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第471話【乙女会議】

鼻が痛む……。


首も痛い……。


俺が目を冷ますと何故か身体が動かなかった。


それに、寒いし──。


なんだか寝苦しいぞ。


いや、寝てないわ……。


立ってます……。


どうやら立ったまま気絶していたらしい。


しかも身体が動かない。


声も出せない。


その理由は直ぐに分かった。


縛られているぞ。


身体がロープで縛られている。


口は猿轡で塞がれていた。


何故だろう?


理由が分からん……。


そして、俺の背後に丸太が建っており、そこに身体が縛られている。


腕を胴体ごと丸太に縛られてますわ。


足首を縛られて、丸太に固定されている。


完全に動けないし、逃げれない。


しかも全裸じゃんか!?


全裸で丸太に縛られてますよ!!


更に首から吊るされたロープでダーツのボードが下げられています。


そのダーツボードが俺の股間を隠してますわん。


そんな哀れな俺の前には、テーブルを囲んで皆が何かを話していた。


スカル姉さん、スバルちゃん、ユキちゃん、ガイア、凶子、それにガルガンチュワも混ざってテーブルでニコやかに何かを話している。


青空の下で雑談に花を咲かせる乙女たち。


いや、一部乙女以外も混ざっているが、なんかほのぼのしい。


スカル姉さんがニコやかに話す。


「へえ~、あんたも閉鎖ダンジョンから来たのか。最近ここには閉鎖ダンジョンから移住してきたモンスターも多いから、直ぐに馴れるだろうさ」


ガルガンチュワもニコやかに受け答える。


「そうなのか。私は長いこと水中生活だったんで、地上で暮らすのは初めてなんだ。だから同じような境遇の奴が居るのは心の支えになるよ」


明るい笑みでユキちゃんが問う。


「水中生活が長いって、どう言うことなんだい?」


「私は水中系のモンスターだったからな」


そして指輪を見せながら説明する。


「この指輪の効果で人間に化けているんだよ」


「水中系って、マーメイドとかなのか?」


「いや、クラーケンだ」


あいつ、俺との約束を忘れて速効でばらしているじゃあねえか!!


マジでバカ野郎だわ!!


少し恐る恐るにスバルちゃんが問う。


「クラーケンって、あのタコとかイカっぽい、巨大な海のモンスターですか?」


「ああ、そうだ。しかも長生きしたから知性は高いほうだぞ。ちゃんと数えていたわけじゃあないが、おそらく700歳ぐらいだ」


あいつって、そんなに長生きしてたのか……。


そうだ、こいつのネーム判定してなかったな。


ちょっとしてみるか──。


【レジェンダリー・クラーケンです】


うわ、ちょっと神々しい名前じゃあねえかよ!!


道理で手も足も出ないほどに強いわけだ。


スカル姉さんが言う。


「じゃあ、暮らす場所も仕事も決まってないんだな」


もうクラーケンってのには触れないんだ……。


そんなに簡単に納得しちゃうんだ……。


「ああ、勿論だ。それどころか先ずは地上のルールを勉強するところからスタートらしい。アスランがそう言ってたぞ」


ガルガンチュワがそう言うと、一斉に全員が首だけを曲げて無言のまま俺のほうを見た。


笑顔で話していた全員の目がガイアと同じぐらいに冷たかった。


極寒の視線だ。


さ、寒い……。


そして、首を前に戻すと、また楽しそうに話し出す。


スカル姉さんが顎先に手を翳しながら考え込む。


「この町で過ごすならば仕事をして貰いたいのだが、女の子に土木の作業員はさせられないしな……」


ガルガンチュワが力瘤を作りながら言う。


「力仕事なら任せておけ。何せ腕力は強いからな!」


それは本当に腕か?


タコなのだから足ではないのか?


スカル姉さんが悩みながら答える。


「だが、女の子に土建はやらせられんし……」


するとユキちゃんが元気良く立ち上がりながら言った。


「じゃあ、私と一緒にソドムタウンの冒険者ギルドでウェイトレスでもやらないか!」


「ウェイトレス?」


「ウェイトレスなら色んな人と接するから社会勉強にもなるし、この町に酒場が完成したらハンスさんが酒場を開いて独立するって言うから、一緒に戻ってくればいいじゃんか!」


「なるほど、それは良い考えかも知れんな」


スカル姉さんが頷いていた。


あとはガルガンチュワ次第だな。


「私は地上だと右も左も分からない半人前だ。ユキさんが指導してくれるなら、アスランより安心できそうだな」


なんだと!!


俺では何が不満なのだ!!


ユキちゃんが悪餓鬼っぽく微笑みながら言う。


「さんじゃあなくって、ちゃんでいいぞ。みんなユキちゃんって呼ぶからな!」


「そうか、ユキちゃん。ならば私はガルガンチュワだと長いから、チュワちゃんで構わんぞ」


シュワちゃんみたいで嫌だな……。


スカル姉さんが言う。


「いや、お前はガルガンチュワのままが良かろう」


「何故だ?」


「ちゃん付けは歳を取ったときに、止めどきに困るからな。それに威厳が無くなる。お前はこの中で最高齢なんだ、ちゃん付けなんて出来ないぞ」


「そうなのか。なら普通にガルガンチュワのままで構わんぞ」


するとガイアがお子さまらしく手を上げた。


スカル姉さんがガイアに振る。


「なんだ、ガイア?」


「ガイアが一番年上だよ」


ガイアがボーっとした眼差しで述べた。


「ガイアは幾つだ?」


「人間が、この大地に立つ前からだよ」


流石は創造神のママさんだな~。


大地母神なんだよな、ガイアって。


しかし、スカル姉さんが笑いながら受け流す。


「もう、ガイアは想像力が豊かだな。でもな、そんなことばかり空想してると、厨二臭く育ってアスラン見たいにウンコっぽく育つぞ。気を付けなはられや~」


「分かった──」


ガイアの野郎、分かるんかい!!


てか、俺ってそんなに厨二臭いですか!?


ウンコ臭いですか!?


そもそも厨二臭いのが罪ですか!?


差別だ!!


厨二差別だ!!


ウンコ差別だ!!


俺が憤慨しているとスカル姉さんが静かに話を変えた。


「さて、次の問題に入ろうか──」


あれ、嫌な空気に色が変わったぞ……。


皆の笑みが消える。


「んん………」


今頃に気付いたが、俺の左横から唸り声が聞こえてきた。


俺が左を見てみると、俺と同じように凶介が全裸で丸太に縛り付けられていた。


その股間はダーツボードで隠されているが、横から見ている俺にはイツモツがバッチリと見えている。


そんなに大きくないので少し安心したぞ、凶介。


そんなことよりもだ……。


このピンチはなんだ?


何故に凶介まで一緒に縛られている?


俺が何か悪いことでもやったのか?


ガルガンチュワと手を繋いで帰って来ただけで、この仕打ちか!?


竜宮城で過ごしたせいで、一週間も留守にしたからって、この仕打ちなのか!?


それだとあんまりすぎる!!


スカル姉さんが冷たい眼差しと冷たい声で話を切り出した。


「では、アスラン。お前に訊きたいことが有るんだ──」


なに!?


何が訊きたいのさ!?


俺は話したくっても猿轡でしゃべれませんよ!!


俺が悶えていると、スカル姉さんがテーブルの下からスコップを取り出してテーブルの上に置いた。


それは、神々のスコップだ。


凶介に預けて金塊の増幅を命じておいた、神々のスコップだった。


まさか……。


俺はゆっくりと左を見た。


同じように縛られ猿轡されている凶介と目が合う。


その完全に怯え切った眼差しから謝罪の念が伝わってきた。


あれだけ極秘で金塊の増幅を命じてあったのに、バレやがったな、こいつ!!


これだから金髪リーゼント野郎は信用できないんだ。


マジで使えね~な~。


スカル姉さんが冷えきった眼差して述べる。


「なあ、アスラン。このスコップに付いて、いろいろと訊きたいのだが~。アインシュタイン!」


えっ、なんでアインシュタインを呼ぶんだ!?


すると俺が見えない背後からアインシュタインが無言のまま歩み出て来た。


その姿はいつもと違う。


腰に下げたベルトには複数のダガーを下げていた。


スカル姉さんが小人に命ずる。


「まあ、一つ投げてみろ」


「はいです~(棒読み)


アインシュタインは5メートルほど離れると俺のほうに振り返った。


すると腰から一本のダガーを引き抜き片手に構える。


ダガーの投擲ホームだ。


まさか、俺の股間を隠しているダーツボードに向かって投げるのですか!!


外したらどうするのさ!!


相手はアインシュタインだぞ!!


あっ、そうだ──。


アインシュタインってラックだけは神がかっていたよな。


シロナガスワニクジラを倒すほどだもん。


絶対に外れないよ。


そのことを思い出した俺はちょっと安心する。


「では、投げます~。とう(棒読み)」


アインシュタインが投擲したダガーが俺の方向に飛んで来る。


だが、そのコースは明らかに股間を隠すダーツボードの高さではない。


俺の目線の高さだ。


刹那、投擲されたダガーが俺の頭の横を過ぎて行った。


鼓膜に風切り音が届くほとに近い。


ウソん~……。


「あは、外しちゃった(棒読み)」


全然ダメじゃんか!!!


こえーーよ、こいつ!!!



【つづく】

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― 新着の感想 ―
[一言] スコップはレベルアップの対価なんだし、スカル姐さん達にどんな権利があると言うのだ……! アスランかわいそ。
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