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第491話【早朝の睡魔】

俺が逃げ出すようにゴモラタウンをアキレスで走り出てから数時間が過ぎた。


山のほうを見れば山頂から朝日が覗き始めた時間帯である。


「もう朝かよ……」


ああ、やっぱり眠い……。


だって昨日の朝早くから閉鎖ダンジョンに挑んで、クローンたちとなんやかんやブチかましたあとに、閉鎖ダンジョンを逆走して深夜にゴモラタウンの城から逃げ出したのだもの。


正直、一睡もしていないのだ。


疲れたし、眠いし、兎に角疲れた……。


アキレスの手綱を握っているのがやっとである。


パカラパカラとリズミカルにお尻が跳ねているが、それでも目蓋が落ちてきそうだ。


このままでは居眠り運転で事故ってしまいそうだぞ……。


どうする……。


寝るか……。


ここは一旦眠るか……。


でも、ゴモラタウンからの追手に追い付かれたらまいっちんぐだしな……。


だが、眠い……。


うう……。


っ…………。


…………。


………。


おっと!!


いや、寝てないよ!!


ぜんぜん起きてたからさ!!


マジで寝てなんていないんだからね!!


くー、もー、マジで寝落ちしそうだぞ。


上の目蓋が俺の意識とは別に自然と下に落ちてきやがる。


「マジでダメだ……」


仕方無い、馬を止めて一眠りするか……。


でも、追手が来るかもしれないしな……。


人が来ないような物陰ならば、追手も気付かずに通りすぎるかも知れないぞ。


んん~、どこか良い場所は無いかな~?


辺りをキョロキョロ見回すと、道を外れた草原の先に小さな林がある。


あそこに隠れながら一休みするか。


あの林ならば、わざわざ追手も道を外れてまで探しにこないだろう。


まあ、多分だけれど追手にも見つからないだろうさ。


俺は林に入るとアキレスから降りた。アキレスをトロフィーに戻す。


「この辺でいいかな」


俺は適当な場所に座ると背を木に預けた。


街道からは距離があって見えないだろうさ。


ここで寝るか……。


んん~……。


日陰のせいか少し寒いな。


「ヒルダ、毛布を出して貰えないか。少し仮眠を取るからさ」


『アスラン様、毛布は一枚もございませんが』


「えっ、なんで?」


『クローンの遺体にすべて掛けてきましたから……』


「ああ、そうだった……」


俺としたことが、忘れていたぜ。


ならば焚き火でも炊くかな。


いやいや、アカンだろ。


火を炊いたら煙で居場所がバレてしまうがな。


「しゃあない、少し寒いが我慢してねるか。どうせ仮眠程度だ……」


すると異次元宝物庫からヒルダが出て来た。


木を背にして座る俺の前に正座をすると三つ指を立てて頭を下げる。


なんだかいつも以上に畏まってやがるな?


「なんだよ、ヒルダ?」


ヒルダは少し恥ずかしげに言った。


『寒いと仰るならば、わたくしめが添い寝いたしまして、この熟れた身体で温めてさしあげましょうか……?』


「はっ、何を言ってるんだ、ヒルダ。お前はアンデッドマミーだから温かくないじゃんか。それに細身で熟れてないし、ペチャパイだし。むしろ乾燥肌で冷ややかで寒くないか?」


『ひ、酷い……』


何を戯れ言をほざいてやがるんだ、ヒルダは?


熱でもあるんじゃね?


あっ、熱が有れば添い寝すると温かいかな?


「まあ、いいや。俺は眠るから、見張りを頼んだぞ、ヒルダ」


『はい、畏まりました……』


俺がそっぽを向いて眠り出すと異次元宝物庫からプロ子が出て来た。


何やら姉妹で話し出す。


『ねえ~、だからヒルダちゃん、言ったでしょう。アスラン様はヒルダちゃんをただの便利なメイドとしか思っていないんだってば』


『うん………』


『なんでヒルダちゃんはこんなクズ御主人様を好きなのかしら?』


うぬ、聞こえているぞ、プロ子よ。


誰がクズ御主人様だ?


このポンコツ娘が、生意気言ってるんじゃあねえよ。


今度亀甲縛りでしばいてやるぞ。


『ねえ、ヒルダちゃん。そろそろアスラン様との冒険も終わりにしない?』


えっ、どういうことだ?


『そろそろ魔王城の復興工事も始まるし、私たちも魔王城に移住しましょうよ』


『ですが……』


『私たちメイド姉妹の夢は大きなお城で働くのが夢だったじゃない』


『ですが、今はアスラン様のメイドでございます。わたくしの役目はアスラン様をささえること……』


『じゃあ、私たち姉妹の夢はどうするの?』


『それは、お姉さまたち姉妹にお任せいたしますわ……』


『なに、ヒルダちゃんは魔王城で働きたくないの!?』


『はい、わたくしは、アスラン様のお側でお使いもうしあげます……』


『ダメよダメ、ヒルダちゃんも私たち姉妹と一緒に魔王城で働くのよ。私たち姉妹が今まで別々なところで働いたことなんて無かったじゃない!?』


『魔王城は、御姉様や妹たちに任せますわ。私は主であるアスラン様について行きます』


『ダメだったら。おねえちゃん、そんな我が儘は許しませんよ!!』


んん~……。


なんか姉妹喧嘩を始めやがったぞ。


俺は眠いのに五月蝿いな……。


『だいたいなんでヒルダちゃんは、こんなにクズでバカでアホなアスラン様が好きなんですか。お姉ちゃんは信じられませんよ!!』


なんだよ、酷い言いようだな、プロ子のくせに……。


『確かにアスラン様はバカでアホでスケベで変態な御方ですが、それでもわたくしたちの主でございます。一生の忠義を誓った相手でございます……』


『それと恋愛感情は別でしょ!!』


確かに忠義と恋愛は別物だな。


『だいたいアスラン様のどの辺が好みなの、ヒルダちゃんは?』


『お強いところ……』


『他には?』


『それだけです』


『それだけかよ!!』


うん、俺もプロ子と同じ意見だ。


強いのは確かだが、それだけでマミーに惚れ込まれたらたまらないぞ……。


『ならばプロ子御姉様は、わたくしとアスラン様が結ばれることに反対なのですね』


『当然よ!!』


おいおい、俺とヒルダが結ばれることが確定した設定になってないか?


俺の意思は無視ですか?


アンデッドでマミーなのは仕方がないが、ペチャパイなのは問題有りだぞ。


『誰が可愛い妹の一人をスケベな変態童貞チェリーボーイに差し出さなきゃならないのよ!!』


プロ子の野郎、言いたい放題だな!!


まあ、ほぼほぼ正解だけれどさ……。


『分かりました、御姉様……』


『何が分かったの、ヒルダちゃん?』


『プロ子御姉様が意地でも反対なされるならば、我が家の伝統に基づいて決着をつけましょう』


伝統ってなんだよ?


『分かりました、ヒルダちゃん。お姉ちゃんと決闘したいのね!!』


『はい、御姉様!』


けっ、けっ、けっ、決闘だと!?


面白そうじゃあねえか!!


これは寝てられないぞ!!


俺はムクリと立ち上がる。


そして姉妹に凛々しく述べた。


「二人の思いは良くわかった。ならば俺が審判をしてやろうぞ!!」


『アスラン様!!』


『アスラン様………』


ヒルダは独眼の瞳を輝かせながら歓喜していたが、プロ子のほうは両肩から脱力して呆れていた。


どちらの反応が正しいリアクションなのか俺には判断できなかったが、そんな俺にも判断できることはある。


どちらが強いかだ!


その判断はつけられるぜ!!



【つづく】



【次回予告】


淡々と語る妹のヒルダ。


『プロ子御姉様、手加減しませんわよ』


勇ましく答える姉のプロ子。


『上等よ、妹のくせに!!』


ついに始まる姉妹の戦い。


それはマミーな乙女とアンデッドな乙女が一人の人間男性を巡っての骨肉の争いだった。


疾風のアンデッド乙女の振るうレイピアが勝るか、怪力メイド乙女の繰り出すウォーハンマーが上回るか!?


力と技と愛情がぶつかり合う怒涛の60分一本勝負のゴングが四角いジャングルに鳴り響く。


次回【アンデッド姉妹の戦い】御期待有れ!!



キミは刻の涙を見る!


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― 新着の感想 ―
[一言] ヒルダ応援してるぜ!! チチなんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです!
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