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シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
26/42

26話・開かれた眼


 《住宅街フィールド激戦地帯》


 「──戦闘開始です!!」


 そのルアトの号令により、『リアン隊最強格“雷神”レイゲン』、『絶対的ランク一位“爆炎”サグラ』、『氷凍てつく戦闘狂“氷姫”シェーナ』、『究極なる老兵“斬者”ジェイト』、『孤高極めし奔放者“孤月”ダーラン』ら五人は敵機百三十七体に意識をそれぞれ向けた───。


 そして早速、攻撃を仕掛けたのは“氷姫”シェーナ。

 彼女は自身の脚を振り上げ、地面に足を自ら叩きつけた。


 「さぁ、来なさい?私は……強いわよ?」


 彼女がそういうと同時に彼女の足を叩きつけた地面がみるみる内に凍っていき、更には大きな氷柱の様なものが敵機械兵に向けて猛進して行ったのだ。


 『ガギギ……』

 

 その氷柱は敵機らの体を次々と貫き、破壊して周っていく。その様はまさに針地獄、それを見てシェーナは満足そうに笑っている。

 その姿を見た老兵、ジェイトは感心するかのようにレイゲンに向けて話しかけた。


 「ほっほっほ。これが“若さ”かの?のう、レイゲン殿?あれまぁ〜。」


 だが、ジェイトが話しかけたレイゲンの姿は既にあらず、敵地にむけて歩みを進め、敵機を二体三体と薙ぎ倒していた。

 

 「ふーん、強いなぁ。これ僕いるかなぁ、いらないね。暇だなぁ〜」


 一方その頃、無能力者の強者“ダーラン”は暇だと嘆きながら散歩をし始める。


 「もう戦地に赴いておったかぁ、これまた愉快愉快じゃのぉ……。ワシも少しばかり“戯れ”でもしちゃるかのぉ。ほっほっほ」


 ジェイトは笑いながら言うと、腰にかかる刀を鞘から少しずつ抜き出して小さく呟く。

 その姿はこの時代にそぐわない達人の域を越した類稀な“侍”の間合いであったのだ───。


 「秘技……“五月雨(さみだれ)ノ刃”───」


 その小さな呟きは誰にも届きはしなかったものの、老兵の刀は少しだけ鞘から出しただけで多数の斬撃が敵機械兵の首めがけて飛来していく。

 その斬撃はドレットの『鎌鼬』よりも少しばかり速度は落ちているものの、抜群の切れ味と精巧さを持っており一撃で敵の首が次々と飛んでいくのだ。


 「ほっほっほ。愉快愉快────」


 ジェイトは高尚に笑い刀を鞘にしまいながらそう語った。

 するとその姿を見たレイゲンは気持ちを昂らせ、戦闘をしながらル無線でルアトに聞いていた。


 「副隊長〜!!あれなんすか!?あのスパパーンってやつ!なんてじいちゃん誰すか!?」

 『……戦ってる時に連絡いれないで集中しろよ!!あの人はジェイトっていうお偉いさんで、めちゃくちゃ強い!!ってか集中しろバカレイゲン!!』

 

 レイゲンは副隊長の通信に感心し、次の言葉を発しようとした時であった。

 彼の背後から聞いたことがない音が聞こえ、それ共に殺気も彼の背中に突き刺さる。


 『ツインズは……“雷神”破壊し、旦那様に───』


 その音は声となり、ツインズと自称した髪の長い女性型アンドロイドはレイゲンに向けて大きく光り輝く光弾を発射したのだ──。

 その光弾は他の機械兵を巻き込み砂埃の粉塵が辺りに舞うが、それに対しても“ツインズ”は容赦なく光弾を打ち込んでいく。

──気配がなくなるまで、そう容赦なく。

 

 『……分析』

 

 粉塵が舞い周りが見えないツインズは声や物音、更には心音さえ察知機能を働かせて辺りの“音”を調査する。

 

 『……分析完了。“雷神”の破壊を確───』

 「───よっ!」

 

 すると突然、とある声がツインズの背後から聞こえてくるではないか。

 そしてその声は元気よくツインズの聴覚機能に刺激し、咄嗟に攻撃体制で後ろを向き、光弾を撃ち込もうと全ての力を出し切って発射準備した時だった───。


 後ろを振り向いた直後、気づくとツインズの体は後方へ目の前に見える糸目の黄色い電流をまとうレイゲンから遠のくように吹き飛んでいっている。それもただの衝撃ではなく、”雷”を伴う衝撃が体全てを走り駆け巡るのだ。


 『ガガガガガガ……衝撃を確認。最後の一撃を準備し、砲撃を開始…!“撃乱砲(げきらんほう)”』

 

 ツインズが視界を強化し、自身の頭上に向けて強大な光弾を放つ。その一撃は辺り一面を焼け焦がし、標的に向けて上空に飛ぶ”大砲”のような威力だ。そしてそんな威力を保ちながら木の枝のように分かれ、まるで流れ星のようにレイゲンに向けて降り注ぐ。


 『“撃乱砲”は標的に必ず当たるようにプログラムされている。終いだ“雷神”』

 「そっかぁ、でも俺は──」


 吹き飛ばされながらツインズが放つ言葉にレイゲンはその乱撃を目にして糸のような目を笑うように歪ませる。

 その一瞬、光弾はレイゲンのすぐ頭上に舞い降りて無数の刃のように突き刺すように降り注いだ───。

 

 「──負けないけどね」


 ──だが尚その瞬間もレイゲンは笑っていた。

 そう、強者との交わりで高揚しているのだ、

 内なる”モノ”を呼び戻せると──。


 「……“黒雷化(こくらいか)”ッ!!!」


 頭上に来たその一瞬、レイゲンは発した。

 その刹那に身をまとっていた黄色い電流はその一喝により強靭さをまとう黒い電流へと変化する。


 そして閉ざされていた“眼”はゆっくりと開かれ、勇猛果敢さが現れる“朱く輝く”宝珠のような美しい眼が、見ていたツインズの脳裏に張り付く───。

 

 「“黒雷脚(こくらいきゃく)”───ッ!」


 ものの一秒。それだけだった。

 吹き飛ばされて百メートル以上離れたレイゲンが目の前で自身の頭上に蹴りを入れていた。

 一撃は衝撃波を持ち、体が更に百メートル先の住宅街へ吹き飛ばされていく。


 『早い────対抗策は───』

 

 そんな暇など無い。

 有るのは死へのカウントダウンである。

 一方レイゲンはツインズを吹き飛ばした直後に自身の武器を投げ、コチラに向かってきている。


 『武器を──投げ捨てている。これは勝機有────』

 「無いよ、残念」


 その投げ飛ばしたレイゲンの武器は黒い電流をまといつつ、高速でツインズに向かう。

 そして投げたそれよりも”速く”レイゲンはツインズの胸部を蹴りつけたのだ──。

 

 「名づけて“疾風漆黒迅雷”───と“黒雷電飛来”ッ。うーん、安直かなぁ」


 彼がその言葉を吐く頃にはもう事は決していた。

 ツインズの胸部をレイゲンが貫き、更に黒雷電飛来と称された黒い稲妻が追撃をしていたのだ──。

 

 『……』

 『ガガガッ!』

 『ギギギガガガ』


 しかし、ツインズは完全に機能が停止したものの、他の機械兵らがジリジリとにじり寄って仇を討たんと伺ってきている。


 「あれ?体が……」


 だが、レイゲンにはこれを迎撃する気力はもう尽きている。それを察知したのかルアトが咄嗟の判断でサグラへ連絡を入れ助けに向かわせ、この激戦は幕を下ろしたのだった。


 ◆◆◆


 《リアン部隊室》──ルアトside──同時刻──


 ルアトは電子機器に向かって座り、サグラに対して援護要請を無線にて伝えていた。


 「……サグラ隊長、すみません。レイゲンの援護を頼んでしまって」

 『謝るな。俺らは“チーム”だ。リアン隊とは普段仲は……良いとは言えないが、これはいわゆる防衛戦だ。それくらいの事で落ち込むな』

 

 彼はその言葉を聞くと、胸を撫で下ろし安堵する。

 そのままサグラにお礼を言い、通信を切ろうとしたその時、ルアトの背後から耳を壊すような大声が聞こえて来る。


 「お〜〜いテメェ!誰に断って“カシラ”に通信してんだよ!オレサマを差し置いてテメェ!!」

 

 ルアトはその聴き慣れた大声に振り返って言い返す。

 

 「レッド……お前何でここにいるんだよ……」


 そこにいたのはサグラ隊副隊長“朱き虎(あかきとら)”レッドである。

 その様相こそ、髪色は赤く、歯はギザギザで目付きと態度が悪いチンピラ上がりである。だが、隊長であるサグラには忠誠を誓っておりカシラと称して崇めている。


 「あぁ!?サグラ隊(うち)で噂になってンだよ!ルアトのバカチビがウチの”カシラ”に──」

 『おい聞こえてるぞ。あと“カシラ”呼びはやめろレッド、勘違いされる』

 「え゛!゛?゛」


 レッドはその言葉に強く反応し、弁明しようと言葉を荒げて身振り手振りで説明する。


 「い゛、いやこれは───」

 『……お前任務はどうした』

 「こ、これからっすよ“隊長”」


 するとその時、部屋に入ろうと迷っている人物を目にしてレッドをサグラに任せてドア付近まで行くルアト。

 

 「えーっと、すみませんここは関係者以外───」

 「……シンはいるか?」


 そのドア付近にいた人物は短い黒髪をしており、男か女か判別がつかない格好でルアトの真前に立っていた。

 声は高く、背はルアトと同じくらい。口元を隠すように黒いマスクで覆い目元は憂いを帯びたように死んでいる。


 「……今はちょっと大事な任務?で外してますけど貴方はどちら様でしょうか」

 「……じゃあいい。邪魔したな」

 「いやいや名前を───」

 「……じゃあ“レイ”、()()でいいか?ではこれで──」


 ルアトは去りゆく謎の人物のその姿を見て、首を傾げて不思議に思いふけり一言呟いた。


 「名前に『じゃあ』って…変な人もいるんだな」








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