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第591話【ガイアとテイアー】

少女Aに召喚された魔界の悪魔たち五体。


一体のグレーターデーモンは建物の三階に飛ばされたドラゴン娘を追いかけ、もう一体はエルフ娘に追われて町の奥に姿を消した。


今頃は彼女たちと激戦を繰り広げているのやも知れない。


観戦していた少女Aの前で奮闘していたグレーターデーモンの一体は魔人に敗北して鋼鉄化して固まっている。


残るグレーターデーモンの数は二体。


内一体の悪魔が前に出た。


「召喚主の前で恥ずかしいあまりだな。不甲斐ない……」


言いながらグレーターデーモンはメタルキャリアに鋼鉄感染病で敗北した仲間の横に立つ。


そして、腕を横に振り上げた。


「それっ!!」


ガンっと音が響く。


五本指を開いた横振りの張り手で鋼鉄化したグレーターデーモンの頭部を張り飛ばした。


激音の後に鋼鉄化したグレーターデーモンが風車のように回転しながら真横に飛んで行く。


そして、更なる衝撃を響かせ建物の壁を突き破り姿を隠した。


鋼鉄化した仲間を平手で張り飛ばすグレーターデーモンの腕力は半端ではない。


流石は魔界のデーモンだ。


「恥さらしは目障りだ!」


青筋を額に浮かべながらグレーターデーモンが述べるとメタルキャリアが指差しながら言った。


「あ~あ、触ったね」


「はっ!?」


気が付けばグレーターデーモンの掌が鋼鉄に色を変え始めていた。


早くも固まって指が一本も動かない。


「なんだ、これは!?」


「だから言ったじゃんか。鋼鉄伝染病だってさ。触れば感染するよ~ん。もうアウトだね~」


「ぬぉぉおおおお!!!」


「もう手遅れだわん。固まるぞ~」


「…………」


もう既にグレーターデーモンは唸り声すら上げられない状態に変化していた。


全身が鋼鉄化している。


それを見ていたガイアとテイアーがメタルキャリアにクレームを飛ばした。


「メタルキャリアだけ、ズルい~」


『一人で二体も悪魔を倒しちゃったよ~』


「もう残り一体じゃんか~」


幼児の二人は頬を可愛らしく膨らませながら怒っていた。


メタルキャリアは頭を擦りながら二人の元に戻って行く。


「ごめんよ、ガイアちゃん、テイアーちゃん。悪気は無かったんだよ~……。言い忘れてたら、あいつらが勝手にさ~……」


「子供に見苦しい言い訳するな~」


『そうだそうだ~。大人ってズルい~』


「ほらほら、まだオモチャは一つ残ってるじゃあないか~。それで我慢してくれよ~」


『一つじゃあ足りないよ~』


「私たちは二人居るんだよ」


『これじゃあ、どっちがアイツをやっつけるかで喧嘩になっちゃうよ~』


顎に手を当てながらメタルキャリアが少し考え込む。


そして、ボソリと言った。


「じゃあ、どちらがアイツを倒すか勝負で決めたらいいんじゃあないのかな?」


「『勝負~?」』


二人の幼女が手を繋いだまま揃って首を傾げた。


可愛い。


ぐんっとメタルキャリアが拳を下から突き上げる。


「そうそう、子供らしく拳で決着を着ければいいじゃんか~」


この場に居る全員がメタルキャリアの言葉に同一の意見を思いえがいていた。


全然、子供らしくないっと……。


するとガイアが冷めた口調で言った。


「じゃあテイアーちゃん、拳で決着だ~」


テイアーは元気良く答える。


『い~よ~、私も拳で決着つけたいな~』


二人の幼女は笑顔で向かい合う。


グレーターデーモンがボソリと「マジか……」っと呟いた。


二人の幼女が言葉を揃える。


「『行くよ~」』


ガイアもテイアーも表情は微笑んでいた。


楽しそうに笑顔である。


そして、二人が駆けっこのスタート直前のように腰を落とした。


この段階では子供らしくて、まだ可愛らしい。


メタルキャリアが片腕を高く上げる。


「よ~~~い、どんっ!」


刹那、メタルキャリアの掛け声に合わせて二人の幼児がスタートを切った。


向かい会っていた二人の幼女が正面からぶつかり合う。


ガンっと硬い音が響いた。


拳と拳の激突音である。


途端、周囲に衝撃の波が突風のように広がった。


互いの突進スピードは見ている者の目には見て取れなかった。


そして、足を止めての殴り合い。


速い拳の連打に残像が見えていた。


連続で光が煌めき、衝撃音が連呼する。


二人のぶつかり合いは、光のような速度で繰り広げられていた。


そして、竜巻が二人を囲む。


その突風を身体全身で浴びたグレーターデーモンが後ろ脚を踏んで堪える。


ショックウェーブに押された非力な魔法使いたちの数人が吹き飛び背後の壁に背中をぶつけていた。


少女Aも口走る。


「凄い衝撃。本当に子供か!?」


そして、二人の殴り合いが続く。


ガイアとテイアーがグーを固めて両者を突き合う。


「あたたたたたたたたたっ!!」


『わぁちゃちゃちゃちゃぢゃ!!』


足を止めて殴り合う幼女二人。


互いに繰り出す拳と拳が激突して花火のような衝撃を連続で散らしている。


更に二人は殴り合うだけでは物足りないのか蹴り技まで加え始めた。


殴って蹴って、また殴る。


蹴りと蹴りが交差して、脛と脛がクロスした。


それでも互いの攻撃はクリーンヒットしなかった。


決定打は無い。


そして、二人の攻防が続くなか、連打の余り二人の身体が宙に浮き上がる。


やがて殴り合いながら上昇して行った。


殴り合う二人は10メートルを越えて20メートルも浮き上がる。


そんな幼少二人を外野の大人たちが唖然としながら見上げていた。


呆れたアスランが呟く。


『なんなんだ、あのガキどもは……」


ドクトル・スカルが答えた。


「知らないわよ……。そもそもあんたが連れて来た子供たちでしょうが……」


皆が唖然と見上げる中で、ついに二人の攻撃が同時にヒットした。


ガイアの拳がテイアーの頬を殴り、テイアーの蹴りがガイアの腹を打った。


その一打で二人が左右に吹っ飛んだ。


ガイアが地面に落ちて、テイアーが空に跳ねた。


ガイアは地面に着地すると、あどけない眼差して空を見上げる。


すると上空に止まるテイアーが背筋を反らして大きく息を吸い込んでいた。


小さな胸を膨らまして空気を吸い込んでいるようだ。


その身体から破壊的なオーラが漏れだし周囲の景色を歪めていた。


アスランが冷や汗を流しながら述べる。


「あれ、不味くないか……」


「不味そうね!」


ドクトル・スカルは言うなり踵を返して走り出した。


魔王城の方向に走り出す。


ゾディアックがアスランに言う。


「アスラン君、僕らも逃げよう。凄い魔力だぞ。このままではきっと巻き込まれるぞ!!」


「だなっ!」


「全員退避だ!!」


ゾディアックの指示に従い全員が逃げ出した。


すると上空のテイアーが地上のガイアに向かって大きく口を開く。


そして、口から純白の炎を発射した。


白い炎のドラゴンブレスだ。


「よっと」


その異様な炎に対してガイアが両手を突き出し受け止める。


否。


両手で受け止めているのではない。


両手で白い炎を吸い込んでいるようだ。


ガイアがホワイトドラゴンブレスを微塵も残さず吸い込むと、空から地上にテイアーも降りて来る。


そして、再び幼女同士が向かい合う。


『流石はガイアちゃんね。なかなかやるわ』


「テイアーちゃんだってやるわね。流石はエンシェントドラゴンの一匹だわ」


『じゃあ、大地母神に敬意を表して、もう一ランク上の攻撃を見せて上げるわ』


「それじゃあ私も、攻撃魔法を見せて上げる。母神の力は封印されているけど、下界に合わせたレベルでなら魔法も撃てるわ」


二人がタイミングを揃えた。


「『行くわよ」』


二人の掛け声に合わせて空気が激しく揺れた。


まるで神秘と奇跡が競り合っているかのように揺れている。


「ちょっと、これは私でも不味そうね……」


賞状Aも踵を返して走り出していた。


その後ろにグレーターデーモンも続く。


マッチョエルフたちも逃げていた。


ビキニノームたちもにげていた。


第九までもが逃げるように移動を開始する。


皆が退避していた。


人気が絶えた大通りの中央で二人の幼女がオーラを揺らして向かい合う。


するとテイアーのオーラが背後で白龍の形を作っていた。


その白龍が長い首を上げて大きく口を開いている。


方やガイアの背後には奇怪な髑髏で飾られた巨大な門が現れた。


深淵魔法、地獄門である。


『行くわよ、ガイアちゃん』


テイアーが言うと白龍の喉から白炎が揺らいで見えた。


「私も手加減しないわよ」


答えるガイアの背後で巨大な門が音を鳴らして開門する。


巨大門の中は漆黒。


その漆黒の奥で複数の瞳がギラギラと輝いていた。


大小様々な奇怪な魔眼が血走りながら蠢いている。


だが、その複数の瞳は一体の身体に収まる複眼。


それは漆黒の龍の巨体だった。


『行くわよ、ダイナミックホワイトドラゴンブレスEX!』


「応戦しなさい、冥界の黒龍ナース。ダイナミックダークドラゴンブレスDX!」


白と黒の龍が同時にドラゴンブレスを吐いた。


白い火炎と黒い火炎がぶつかり合うことなくすれ違う。


交差したドラゴンブレスが狙いを外して互いの横を過ぎる。


二つの火炎は家を焼き、地面を焦がして町を一文字に焼き払った。


大通りを挟んで左右に放たれたドラゴンブレスで大きな十文字を町に刻む。


『あれ、狙いを外しちゃった……』


『私も……」


『さっき頭を叩かれたから、ちょっと目眩が……』


「私もポンポンを蹴られてお腹が痛かったの……」


二人の幼女から激しいオーラが薄れて行くと、白龍が消えて巨大門も閉門する。


二匹のドラゴンが消えた。


「やっぱり友達同士で喧嘩は良くないよね」


『そうよね、喧嘩なんてしないで仲良く遊んだほうが楽しいよね』


「それじゃあテイアーちゃん、そろそろおやつでも食べない?」


『あら、もうおやつの時間なのね。それじゃあ、おやつでも食べましょうよ』


「いいね~」


そう言うと二人の幼女は仲良く手を繋いで歩き出す。


その足取りはルンルン気分のスキップだった。


二人はソドムタウンの診療所に帰るようだ。


残されたアスランは破壊された町並みを見ながら言った。


「ま、町が真っ二つじゃあねえか……」


ドクトル・スカルが言う。


「しょうがないから、ここはこのまま舗装して交差点にしましょう……」


「丁度良い十字路だな……」


魔王城前に刻まれた十字路。


後々の話である。


右の通りは母神通りと呼ばれて、㊧の通りは白龍通りと呼ばれるようになる。



【つづく】

なかなか目が治りません。

困ったもんだ。

仕事も遊びも、ままなりませんがな。

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