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第487話【マジックアイテムの大技と小技】

ご心配お掛けしました。

風邪が治りましたぞ。

何日寝ていたか分からないぐらい寝ていましたが、今日からまた頑張りますのでお付き合い宜しくお願いします!w

「行くぞ。六刀流の味を堪能しやがれってんだ!!」


「ごめんこうむる!!」


二刀流で構えると俺の前でクローンのアスエボがすべての腕を大きく広げで構えていた。


デカイな。


六刀を構えるアスエボは米の字に身体を広げている。


これがアイツの持つマジックアイテムの能力か?


二刀流を六刀流に変える能力。


なんか、少し違和感があるぞ。


こいつ、本当に六刀流なのか?


「改めて参る!!」


右足から踏み込んだアスエボが右腕三本を横に振りかぶる。


「三斬擊っ!!」


そこからの三の字逆水平斬り。


三の字を描きながら横振りの三刀が俺の上半身を狙う。


三本の刃が鉤爪の如く閃光を走らせた。


だが俺は、半身分だけ素早く後退すると三斬擊を躱した。


「うらっ!!」


右腕三本の攻撃の後に左腕三本の同時攻撃。


三本の左腕が上段中段下段と三方向に同時の突きを広げながら迫って来る。


上段突きが顔を狙い、中段突きが胸を狙い、下段突きが股を狙っていた。


「なんのっ!!」


俺は前に一歩踏み出しながらすべての突き技を躱して間合いを詰め直した。


まるで刃が三本有ろうとなかろうと関係無い動きだ。


幅が広いが一つの攻撃と代わらない。


複雑ではないぞ。


故に、見える。


攻撃が見えている。


「斬っ!!」


「ふぬっ!!」


俺の逆袈裟懸けの一撃をアスエボの剣が一本でガードする。


俺の反撃は、そこまでだった。


「甘いんだよ。俺からどんどん行くぜっ!!」


反撃を開始したアスエボが六本の剣を巧みに振るって攻め立ててきた。


上段突き、袈裟斬り、逆袈裟斬り、逆水平斬り、掬い斬り、中段胴斬り、様々な剣擊が飛んでくるが、六本の腕を活かしきれていない。


連続的で隙間が少ないが、攻撃してくる腕は一本から二本だ。


これでは二刀流とさほど代わらないぞ。


腕が六本有っても脳が使いきれていないんだ。


六本の腕が同時に別々の技を放つことはない。


二本の腕が同時に攻めて来るだけなら幾らでもやり過ごせる。


完全に宝の持ち腐れだな。


「よっ、ほっ、よっと!」


俺はサンダーウェポンが掛かったショートソードを使ってアスエボの連打を捌いて見せた。


俺に攻撃を捌かれる度に感電してアスエボが顔を苦痛に歪める。


しかし感電のダメージも低いらしい。


大きな障害にもなっていない様子である。


まあ、サンダーウェポンの感電ダメージなんて、ただの嫌がらせ程度なのかな。


兎に角、警告だけでもしてやるか。


「おまえ、動きが逆に単調になってるぞ」


隙有り。


俺は言いながら足の甲でアスエボの出足を払った。


「うわっ!」


出足を払われたアスエボが大きく体勢を崩したが、転倒までは誘えなかった。


大きく蟹股で堪えてみせる。


それでもかなり機動力が落ちた瞬間だったのであろう。


俺の次の強打は回避不能である。


受けるか食らうかのどちらかの瞬間に俺は強打を打ち込んだ。


「ヘルムクラッシャー!!」


俺のスキルと全体重を乗せた兜割り。


Cの字に仰け反った姿勢からの全力の縦切りがアスエボの頭部に迫る。


俺は腰を丸めながら両足をピンっと伸ばして黄金剣に威力を乗せた。


「なんのっ!!」


アスエボは四本の剣を井の字に並べて盾を作ると俺のヘルムクラッシャーを受け止めた。


剣の壁と俺の黄金剣が激突すると、ガギィィイイイインンンンっと激しい金属音が鳴り響く。


「のわっ……!」


必死な表情でヘビー級なスキル技を耐えたアスエボの腹部を狙って俺は、更なるスキル技を打ち込む。


「クイックスマッシュ!!」


疾風の胴斬りが閃光を放つ。


その閃光斬りから逃れるためにアスエボが身体を後退させた。


しかし、躱しきれてない。


「くっ!!」


当たったな。


だが、浅い。


間食からして内臓まで刃が達した感じではなかった。


せいぜい腹筋を切った程度だろう。


案の定だ。


後ろに下がったアスエボの腹筋に一本筋が刻まれているだけだ。


傷口からは血が流れているが、致命傷には程遠い。


「ちくしょうっ!!」


構えを解いて余裕な態度で俺が語る。


「その六刀流の弱点が分かったぜ」


「言ってみろ……」


「六本も腕が有っても複雑な攻撃を同時に行えるのは二本までだろう。単純な攻めで三本同時が関の山だ。まさに六本有っても無駄だ。ぜんぜん使いきれていない」


「なるほど。良い目をしていやがる……」


「人間の脳味噌では六本腕なんて使いきれない代物なんだろうさ」


「ちっ……」


「さあ、どうする?」


「元々俺は二刀流だ。もう一本のマジックアイテムを使うのみだ!」


「なるほど。面白い。受けてやるぞ!」


アスエボが再び米の字にすべての腕を広げて構えた。


「ダッシュクラッシャー!」


アスエボがスキル名を口にしたがスキルが発動しない。


ダッシュして来ない。


立ち止まったままだ。


代わりに剣の一本が輝いた。


「ヘルムクラッシャー!」


またスキルが発動する代わりに剣の一本が輝く。


「ヘルムクラッシャー!!」


まただ。


三本目の剣が輝いた。


もしかしてスキルをキープして同時に放つつもりか?


「ウェポンスマッシュ!!」


ヤバイな。


このまま充電させてられないぞ。


「ウェポンスマッシュ!!」


「させるか!!」


俺は上段で剣をクロスさせると魔法を唱える。


「ファイアーボール!!」


剣を振るい火球魔法を発射した。


しかしアスエボは回避も無しに正面からファイアーボールを身体で浮け止めた。


爆炎が轟くが炎の中で最後のスキルを唱える声が聞こえてくる。


「ワイルドクラッシャー!!!」


不味い、ヤバイ、六スキル揃ったぞ。


「俺のマジックアイテムは合わせ技が可能な二品だ。これで終わりにしようぜ!!」


黒煙の向こうでスキルの輝きが六つ見えていた。


「食らえ、同時六スキルの発動だ!!」


ダッシュ!


爆炎を突き破りアスエボが飛び出してきた。


六本の輝く刃を振りかぶっている。


気配感知スキルで俺の位置を把握していたのだろう。


しかし、俺の眼前で振り上げた剣たちを振り切ることなくアスエボの動きが止まった。


目を丸くして硬直している。


「居ない……?」


アスエボが呟くと六刀の輝きが力を失う。


不発だ。


「なぜ、居ない……?」


呆然とするアスエボの前には俺の姿がなかった。


その意表な状況にアスエボは硬直しているのだ。


「どこに行った!?」


叫びながらキョロキョロと周囲を見回すアスエボが動揺を露にしている。


気配は存在しているのに姿が見えない。


老人のクローンは真っ直ぐアスエボを見詰めている。


漆黒のローブを纏ったノストラダムスは首を左右に振って呆れている様子だった。


アスエボが老人に問う。


「オリジナルはどこに消えた!!」


老人のクローンは死んだ魚のような眼でアスエボを見詰めながら返す。


「これは、一騎討ち。ワシからは何も言えぬわ……」


「くっ!!」


アスエボは訊いた自分が馬鹿だったと言いたげに表情を歪めた。


「逃げたか!!」


だが、気配はまだ部屋の中に有る。


自分の周囲にオリジナルの気配が漂っている。


しかし、姿が見えない。


「逃げるか、バカ」


背後から声──。


瞬時にアスエボが踵を返すと閃光が煌めいた。


「ウェポンスマッシュ!!」


「かばっ!!!!」


切られた。


袈裟斬り。


身体の左半身が消えているアスランに切付けられた。


「くっはぁ!!!」


胸を裂かれ、肋骨が何本か絶たれた。


刃は肺まで達している。


明らかに致命傷の一太刀だった。


「ぬぬぬっ!!」


力無くよろめきさがるアスエボが口から血を溢していた。


ガクリと片膝を着く。


突如空間の裂け目から姿を表した俺は手に持ったマジックアイテムを紹介する。


「姿を隠すインビシブルマントだ。これで隠れさせてもらったぜ」


【インビシブルマント+1。ステルス効果】


「姿を、消して、いたのか……」


「大技の欠点は幾つかあるが、一番良い対策は、大技に付き合わないだ。ほとんどの大技は、遣り過ごされると台無しになるからな」


「ず、ズルい……」


「戦術だよ。俺は戦士や英雄になりたくってここに居るんじゃあないからな。俺は冒険者だ。スリルとアドベンチャーを求めてここにいるんだ。多少ズルくても勘弁してくれよ」


「なるほどな……」


アスエボが落とした片膝をユラユラと上げた。


「まだ、やるかい?」


「最後まで、戦う……。俺は、諦めない……」


俺はアスエボの胸を切り裂いたレイピアを手首でクルクルと回した。


クローンを真似て∞の字を切っ先で描く。


「安らかに眠れ!」


「感謝…………!!」


俺はレイピアを振りかぶると大きく一歩前に踏み込んだ。


すると三本の剣を頭上に並べてガードを作ったアスエボが、残りの三本腕で反撃を狙っていた。


マジでこいつ諦めていない。


ならば──。


「斬っ!!」


俺のレイピアが真っ直ぐに打ち込まれた。


頭部を狙った縦切り。


だが、アスエボの頭上に列べられた三本の剣は俺のレイピアを押さえることは出来なかった。


三本すべての剣をすり抜けてレイピアがアスエボの頭部を割る。


俺のレイピアがクローンの脳天から進んで鼻先まで切り刺さっていた。


「な、に……?」


まだしゃべれるの?


「このレイピアはヒューマンキラーだ。人間しか切らない。その他の物体はすべて素通りする。マジックアイテムは、大技も大事だが、小技で使い勝手が良いほうが得点的に高いよな」


「俺は、にん……げ……ん……なの……か……?」


マジでまだしゃべっているよ。


「このレイピアが証明してくれただろ。お前は悪魔でもクローンでもない。人間だ──」


「そ……う、か……」


両膝から崩れたアスエボが俯せに倒れ込んだ。


絶命する。


【おめでとうございます。レベル45に成りました!】


ああ、レベルアップか──。


でも、なんか悲しいぜ。


自分を自分で殺すのは、やっぱり少しつらいかも……。



【つづく】

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