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第525話【新体制】

俺が魔王城街からスカル姉さんの診療所に移動すると、一階の広間でゴリが朝飯を調理していた。


釜戸でパンを焼きながらスープを煮込んでいるようだ。


「よう、ゴリ。おはようさん~」


「アスラン、オッス。退院そうそう朝帰りか~」


「いや、違うよ。昨日はスバルちゃんのところで晩飯を食べて、ハンスさんの宿屋で泊まったんだよ」


「あれ、スバルちゃんのところに泊まらなかったのか?」


「流石にそれはアカンだろ」


「だってプロポーズしたってドクトルから聞いたぞ」


「プロポーズはしたけど、それとこれは別だよ」


「なんだ、以外に真面目だな。変態なお前だから式の前から花嫁を汚しほうだい汚すのかと思ってたのに。ネッチョネチョに、ベットベトにさ」


「テメー、俺を野獣か変態だと思ってやがるのか!」


「野獣なんて流石に思ってないぞ。でも、変態は当たってるだろ」


「知るか、もう朝から嫌な気分になったから、俺は出掛けてくるぞ!」


「どこ行くんだ?」


「冒険者ギルドだよ!」


「そうか。でも今は冒険者ギルドもバタバタしているから、あまり面倒掛けるなよ」


「バタバタしてるって、なんだよ?」


「引き継ぎだよ」


「引き継ぎ?」


「あ~、そうか~。お前、一ヶ月も入院していたから冒険者ギルドの現状を知らないんだ」


「何かあったのか?」


「ギルマスが席を譲って、酒場のマスターも変わったからな」


「ああ、そうか。ギルガメッシュはアマデウスにギルマスの席を譲るんだっけ」


「あれ、お前、知らないのか」


「何が?」


「アマデウスの野郎は失踪したんだぞ」


「失踪だって、いつ?」


「確か、お前が刺されて数日後ぐらいだったかな。一人で姿を眩ましたんだよ」


「マジか……」


「だから冒険者ギルドはサンジェルマンさんが新しいギルマスに就任して、酒場はハンスさんの弟のランスさんがマスターに変わってるぞ」


「そうだったのか……」


「もう酒場はランスさんが引き継いでいるし、ギルマス業は引き継ぎ中だ」


「なるほど、そうだったのか。じゃあ、まだギルガメッシュは冒険者ギルドに居るのか?」


「たぶんまだ居るんじゃあねえのか」


「じゃあ、まあ、俺が用事があるのはギルガメッシュだから、ちょっくら行ってくるわ」


「ああ、いってらっしゃい。そうだ、昼飯はこっちで食うか?」


「いや、分からん。だから先に食べてろよ」


「分かった」


俺はゴリと別れて診療所を出た。


冒険者ギルドに向かう。


そして俺は冒険者ギルドに到着すると一階の酒場に入って行った。


朝から数組の冒険者たちが酒を煽っている。


だが、半数の冒険者がバツの悪そうな表情で俺をチラ見していた。


ああ、こいつらはアマデウス派の連中だった奴らだな。


親分が失踪して肩身が狭いのかな。


それに、カウンターの中に居る若いマスターに目が止まった。


ハンスさんの弟とかゴリが言ってたな。


確かに似ているぞ。


弟だけあってハンスさんより若いな。


雰囲気的にはハンスさんを若くした感じに見える。


だから人は良さそうだ。


どれ、少し挨拶ぐらいしておこうかな。


俺はスタスタとカウンター前に向かった。


するとランスさんのほうから話し掛けてきた。


「こんにちは、キミがアスラン君ですね。初めまして、私は前のマスターのハンスの弟のランスと申します。今後ともよろしくお願いします」


「あれ、よく俺だって分かったね?」


「兄から聞いてましたから」


「なんて?」


「変態っぽいって」


「こ~の~や~ろ~……。兄弟揃って裸にヒン剥いてからアナルに茄子をズポズポと刺しまくってやるぞ!」


「ほら、やっぱり変態っぽい」


ランスさんはニコリと微笑んだ。


なかなか度胸の座った弟じゃあねえか、気に入ったぜ。


「ところでギルガメッシュは居るかい?」


ランスさんは指で天井を刺しながら言う。


「二階でサンジェルマンさんと一緒に朝食を取ってるよ」


「サンキュー。ところでアポ無しで会えるかな?」


「それは二階で訊いてくれたまえ」


「へいへい」


俺は詰まらなそうに返答すると二階を目指した。


そして受付の姉ちゃんに訊くと奥に通される。


「ちわぁ~~す、アスランでぇ~す」


「「よう、アスラン」」


ギルガメッシュとサンジェルマンが声を揃えて俺を向かい入れてくれた。


だが俺は、二人の朝食風景を見て度肝を抜かれる。


「こ、これは……」


それは長テーブルに寝そべるパンダゴーレムの上に盛り付けられた刺身をマッチョな中年男性二人が箸で突っつきあっている光景だった。


「なんでパンダがぁ……」


ギルガメッシュが言う。


「なんだ、アスラン。知らんのか、パンダの女体盛りを?」


このパンダは雌なのか!?


サンジェルマンが言う。


「知らんのか、アスラン君は。今これはゴモラタウンで流行りの朝食スタイルなんだよ」


流行ってるのか、これが!?


俺は愕然としてしまっていた。


俺が一ヶ月も入院している間に時代は進んでいるのだと!!


時の流れは激しいな!!


流行に乗り遅れてしまっているぞ!!


これでは流行りに乗れないダサイ野郎だと思われてしまう。



【つづく】

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