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シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
32/42

32話・俺の道


 《住宅街フィールド》──シンside──


 「前線への戦闘、つまりは最後の手段。作戦Ωオメガを実行する」


 シャドは隊員らにそう無線機で告げた後、自身の長髪を後ろで結び、理性を失いかけている猛威へとポケットに手を入れたまま歩みを続ける。

 そして団長が造ったフィールドは皮が剥がれるかのように綻び始め、ゼフォドラは真っ直ぐシャドの方を見ていた。


 「……ッ」


 ──先に動いたのはシャドの身体であった。

 シャドの足はバネの如く前方へ踏み込み、直進する。


 「……“(レン)”ッ!」


 シャドはゼフォドラに向けて闇の双剣を突出させて何度も、そして何度も何度も切り刻む。


 「ガァァァァ!!!!」


 だが、その連撃はゼフォドラの大爪により全て弾くと同時に、またもや咆哮を上げるゼフォドラ。

 咆哮は辺りのフィールドの皮を更に引き裂いて崩壊していくほどの威力を持っていたのだ。


 その咆哮にシャドは怯む。そして次の瞬間、ゼフォドラの前蹴りがシャドの腹部に激突したのだ。


 「ぐ……ッ!」


 そして追撃するかの様にゼフォドラの大爪横払いがシャドの頭上に向かっていく───。

 

 「……ッ」


 その攻撃を目視したシャドは上半身を後ろに反り返り、ギリギリのところで攻撃を避け切った。

 直後、シャドは反撃の隙を狙って自身の下半身に力を込めて闇を集中させ、そのまま脚を上に振り上げてゼフォドラの顎に目掛けて蹴り上げたのだ。

 彼は蹴り上げた後、何事もなかったかの様に立ち上がり、ゼフォドラから距離を取り再び戦闘体制へと身体を戻す。

 だがしかし、ゼフォドラは怯むどころか闘気が練り上げられている様子でシャドを睨みつけている。


 「………何?」


 ──その時予想外の景色がシャドに瞳に襲い掛かる。


 「あぁ……」

 「……殺す」

 「……あぁ……」

 『ガガガガガガ…ッ!』

 『……排除対象発見ッ』


 シャドが目視したのは、ゼフォドラに切り刻まれ洗脳された正気を保っていない新人団員達と赤い目をした大量の機械兵らがゼフォドラの背後から出現した光景だった───。


 「…………」


 シャドはゼフォドラの顔を再度目視すると、彼の目は復讐心を灯しながら涙を流し、ずっと命を燃やしている。


 「……ふざけるな」


 シャドは小さくそう呟くと、身体全体に闇を纏っていく。その闇は彼が歩みを進めるごとにその力は増していく。

 

 「俺は自分の部下であろうと、仲間であろうと脅威であるなら手段など選ばない。俺には俺の道がある」


 シャドは闇の力を生み出した双剣を操られている新人団員ら含めゼフォドラに向けて斬撃を喰らわそうと、姿勢を整える。


 「……消し飛べ。“()”」


 全身の集中を()()()の仲間に向けて解き放とうとしたその時、とある声がシャドの耳に入り込む。


 「……やめろ」


 シャドが打ち放とうとした背後には新人団員の内の一人、シンがふらふらとした立ち姿でそう言った。


 「……この一撃はお前すらも巻き込む。死にたくなかったら逃げろ」

 「……ちげぇ……そいつらは俺の同期なんだよ……まだ次がある仲間なんだよ……まだ話したことやつだらけなんだよ……」

 

 シンはふらふらとしながら、シャドに向けていい放つ。


 「……そんなヤツらをアンタの一存で殺させるかよ……」

 「お前……何を言ってるのか分かってるのか」


 シャドが無表情でシンに問いかけた。

 シンはその問いに呆れた様に笑いながら答える。


 「それは…こっちのセリフだよ。仲間ごとやるなんて護衛団として、いや、人として外道に堕ちることになる。多分このまま切り殺したら叔父さんは勿論だけど、親父も……ブチ切れる」

 「……」


 シャドはその言葉を聞いたが、無視をして構えを続けて斬撃を放たんとして息を整える。


 「……スーッ」


 (アラギ団長、リアン、シン。だから嫌いなんだ。俺に対して手を差し伸べる”偽善”の厄介な家系だ。それにもう俺は既に外道に───)


 『隙ヲ発見、戦闘を開始ッ』


 シャドがそう思考したその時、敵は総攻撃を仕掛けるかの様に突撃してきたのだ。


 「───“破”」


 その瞬間、鞭の様にしなる闇の斬撃が辺りの住宅街を破壊する勢いで兵士らに吹き飛んでいく。


 「だ、だめですー!!“光壁(こうへき)”ッ!」


 しかし、その斬撃はとある女な声と共に敵兵士に当たることなく、何かに阻まれたかのように打ち止まる───。


 「……はぁはぁ、やっと、ま、間に合いましたぁ!!」

 「ザイン、到着致しました。キール副隊長からの緊急指示により少々手荒な真似をしてしまいました。ですが…そこにいる新人隊員の言う通り、仲間への攻撃は違反事項です。シャド隊長」

  

 その時、白髪の褐色の女隊員“セナ”と青髪のオールバックの目つきが鋭い丁寧語の男隊員“ザイン”がシャドの背後から現れたのだった。

 

 シャドは後ろで声が聞こえたが、彼は後ろを振り向かず隊員らに声を出す。


 「……キールとステラルはどうした」

 「副隊長とステラルはゼフォドラへ奇襲を掛けるために移動中です。正面からは我々が軍勢を貫きます───」


 シャドはその言葉に否定することはなく、頷きザインに指示を出した。


 「……任せるぞ、ザイン、セナ」

 「……!?了解」

 「…え!?は、はい!分かりました!頑張ります!」


 シャド隊は作戦Ωを本格的に始動したのだった。

 だが、シャドはこの時点では知る由もない。

 ゼフォドラの真の実力はシャド隊でどうにかできるほど、甘くない現実に───。












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