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第490話【閉鎖ダンジョンからの二度目の帰還】

俺は走っていた。


テイアーの研究室で青いポーションをゲットしたあとに、閉鎖ダンジョンを逆走している途中なのだ。


なんやかんやで一週間以上も掛かってしまったからな。


たぶん九日ぐらい過ぎたのかな。


おそらく今日が十日目だろう。


今日の深夜十二時を過ぎたら俺はシンデレラから普通の女の子に戻ってしまう。


じゃなくて~。


今日が過ぎたら報酬が無くなってしまうのだ。


兎に角今日中にゴモラタウンの城まで帰らなくてはならない。


だから俺は走っているのだ。


まずはクローンたちが居たエリアを走っている。


あっ、部屋の中央にアスエボの遺体が転がってるよ……。


も~、仕方ないな……。


俺は慈悲心からアスエボの遺体を部屋の隅に移動させると全身が隠れるようにベッドのシーツを掛けてやった。


本来なら火葬か埋葬ぐらいしてやりたかったが、今は時間が無いのだ。


これで勘弁してもらうしかなかろう。


そして、俺は再び走り出した。


しかし廊下の途中でアスノベの遺体と出会す。


いやん……。


兎に角俺は遺体にベッドのシーツを頭から掛けてやると走り出した。


せめてもの供養である。


そして、今度は道中の部屋で四体のクローンたちの遺体と鉢合わせしてしまう。


「あー、もー、仕方ないな~~!!!」


俺は四体の遺体を部屋の隅に並べるとベッドのシーツを順々に掛けてやった。


『アスラン様、これで予備のシーツが最後でございます』


「分かったよ、ヒルダ。これが最後だからさ……」


『いいえ、私たちが倒したクローンがまだ二体ほど残っています』


「確か、毛布とかあったよな……」


『はい』


「それで済ませよう……」


あと、クローンベイビーたちも……。


兎に角、自分で殺した自分の分身だ。


粗末にも出来ないよね。


まあ、なんやかんやあったがクローンたちの仮埋葬を済ませて俺は次のエリアに戻って行った。


次は死海エリアだ。


俺は異次元宝物庫からトライデント+2を出すと紐で括って背中に背負うと指に水中呼吸の腕輪+1を嵌めた。


これで水中用アスランの準備完了である。


【トライデント+2。水中に居る際の運動神経が向上。泳ぐ速度が向上】


【水中呼吸の腕輪+1。水中で呼吸が出来るようになる】


こうして俺は死海に飛び込んだ。


いや、死海の海面は階段の上にあるから飛び上がったが正しい表現だろうか?


まあ、そんなのどうでもいいかな。


兎に角先を目指してひたすらに泳いだ。


俺がガルガンチュワの巣を泳いで横切ろうとすると、マーマンとマーメイドたちの集団に出会した。


彼らはガルガンチュワが残した財宝を回収しているようだった。


そこに乙姫も居やがった。


御輿の上に築かれた珊瑚の玉座に長くて美しい生足を組んでノウノウと座ってやがる。


相変わらずセクシーなマーメイドクイーンだよな。


恨みもあるからアイツを盛り皿にしてやりたいぜ。


「これはこれは、アスランではないか」


「すまん、忙しいから、また今度な~」


「ええっ?」


俺は乙姫を無視して先を目指す。


せっせと平泳ぎで泳いだ。


そして、ガルガンチュワの巣穴を出たところでノーチラス号が見えてきた。


ノーチラス号は岸壁から生えた太いワカメの蔦に絡め取られている。


あれだと動けないのかな?


早くも戦争に負けたのかな、あのヘッポコ軍人は?


俺はノーチラス号のハッチを開けると船内に乗り込む。


相変わらず船内は静かで湿っぽい。


俺がコックピットに入るとアンデッドクルーたちが座席にロープで縛られていた。


「よう、ネモ船長。どうしたんだ?」


操縦席に縛られたネモ船長が首だけで振り返ると俺に答えた。


「いやぁ~、アスランじゃあないか~。あのね、戦争を始めたんだけど、一日も持たずに敗北しちゃってね~。あはははは~」


「めっちゃ、弱いな……」


「まあ、次に戦争を開戦するときには本気を出すからさ」


次があるのだろうか?


「それより変態ネモ船長。俺は死海エリアを出て行きたいんだ。俺を最初に拾ったところまでノーチラス号で送ってくれないか?」


「それは構わんが、私たちは今現在のところ捕虜だからな。この拘束を解いてもらわないと無理だぞ」


「分かったよ。縄ぐらい解いてやる」


俺はダガーでクルーたちの束縛を解いてやった。


更にネモ船長が言う。


「できたら、外のワカメも切ってもらえないか?」


ワカメなの?


昆布ってワカメなの?


「はいはい、分かりましたよ!」


俺は選外に飛び出すと黄金剣を構えた。


「ワイルドクラッシャー!!」


俺の強烈な一振りで巨大な昆布の蔓を切り裂いた。


「よし、どうだ、これで!!」


すると俺を乗船させる前からノーチラス号が動き出す。


スクリューが激しく回転を始めた。


「糞ネモ船長、俺を残して逃げ出すつもりだな!!」


俺は急発進を開始したノーチラス号にしがみ付くと水圧に必死に耐えた。


ノーチラス号は俺がしがみ付いているのを知ってか知らずか猛スピードで海底を進んで逃げ出したのだ。


すると暫くして見覚えがある景色が見えて来る。


あれは、逆さ滝だ。


なんだよ、ちゃんと送ってくれたんじゃんか……。


俺は停止したノーチラス号から離れると手を振った。


するとノーチラス号が旋回して遠ざかって行く。


バイバーーイ、変態ネモ船長&ノーチラス号のアンデッドクルーたちよ。


さっさと戦死しやがれってんだ。


俺は死海から出ると逆さ滝の横のタラップを下って行った。


そして、初めて死海エリアに入った廊下に到着する。


俺は天井に川が流れる廊下を進んで死海エリアを後にした。


次は暗闇エリアなのだが、ここにはもうハイランダーズは一人も残っていない。


全員魔王城に引っ越ししたからな。


更に俺はハムナプトラが仕切っていたエリアを駆け抜ける。


ここにもフォーハンドスケルトンウォリアーの残骸しか残っていなかった。


残っているのはスライムたちばかりだ。


ここにスライムたちが大繁殖するのは、まだまだ先の話だろう。


その時は、新しい閉鎖ダンジョンのエリアとして栄えることだろうさ。


そして、俺は懐かしい螺旋階段に到着した。


あとはこれを登れば閉鎖ダンジョンの出口である。


グルグルと回りながら上を目指した俺が城の詰所に出た。


門番に扉を開けてもらうと外に出る。


そのころには夜になっていた。


「ああ、完全に夜だわ……」


詰所から出た俺が空を見上げれば、目映い星々が煌めいている。


辺りは静かだ。


完全に夜だわ……。


深夜だよ、深夜……。


もう日付は過ぎちゃったかな?


俺は門番に訊いてみた。


「なあ、俺が閉鎖ダンジョンに挑んでから何日が過ぎたんだ?」


門番は真面目に答えてくれた。


所詮はモブキャラだな。


捻りもギャグも無い。


「あれから十一日が過ぎました」


あらら……。


タイムリミットを予想以上にオーバーしちゃってるよ……。


俺は異次元宝物庫から青いポーションを出すと中身を眺めながら呟いた。


「報酬が無いなら、このままソドムタウンに帰ろうかな~」


それも有りかも知れない。


この青いポーションを人質にベルセルクやベオウルフから大金をせしめるって感じで行こうかな。


どうせ報酬が無くなったのだ。


ならば新しい交渉を成立させなければなるまい。


これだけ苦労したミッションだったんだ。


ただ働きなんて絶対に嫌だからな。


よし、きーーめた。


俺は門番に伝言を頼む。


「ベルセルクとベオウルフに伝えて貰えないか。俺はソドムタウンに帰るから、青いポーションが欲しくば訪ねて来やがれってな」


「はっ、はあ~……」


門番は間抜けな返事を返して立ち止まったままである。


「ほら、早く伝えに行けよ。じゃないと俺に追い付けないぜ」


俺は言うと異次元宝物庫から金馬のトロフィーを取り出してアキレスを召還した。


そして、素早くアキレスの背中に飛び乗る。


「じゃあな、俺は行くぜ!」


俺はアキレスの手綱を引くと走り出した。


後ろをチラリと見れば、慌てた門番が城内に走り込んで行った。


さて、アキレスの足には追い付けまい。


俺はベルセルクから貰ったフリーパスの通行書を使って夜の門を開けて貰いゴモラタウンを走り出た。


あとはベルセルクやベオウルフがどう出るかだな。



【つづく】

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