラルは地面に落ち、苦しみ悶える。


 一方のシャド、キール、ザインはその毒針を一時的に弾いたり避けたりして回避をしたが、シャド隊としては一種の隙が生まれてしまった。


 (……しまった。これはかなりまずい───)


 シャドはそう思考したのも束の間、彼の目の前にはゼフォドラが斬撃を繰り出しているのだ。

 一方のシャドはゼフォドラに闇で拘束したままで両手が塞がっているという最悪の状況。まさに危機が迫っていた。


 (このままでは────)


 斬撃は地面を削り、空を切り刻みながらシャドの目前へと現れる。


 (いや…方法はまだ残されている。俺がこの一撃を受けるその一瞬で他の奴がゼフォドラの隙を捉えるはずだ──)


 シャドはまだ希望は潰えてはいなかった。

 シャドがこの一撃を喰らう事で、ゼフォドラの意識を自身に向けさせる事で一矢報いる、というものを構想していた。


 しかし、その構想は瞬時に打ち崩される。

 周りを見渡すとステラルはもちろんのこと、キールはゼフォドラによって蹴りで吹き飛ばされ、ザインは能力の使用で疲弊している。


 (……可能性は低いがセナに賭ける、か───)


 シャド隊セナは隊の中でも臆病であり、引っ込み思案な性格であるのをシャドは良くわかっていた。

 だからこそシャドは自分なりの優しさで、セナを前線に引き込む事をしなかったのだ。

 でも今は、セナの”光の壁”という防御に徹した“進化能力”がシャドには必要不可欠なものであることをシャドは悟ったのか、声を上げる。

 

 「……セナ!!!」

 「…ッ!?」


 セナはシャドがこんなにも声を荒げたことを聞いたことがなかったのか、ピクリと体を震わせたが一瞬でその意味を理解して両手をシャドに向けて言い放つ。


 「“光壁”です!!」


 その瞬間、シャドの前に光の壁が現れるとゼフォドラの斬撃をその壁は受け止める事に成功する───。

 そしてシャドは反撃の時を待っていたかのように敵に巻き付いていた闇の大蛇を、刀のような形に戻すと、ゼフォドラへ一直線に猛進する。


 (これが最後の────攻撃だッ!!!!)


 意識を集中させたシャドは倒れそうになるも、自身に残る余力を全て出し切るつもりで、声を上げる。


 「……“連”ッ!!」


 刀を闇で形成したシャドは敵に向けて乱れ斬りを続けて力を奮う。その攻撃に驚かされたゼフォドラは一切の防御が出来ないまま切り刻まれる。


 『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!』


 ゼフォドラは次の瞬間、雄叫びを上げるかのように痛みを耐えながらシャドの腹を大爪で薙いだのだ───。


 シャドは致命傷にならないように避けたが、地面に転がり落ちる。

 彼はゼフォドラには大打撃を与えたと思い、敵である猛者“ゼフォドラ”に向けて視線を向けた。


 しかし、その猛者はまだフラフラになりながらも“立って”いた───。


 それどころか、ゼフォドラの先程の吠えによって“フィールド”は完全に破壊され、本来の大講堂が丸見えになっている。

 

 「……た、隊長。て、て、敵がたくさん入ってきてます」

 「……何?」


 セナが冷や汗を掻きながら辺りを指を指す。

 その光景は多数の機械兵が組織に入り込んでいく衝撃的なものである。

 そして組織には戦えない無力な事務員が多く、入り込めば多数の屍が生まれることになることを誰もが予想できた。


 ……その衝撃的な光景の最中、意外な人物から連絡がシャド宛に届く。


 『……そんなこともあろうかと、そちらに援軍を向かわせてますよ、シャド隊長──』

 「……ルアト、だと?」


 その声の主こそ、リアン隊の頭脳を持つ“ルアト”である。

 ルアトはシャド隊の戦闘を見ながら、様子を伺っていた。

 その事実を知ったシャドは不服そうに吐き捨てる。


 「……偽善、か」

 『さぁ、偽善かどうかは出てくるメンバーを見たらどうですか?』

 

 ルアトがそう言った直後、後方から誰かの声が聞こえてくる。その声は四つの声に分かれ、シャドに向けられてるようだった。


 「……さぁ!シャド隊にオレ達の方が強いってこと証明してやろうぜェ!オメェら!!」

 

 赤い髪を尖らせた男、サグラ隊副隊長“レッド”は両拳に爪のような暗器を身につけ、体を炎で発火させながらそう吠える。


 「……ふん!右眼が疼くぜェ!!メガロォ!いっきまーす!!ぶっ殺してやるぜぇ!!」


 銀髪で歯がギザギザで目付きが鋭い男、サグラ隊伍長“メガロ”はふざけたようにそう叫ぶと、身体が紫色の電気のような力がまとわりつく。そして自身の銀髪に紫色が混じり合い、黒目であった右眼が紫色になる。

 メガロの手には重そうな大剣を片手で持ち、自身の肩に乗っけたままゼフォドラに指を指す。


 「……伍長とダンナは元気だねェ、にっしし。俺っちもたまには運動しなきゃネ。にっしし。がおーもーどになろぉ」


 ウルフカットで背の小さいおっとりとした男“ウォル”はそう言うと、みるみる内に身体が大きくなり、毛が生えて爪が伸び、まるで“人狼”のような風貌に早変わりしたのだ。


 『グォアァァァ!!』


 そして野生獣のような猛りを見せ、辺りの機械兵に威嚇するウォルはゼフォドラに向けて突撃し始める。


 「……スーッ。はぁ、うちの男どもはホント……。ま、やるしか無いよね。シャド隊救出とか滅多にない大仕事だもん」

 

 髪が赤色と黄色に混じり合った長髪の女“レオ”は息を整え、臨戦体制へと入る。

 その姿は空手のような形であり、拳には機械が付いたグローブを身につけている。


 彼らの姿を見たシャドは複雑そうな顔でルアトに声を返した。


 「……援軍……感謝する。だが、うちの隊は壊滅的だ。戦闘面では力になれない───」

 『はい、大丈夫です。そちらのステラルさんは重傷そうなので無人ドローンを送ってますから、安心して下さい』


 シャドはその言葉に少し疑問を覚え、それをルアトに投げかける。その疑問はごく簡単なものであった。


 「……お前ほどの頭脳の持ち主が、何故偽善者であるリアンについて行く。レイゲンも同じだ。なぜ七位であるリアンに固執するんだ」


 ルアトは少しの間があった後、当たり前かのように答える。その答えはごく簡単なものであった。


 『”ついて行きたい”と思ってるから、ですかね』


 そうしてシャド隊はリアン隊、サグラ隊の支援を受けて反撃の狼煙を上げた────。


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