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第552話【親友】

俺とゴリ、それにジオンググのオッサンの三人は、デギンの屋敷に招かれていた。


俺たち三人はロビーに飾られている家族の肖像画を見上げている。


ギデンが肖像画を見上げたがら言う。


「十五年ぐらい前の肖像画だ。今の妻のミネバも理解してくれているから飾っているのだ」


大きな絵には若きころのデギンと椅子に座った女性、それに目付きの悪い少年が画かれていた。


ギデンは既に剥げているが、腹があまり出ていない。


女性は病気かと思えるほどに痩せている。


男の子はオールバックで眉毛が薄い。


少年とは思えない風貌だ。


「なあ、ゴリ。お前はギレンって知ってるか?」


「いや、知らなかった。ドズルルの町で有名な呪術師なのは知っていたが、この町の出身だってことは知らなかった。しかも領主の息子だなんて……」


ジオンググが顎髭を撫でながら考え込むように言った。


「それにしても、面影が違うな……」


「何がだよ?」


「私が覚えていいるギレンは、中肉中背で剥げ頭のオッサンだったぞ。こんな鋭い眼光でも無かったし……」


中肉中背で剥げ頭……。


それって……。


ゴリが言う。


「それってペンスさんじゃあないのか?」


だよな。


普通はそう思うよな。


ゴリが説明する。


「俺に呪いの札を譲ったのはドズルルから来た商人のペンスさんって人だ。その人は中肉中背で剥げていた」


ペンスは偽名か?


ギレンは歳を取って少し太って親父のように剥げて来たのかな?


歳も四十が近付けば、目元だって柔らかくもなるのか?


「やはりペンスさんとギレンは同一人物なのか?」


だが、俺たちの話をきいていたギデンが否定する。


「いや、ギレンは前妻のマクベに似て痩せた子だった。一度も太ったことが無いんだ。それに去年の収穫祭でもチラリと見かけたのだが、昔と変わらずオールバックで痩せていた。目付きだって悪いままだったぞ」


「じゃあペンスさんとギレンは別人なのか?」


ゴリが言う。


「とりあえずだ、家に帰ってペンスさんを捕まえよう。本人に訊くのが一番早いだろうさ」


「うん、そうだな」


俺とゴリは踵を返して屋敷を出て行った。


俺はアキレスを呼び出すと、ゴリを後ろに乗せてゴリの実家を目指した。


ゴリが俺の腰に手を回しながら述べる。


「ササビー兄さんにペンスさんの足止めを頼んであるから、まだ居るはずなんだが……」


「抵抗を見せた時のために、ガイアとメタルキャリアを付けてあるから大丈夫だろうさ」


「だといいんだがな……」


俺も嫌な予感がするんだよね。


それ以上に嫌なのは、今現在ゴリに抱き付かれながら馬を走らせていることが嫌であった。


背中が生暖かい……。


ゴリラマッチョにハグされて嬉しいわけがない。


逆にキモイだけだ。


それよりも──。


「なあ、ゴリ……」


俺は真剣な口調で背後のゴリに語りかけた。


「なんだ?」


ゴリも俺の声色から真剣な空気を感じ取って真面目な態度で対応する。


「すまないんだが……」


「んん?」


俺は凄く言いにくいことを言う。


「すまんが、ゴメスを返してくれないか……」


「なんだよ、鬼の電撃攻撃でチリチリになったからってヅラを返せってか?」


「う、うん……。ほら、髪の毛がほとんど焼けて、また坊主状態に戻っちゃったからさ……」


「仕方無いな……」


ゴリは後ろから俺の頭にゴメスを被せた。


脱ぎ立てのヅラが、ちょっと生暖かい……。


「これは貸しだからな」


言いながらゴリが俺に人差し指を突き出した。


俺は指先と指先を重ね合う。


ピキィーーンっと指先が輝いた。


これで使い魔の受け渡しが完了する。


こうしてゴメスが俺の使い魔として帰って来たことになる。


「すまんな。髪の毛が生えたらゴメスを返すからさ……」


「ああ、気にすんな。それにしても、ヅラとヅラで繋がり合う友情もあるんだな」


嫌な友情だな……。


ってか、これは友情なのか?


そんな感じで俺とゴリがアキレスで実家を目指していると、やがて目的地に到着する。


俺とゴリが実家の前に進むと、庭先に数名の知った顔たちが立ち尽くしていた。


ガイアたちだ。


「アスラン、来たか~」


ガイアが手を振っている。


そこにはメタルキャリア、ササビーさん、ゴリの親父さん、それにパンダゴーレムが立っていた。


俺はアキレスから降りると皆に声を掛けた。


「おう、お待たせ。ペンスさんは居るかい?」


だが、答えたのはササビーさんだった。


「いや、もう姿は無かったよ。テントを畳んで出て行ったようだ」


ゴリが悔しそうに言う。


「逃げたか……」


う~~む。


やっぱり逃げたのかな。


すると、ギレンとペンスさんは同一人物なのかな?


俺はアキレスに再び跨がると皆に言う。


「よし、じゃあ俺はペンスさんを追うぜ。馬で追えば直ぐに追い付くだろうさ」


するとガイアが止める。


「追い付かないと思うよ」


「何でだ、ガイア?」


ガイアは足元の土を擦りながら述べた。


「魔法の残像が残っているの。これは転送魔法ね。たぶん瞬間移動で帰ったと思われるわ。だから追い付かないわよ」


「転送魔法かよ……」


それじゃあ幾らアキレスの足が速くても追い付けないか。


「でも、目的地は分かってるんだ。今から追うよ」


すると今度はゴリの父ちゃんが俺を止める。


「今から出発しても直ぐに夜になります。今晩は家で休んで、明日の朝に出発するのが懸命だと思いますよ」


目がキラキラと乙女チックなのに懸命なことを言うな、ゴリの父ちゃんも。


「そうだな、仕方がないか。もう一晩お世話になるか……」


「我が家は構いませんよ。何せ息子の親友なのですから」


親友?


あれ、俺ってゴリの親友なのかな。


ゴリが家のほうに歩きながら言う。


「ガイアちゃんたちも今日は泊まって行くだろう。かーちゃんに晩飯の準備を頼んで来るよ」


そう言うとゴリは家の中に入って行った。


ガイアが言う。


「アスランとゴリは、親友だったのか~」


「らしいな──」


俺はこうしてもう一晩ゴリの実家でお世話になった。



【つづく】

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