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シンギュラリティ  作者: ラーメン
入団式編
15/42

15話・二人の新人


 住宅が立ち並ぶフィールド上で政府連邦の大監獄“箱舟”から脱獄した者“ゼフォドラ”の登場、そして次々と現れる機械兵らの影響により、『模擬演習は中止する』と副団長から通達があった。

 

 そして避難を命じられた新人団員達は西側護衛団の砦に逃げ込むのだった。だがしかし、それはシンを含む五人を除いては戦場に赴いていた。


◆◆◆


 《住宅街フィールド郊外》


 「ふぁ〜、結局中止になったのかよ」


 そのうちの一人、ドラークという目の下の隈が特徴的な男があくびをしながらそう呟く。

 そしてドラークは転がっていた住宅の瓦礫の上に座り、空を見上げた。


 「よく出来てるなぁ、これ。作り物とは思えねえ」


 その空は蒼く澄んでいたが、あくまでこれは団長が作った仮想世界の様なものである。

 するとその時、彼の目にとあるものが入り込んでくる。


 「は?なんだよアレ」


 まさに大きな鳥が羽ばたこうとする姿が、その非現実的な事象が身の回りに起こっている。

 

 「まさかオーダーか?」

 「……ってなわけないない。さぁさぁ昼寝っとぉ」


 ドラークは目に入った事象から現実逃避するように瓦礫の上に寝そべり、空を見上げた。


 『わわわ〜!!鳥さんだぁ〜!』

 「ッ……!?!?」


 ドラークは意識外からの突然の声に驚き、飛び起きる。

 

 「……え、お前確か───」 

 「あぁ、すみません〜!後を尾けてしまったのがバレちゃった〜⭐︎ワタシは貴方と同じ新人団員の“メリカ”ですッ。よろしくッ⭐︎」


 メリカと自称した女はピンク色の髪をし、ピンクの服を着こなしている派手な人物であった。そして彼女はドラークにお辞儀をする素振りをした後に、片目の瞼を閉じてウィンクをする。


 「うわキッシ……おっほん。俺はドラーク、つかなんで俺を尾けてたんだ?」

 「あッ……いやそれはぁ〜」


 メリカはモジモジするように顔を赤面させ、手を胸に当ててゆらゆら体を揺らす。


 「あぁ、ごめん。俺今そういうの募集してな───」

 「強そうだなって⭐︎」

 「あ゛ぁ゛あ゛!゛」


 ドラークは歯を食いしばり、笑いかけるメリカに睨みつける。


 「え?何を募集してないんですか?鍛錬相手ですか?」

 「なんでもねぇよ、その()()()で強者を探してるとか合わなすぎだろ」

 「えへへ」

 「何がえへへだ、訳わかんねぇヤツだなお前」

 

 ドラークがそう言うと、メリカは何か思いついたように声を発する。


 「あっ、ドラークさんドラークさんッ、貴方はどこの隊希望なんですか?ワタシは断然“シャド隊”ですッ。部隊二位の実力を誇りますし、シャド様はあのサグラ隊長を超えるとされる程の戦力なんですって!!そしてあの鋭い眼光ッ!あのピシッとしたビジュ!!あぁいう男性って最高ッ!!⭐︎」

 「うわ〜、キツイキツイ。シャド隊長は確かに強いって噂は聞くし、かっこいいのも分かるけど顔が性格悪そう」

 

 メリカはドラークの言葉に対して、キラキラした目を押し殺し、心の底からの言葉を吐き出した。


 「……は?」

 「いや怖ッ!?さっきのキラキラした顔はどこ行った?さっき俺見てたの夢ッ!?」

 「……ドラークはなに?何処に行きたいの?」


 メリカは面倒臭そうにドラークを睨みつけながら聞く。

 彼女の足は地面をトントンと叩いていた。


 (うわ、あからさまに態度悪くなってら……口調もお嬢様から変わりすぎだろ、女って怖ェ〜)


 ドラークはそう思考しながらも、自身が入りたいと思う隊の名前を告げた。


 「……もしかしたらマイナーかも知れないが“リアン隊”かな俺は」

 「え?リアン隊!?⭐︎」

 「あ、態度変わった……早すぎだろ」

 「リアン隊良いですよね!?百戦錬磨のリアン隊長は強いしかっこいいしッ!ルアト副隊長なんて天才的な指示系の鏡だしッ!レイゲン伍長は“雷神”の異名を持つスピードスターッ!ドレット先輩なんて二年目でもう上兵士級のエリート兵士ッ!!あぁもうドラークさんがそんな素敵な隊に入りたいなんて傲慢だわッ!」


 メリカは目を輝かせ、ドラークに向かっていい放つ。


 「おい、しれっと俺をディスるな」

 「人の趣味趣向に茶々を入れるドラークさんはなんて性格がよろしいのでしょうッ!そんな方はリアン隊ピッタリかもですわね!」

 「すっごい皮肉だな、言いたいこと言っちゃうの俺の悪い癖なんだ、すまん」

 

 ドラークは深く頭を下げて素直にそう言った。


 「分かれば良いんですよ⭐︎分かれば!!ね?⭐︎」


 ……だが、その時彼は嫌な予感を読み取ってしまったのだ。並ならぬ強者の匂い、そして音がドラークへと襲いかかる。


 (……なんだ?この気色の悪い予感は……近くに敵意を丸出しにしたのが三体、ん?人間じゃない?なんなんだこれ)


 「……メイカだっけ?ここら辺やばいかもしれないぞ」

 「メリカですッ!!やっぱり強い人は名前を覚える事も難しいみたいですわ───」


 メリカは笑いながらそう言った瞬間、近くに何か着地したように地面が揺れた。


 「な、なんですッ!?」

 「……はぁ、嫌な予感しか当たらないのなんか鬱だな」


 メリカとドラークの目の前に粉塵と共に現れたのは、二体のG500型の目の赤い機体と、機体が真っ赤に染まり、ツノを二つ頭に持ち、手には大きな槍を持った目の赤い機体が一体であった──。


 『ギギギギギ…ッ』

 『ガガガガガ……』

 『“オーガ・ノイド”爆進する───』


 その三体を目にしたメリカはニヤリと笑い、ドラークは失笑していた。


 「やっと、ですわ──」

 「昼寝したいのに……」


 ──こうして二人は臨戦体制への進んだのだった。


 ◆◆◆


 《──とある路地裏街──》


 一方誰にも知られていないとある路地裏にある闇の街で白髪の男が、メモリーカードのような物と話していた。


 「……“ザー”、俺って一人称どう?“僕”か“俺”で迷ってるんだけどね、どっちがいいと思う?」

 『どちらでもライオット様にお似合いです。人間がよく口にする言葉で言えば“カリスマ性”をお持ちでありますから』


 ライオットは考えた様子で言葉をまた続けた。


 「まぁ、どっちでも同じか。というか“ザー”聞いてよ」

 『はい、なんでしょう』

 「“ファルマー”と“オーガ”出しちゃったんだけど、マズイかな」

 『いえ、妥当な判断かと。ファルマーもオーガも西側護衛団を陥す為に必要なものです。しかしライオット様、政府連邦は如何いたしますか?このまま放っておくと護衛団と政府連邦と戦争を強いられま──』

 「大丈夫大丈夫、俺……僕が対抗策を講じてないわけないじゃん。さぁおいで───」


 ライオットがそう言うと、奥の方から誰かが歩いてくる。

 その人物こそ───。


 「ッチ。金の話は本当なんだろうな?」


 ───“銀狼のロウガ”である。


 「この紙切れは全然あげるよ。と言うかこの前はありがとう。“ザー”を倒してくれて」

 「ふん。んなこと言われてもな、無抵抗ならいくらでも壊せちまうよ」


 ロウガがそう言うと、ザーが話を続ける。


 『私一度壊されたのでしょうか?』

 「あぁ、ザーには記憶消去機能があったよな。事情を説明すると、お前が壊されたっていうのは、俺が工作した一種の事件みたいなものを作り出そうとしたんだ。そして連邦が暴れたロボを退治して世間からは連邦は褒められるしお金ってやつ?も俺らから貰える。そして俺はこいつら連邦、ここでいう“ロウガ隊”を好きに動かせる」

 

 ライオットはそう言って、作り込まれた笑顔でロウガに言葉を放つ。


 「人間でいう“win-win”ってヤツでしょ?」

 「チッ、早く寄越せ」


 ロウガが不満そうに言って、大量の札束をぶん取ってその場から立ち去る。

 その姿を見て、ザーは不思議そうにライオットに疑問を投げかけた。


 『ライオット様、何故人間はあの紙切れを欲するのでしょうか』

 

 その言葉に対してライオットは感情も籠らない声で呟いたのだった。


 「人間は欲にまみれた醜い動物だからだよ。そのくせ自身の高尚さを他の生物に押し付ける。人間は“生物界の頂点”だと、ね───」


 その時、太陽は沈もうとしており夕陽の光がライオットに対して差し込んでいた。


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