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第443話【地上の太陽】

「さてさてと、これで二人目だ」


タピオカ姫が述べていたハイランダーズの強者たち。


隼斬りのエクレア。


炎剣氷剣のバームとクーヘン兄弟。


あと残るは、長槍のパンナコッタと、謀反軍リーダーで剣豪のティラミスだっけな。


残るは二人だ。


あと、雑魚が十六名か~。


まあ、雑兵どもはどうでもいい。


幹部だけ倒せばハイランダーズ全員を仲間に入れられるだろう。


二の間に一人残った俺は、扉に近付きトラップを調べる。


「罠や鍵は無し。たぶん今まで見てきたハイランダーズの性格からして、このエリアには罠は無いな」


あいつらは武士に近い戦士だ。


罠とかの小細工は使わないだろう。


そして、俺が扉のノブに手を掛けると、異次元宝物庫内からヒルダが声を掛けてきた。


『失礼いたします、アスラン様──』


「なんだ、ヒルダ?」


『そろそろ昼食のお時間ですが、お食事は如何なされますか?』


「あ~、もう昼飯の時間かぁ~」


確かにお腹が空いてきたぞ。


ここは一旦魔王城前のキャンプに帰って、ゆっくりと昼飯にでもするかな。


ちゃんと暖かくて旨い飯が食いたいのだ。


それに、ハムナプトラのことも気になるしさ。


俺は異次元宝物庫から転送絨毯を出して二の間の隅に敷いた。


「なあ、ヒルダ、プロ子。俺はキャンプに帰って昼飯を食って来るから、転送絨毯の見張りを頼むわ~」


『『畏まりました』』


異次元宝物庫内からゾロゾロと出てきたメイドたち21名が、俺が中央に立つ転送絨毯を囲んで背を向けた。


その手にはクロスボウが握られている。


『それでは昼食をお楽しみになられてくださいませ。転送絨毯の警護は我らメイドたちにお任せあれ』


「ああ、ヒルダ。任せるぞ。──チ◯コ」


合言葉を述べた俺は瞬時に魔王城前のキャンプに転送された。


俺がテントから出ると外では様々な者たちが土木作業に性を出していた。


マッチョなエルフたちが大木を切り倒し、サイクロプスが刈株を掘り返し、フォーハンドスケルトンたちが木材を運んでいる。


その足元を小人たちが煉瓦を背負って運んでいた。


人間も居るには居るが、亜種やモンスターの数が多く見える。


故にカオス!!


なんだか魔王城らしい光景が広がっていた。


「眩しいな……」


ダンジョンから出たばかりの俺は暗闇に目が慣れていたために、太陽の光が瞳に刺さるようで痛かった。


俺はローブのフードを被って日差しから視線を守る。


「まあ、目が慣れるまでだ」


すると美味しそうな匂いが微風に乗って漂って来た。


「クンクン──。炊き出しの匂いだ。石橋のほうだな」


俺は焼き肉の匂いに誘われて足を進める。


最近では倒壊している石橋の手前で炊き出しを作るのが日々の作業となっていた。


今日はユキちゃんとオアイドスが炊き出しを作っている。


「おら、へっぽこミュージシャン、早く肉を調理しないと作業員どもが昼食に来るぞ。急げ!!」


「はぁ~……。もう腕が疲れた……。私はリュートを弾く以外に腕を使いたくないのにさ……」


おうおう、オアイドスが愚痴ってる愚痴ってる。


俺は二人が調理に励む現場に入ると声を掛けた。


「ユキちゃん、オアイドス。ご苦労様~。もう昼飯は食えるか?」


「よう、ダーリン、おはよう。今頃の出社か!?」


出社ってなんだよ……。


こいつらもエルフたちの文化に汚染され始めたのか?


「ああ、今はゴモラタウンの閉鎖ダンジョンに籠ってる最中だ。なかなか金になる依頼を受けててな~」


「そうかそうか。ダーリンには外貨を稼いでもらって、早くこの町を完成してもらわないとならんからな!」


「そんなことより昼飯だ。何か食わせてくれ」


オアイドスが本日のメニューを言う。


「今日はケルベロスの焼き肉とワニガラスープですが、いいですか、アスランさん?」


「それしか無いなら、それでいいよ。兎に角暖かい食い物が食いたいんだよ」


俺が長テーブルに腰かけるとユキちゃんが料理を運んで来る。


「頂きまーーす!!」


俺がケルベロスの焼き肉にかぶりつくとユキちゃんが不機嫌そうに言った。


「ダーリン、飯を食う時ぐらいフードを取れよ……」


言うなりユキちゃんが俺のフードを剥ぐった。


「「ぶっ!?」」


二人は俺のハゲ頭を見た刹那に真顔で吹いてしまう。


そして、腹を抱えて笑い出す。


「わっひゃひゃひゃ~。なんだよダーリン、そのハゲ頭は!?」


「アスランさん、もうハゲ始めましたか? 若ハゲですか!?」


「ちゃうわい!!」


あー、もー、このハゲ頭もどうにかせんとならないな。


見る知人すべてに笑われる。


スゲー悔しいわ……。


まあ、なんやかんや笑われながらだが、俺は昼飯を食べ終わった。


俺は爪楊枝で歯の隙間に引っ掛かった肉片をホジリながら二人に訊いた。


「スカル姉さんとハムナプトラは話し合ったのか?」


オアイドスが答える。


「ハムナプトラって、あのミイラ男ですよね?」


「ああ、そうだ」


「今朝、二人が話しているのを見ましたよ。作業員として働く代わりに住人登録を契約してました」


「それは良かった」


流石はスカル姉さんだぜ。


相手がミイラだろうとモンスターだろうとすべてウエルカムだ。


話が面倒臭くならないで助かる。


オアイドスが遠くのミケランジェロを眺めながら言う。


「それにしてもアスランさんって、テイマーでもないのに、よくモンスターを仲間に出来ますね」


「ああ、最近特にモンスターに好かれていてな」


言いながら俺は異次元宝物庫の扉を開けた。


するとハイランダーズたち七名がゾロゾロと出て来る。


「ここは……?」


「「地上だな……」」


タピオカ姫、キャッサバ、スターチ、プディング、エクレア、バームとクーヘン兄弟は、地上の景色を見回して興奮していた。


「ここが地上か!?」


「地上!!??」


「わ、私、地上に出るのは初めてだぞ!!」


「わ、私だって!!」


「姫、こんなに明るいですぞ!!」


「皆、上を見ろ。あれが噂に聞いた太陽じゃあないか!?」


「マジ、あれが噂に名高い太陽か!!」


「「生きててよかった……。まさか地上に出れる日が来るとは!!」」


あらら……?


なんかスゲー感動している感じだな。


もしかしてハイランダーズってダンジョンで産まれてダンジョンで死んで行くようなモンスターだったのかな?


ちょっと訊いてみよう。


「お前ら、ダンジョンから出るのは初めてなのか?」


俺の質問にタピオカ姫が答えた。


「当然じゃ!!」


プディングに持たれたエクレアが続く。


「我々ハイランダーズは閉鎖ダンジョン特有のモンスターだと聞いています。だから地上を見るのは初めてですわ!」


「ほほう、なるほどね~」


このはしゃぎよう。


この感動の仕方。


使える!!


使えるぞ!!


残りのハイランダーズを仲間に引き込む餌が見つかった。


地上の感動を餌にハイランダーズ全員を仲間に引き込んで、魔王城の警備としてコキ使ってやるぞ!!


これって、もしかして──。


俺、もしかしたら魔王としてデビュー出来るんじゃね!?


俺、魔王の才能があるのか?


席を立った俺がハイランダーズに言う。


「よし、お前ら、閉鎖ダンジョンに帰るぞ!」


「えー、私はここに残りたいな~」


「黙れタピオカ、お前らも来るんだよ!!」


こいつらには他のハイランダーズに地上の感想を伝えてもらわなきゃならんのだからな。


そして俺はハイランダーズを異次元宝物庫に押し込むとテント内の転送絨毯で閉鎖ダンジョンに帰る。


だが、二の間に帰った俺の目の前に、とんでもない光景が飛び込んできた。


「なんじゃこりゃあ!!!」


それは、バラバラに刻まれたメイドたちの死体だった。


手足だけでなく首まで切り離されて、まさにバラバラ。


残酷で哀れな光景が室内に広がっていた。


そして二十一個の首が扉の前に、横一列で綺麗に並べられている。


その首の中には、ヒルダとプロ子の者も有った。


「ヒルダ……、プロ子……」




【つづく】

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