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第8話【ロング・オブ・ロング】

魔法の松明を(マジックトーチ)を手に入れた俺はダンジョンの奥に進む。


それは、未知のスリルとロマンと水辺を求めた冒険の始まりだった。


始まりだった。


始まり──。


はじ……。


長いーーーー!


このダンジョンの直線廊下は長すぎる!


もう、一時間ぐらい歩いているけど、ただただ真っ直ぐな廊下が続いているだけじゃんか!


天井の高さも、道幅も変わらない煉瓦造りの一本道が続いてるだけじゃんか!


草原と違って歩きやすくて距離は稼げるけど、マジで長いよ!


入り口で出会ったスケルトン四体以来、モンスターどころかカマドウマの一匹も出てこないし!


つまんねーよ!!


誰だよ、こんなところにこんな真っ直ぐなダンジョン作ったのはよ!!


てか、ダンジョンと呼べるか、こんな物!


これじゃあ、避難路か何かじゃねえか!!


────あ。


ああ~~~……。


もしかして、俺、正解してる……、かな?


このダンジョンは、ダンジョンじゃあなくて、避難路か何かかな?


だとすると、この先には、何かの施設が有るってことになる?


避難路を作らなくては成らないほどの施設が。


それってファンタジーの世界だと、王城か神殿とかかな?


そう考えたら、何だか希望とやる気が出て来たわ。


よし、頑張って進もうか。


そんでもって更に一時間ぐらい歩いたら、上りの階段に行き当たる。


やっとだ!


やっと廊下以外の建造物が出てきたぞ!


嬉しい!


しかも、階段だ!


階段を見て、こんなに喜んだのは生涯で初めてだろう。


何せ二時間ぐらいも真っ直ぐなトンネルを歩いていたんだもん。


よし、上るぞ!!


そして、俺の感激は直ぐに絶望に変わった……。


上りの階段も長い……。


足の骨が砕けそうなぐらいに、長い……。


上が、先が、奥が、まったく見えてこない。


てか、この通路と階段を作った人がスゲーよ。


だって、ファンタジーだと建築文化とかは低いでしょう。


機械も無ければ、道具も粗末だろうし。


なのに、こんな長い通路と階段を作っちゃうんだもの。


何年ぐらいかかったんだろう?


根性あるよな。


一生涯掛けて作ったレベルだぞ、これは。


それとも魔法でチョチョイのチョイで作っちゃったのかな?


ファンタジーの世界だから、後者のほうが可能性が高いのかな。


まあ、そんな詰まらないことを考えながら無限に続くと思われていた階段を、俺は上り続けた。


そんなことでも考えていなければ心が折れそうだったからだ。


階段を上り続けるのは辛い……。


上り始めて、何もないまま三時間は過ぎただろうか……。


もう、足が折れるどころか、砕けそうだ。


心も砕けそうだ。


体力も限界が近い。


でも──。


通路で二時間ぐらい、階段で三時間ぐらい過ぎたところで階段の先に光が見えた。


光である!


まさに希望の光だった!!


俺は生涯で光を見て、こんなに嬉しかったことは無いだろう!


俺は心が踊って上る歩みが早くなる。


光を目指してひたすら上る。


そして、光が徐々に大きくなり、ついには出口の四角い形が分かるほどに成って来た。


「やった~、出口だぁ!」


喜びのあまり感激な思いを声に出してしまう。


そして、俺は光の枠から外に出た。


そこは、遺跡のように荒れ果てた場所だった。


周りの景色から標高の高い場所だと分かる。


廃墟の印象は、ギリシャのパルテノン神殿に似ていた。


でも、柱だけ残して天井は崩れ落ちている。


偶然なのか、俺が上って来た階段は、天井の岩が丁度良く避けられている感じだった。


もしかしたら誰かが後から、どかしたのかも知れない。


もしも、崩れた天井に出入口が塞がれていたら、俺の五時間以上の苦労は無駄になっていたんだろうな。


それを考えると怖い。


すげー、怖い……。


引き返したらトータル十時間じゃんか……。


とりあえず外に出れたのだ。ここは喜ぼう。


俺は崩れた岩の上に乗って辺りを見回す。


山の上に建築されていた建物だったようだ。


そこそこ広い規模の廃墟だった。


周りは険しい山脈に囲まれている。


海に向かうはずが山中に出てしまったらしい。


そして下を見下ろしたら、500メートルほど先に村が見えた。


人が居るのか!?


人里なのか!?


とりあえず、向かうしかない。


きっと、希望と、水と、食事と、暖かい布団と、可愛い娘かセクシーなお姉さんが居るはずだ。


あ、あぁ……。


また胸が苦しい……。


この程度の妄想も駄目らしい……。



【つづく】

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