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第9話【岩山を下れば】

パルテノンっぽい廃墟を出た俺は山を下って(ふもと)の村を目指す。


山と言っても殆ど草木は生えていないゴツゴツとした岩ばかりだ。


なんだか富士山の上のほうを思い出す。


登ったことは無いけれど……。


兎に角、俺は真っ直ぐ斜面を下って麓の村を目指した。


岩ばかりがゴロゴロしていて足場が悪い。


足を滑らせたら大惨事の転落事故に成りそうだ。慎重に下る。


しばらく下って居ると、随分と人里に近付いた。


あと100メートルぐらいでゴールインである。


何軒かの家の煙突から煙りが上がっているのが見えたから、人が住んでいるのは間違いないだろう。


しかし、どの建物も貧乏臭い家ばかりだ。


もう、山小屋に近いレベルに窺えた。


でも、これで生き残れたと思う。


水と食料を分けて貰おう。


できたら一泊でいいから寝る場所を提供してもらいたい。


甘いかな?


甘いよね?


だって、ここはファンタジーの世界なんだろ。


まあ、どうにかなるさ。


そして、村に向かって進んでいると、大きな岩陰から村を覗き見ている怪しい二人組と遭遇する。


距離は30メートルほど先である。


俺が道無き山頂から下って来たせいで、二人組は俺から見て丸見えであった。


岩に隠れて背中を見せている二人組は、こちらに気付いていない。


まさか山頂側から人が来るとは思ってもいないのだろう。


二人組は村を監視しているようだった。


実に怪しい──。


何せこそこそしている。


俺もこそこそと近付いてみることにした。


時には大岩に隠れて、時には忍者のように、忍び歩きで接近を試みる。


残り15メートルほど近付いたところで二人組が人間じゃあないことに気付いた。


身体は人だが、頭部が動物だった。


狼かな?


いいや、犬かな?


犬っぽいな、ありゃあ。


コボルトってヤツだな。


うん、間違いない。


二匹は粗末な服だが俺より良い物を着ている。


腰には鞘に収まったショートソートらしき武器を下げていた。


俺の鞘代わりの靴に収まった骨の棍棒(ボーンクラブ)よりは、かなりましな装備に窺える。


コボルトの癖に生意気だな。


でも、俺の骨の棍棒(ボーンクラブ)はマジックアイテムだもんね!


+3だもんね!


どんな魔法が掛かってるかは分かんないけれど……。


それよりも勝てるかな?


相手はモンスターだから襲ってもいいよね?


悪だよね、きっと?


ぶっ倒してからコボルトが善人でしたとか言う落ちは無いよね。


これからあいつらは、あの村を襲うつもりだよね。


二匹だから、家畜を襲うぐらいかな?


でも、それを未然に防いだらさ、村人の第一印象は完璧に近いぐらいの好印象だよね。


間違いないよね!


勇者様とか言って、ちやほやしてくれるよね。


村人全員で歓迎の宴とかしてくれるよね!


村の女子たち全員で「勇者さまは、私の彼氏になるんだから!」とか言い合って、強引に取り合い奪い合いをしてくれ、る、よ…………ぐぁぁぁあああ!!


く、苦しい!!


ペナルティーが、糞女神の呪いが!!


「ばう?」


あ、コボルトが振り返ってこっち見てるや。


「がるるるるるッ!!」


ひぃー、気付かれた上に襲い掛かって来たぞ!


ショートソードを抜いて、振りかざしながら上がって来やがる!!


犬の顔が牙を剥いて怖いわ!


鼻の上とか、めっちゃ皺を寄せてるやん!


やっぱり悪だ!


コボルトはイービルモンスターだ!!


こうなったら俺も応戦するぞ。


どうせ逃げ場は無いんだから。


でも、敵は二匹だ。


こっちは一人。


しかも、装備の差もある。


あっちはコボルトのくせしてちゃんとした装備だ。


こっちは人間なのに貧乏装備だ。


下手すりゃあ、装備とすら呼べないかも……。


だが、こっちが上に居て、あっちは足場の悪い坂を登らなくてはならない。


高低差で圧倒的に、こっちが有利だ。


どんな戦も高いところを陣取った守り手が、攻め手よりも有利なものだ。


即ち、俺が勝てる可能性は高いんだ!


きっとそうだ!


勝てるぞ、俺!!


頑張れ、俺!!


【つづく】

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