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第434話【暗闇のハイランダーズ】

だだっ広い部屋で遭遇した突発性のイベント。


それはピンク色のふざけたフルプレートメイルを纏った乙女を捕まえようと追いかけている黒騎士たちの集団だった。


ピンクプレートの乙女は内股でか弱そうに走っているが、そのプレートメイルはかなりの重厚だった。


手足は普通の人間サイズの太さだが、胴体がやたらと肥満な体型に見える。


完全なウッチャリ系の体型だ。


なんともそそらない体型だな……。


ガッカリである。


後ろを追いかける黒騎士たちは普通の体格の男性たちなのに、何故に肝心な乙女がデブいのだろう。


マジでついてないぜ……。


やはりダンジョン内でまともな出会いなんて有り得ないのだろう。


そして、全員の武器がライトの魔法で輝いている。


肥満体なピンクプレートの乙女はロングソードだ。


他の黒騎士たちはショートソードである。


それらの武器が全員輝いていやがるのだ。


どうやら向さんも俺が持ってるランタンの明かりに気が付いたのか、こちらに向かって駆けて来る。


「ちっ、気付かれたか……」


どうせならやり過ごしたかったぜ。


だって可愛くないんだもの。


「お助けよ!!」


ピンクでデブい乙女が俺の側に駆け寄って来ると、俺の背後に隠れた。


こんだけ重厚なのにひ弱な振る舞いだな。


体格だけ見れば、三人の黒騎士たちを一人で蹴散らせそうなパワーが備わっている気がするのだが。


まあ、とりあえず状況を確認するために質問でもしてみるか。


「それで、娘さん。何故に追われているんですか?」


ピンクプレートの乙女は俺の背中に隠れながら答えた。


「あの人たちは野盗です。どうか助けて下さいませ!!」


野盗?


こんなダンジョン内で?


野外の荒野とかなら分かるが、こんなところで野盗なんかしていて食って行けるのかよ?


てか、超嘘っぽいぞ。


そして、俺の前に並んだ三人の黒騎士たちが言う。


「貴様、何者だ!?」


「まあ、何者でもいいから、その娘をこちらに渡しやがれ!」


「渡せば苦しまずに殺してやるぞ!」


なんだよ……。


結局殺すわけか……。


仕方無いので俺は腰から黄金剣を引き抜いた。


戦意を知らしめる。


それからモンスターネーム判定を行う。


俺の頭の中に女性の声で回答が帰って来る。


【暗闇のハイランダーズです。鉄属性】


えっ、こいつらがハイランダーズなのか?


てか、説明に鉄属性とか追加されてるな。


これが新スキルの効果か。


まあ、いいさ。


軽くいなして、さっさとピンクデブ乙女を助けてやろうかな。


もしかしたら甲冑だけが重厚で、中身はスレンダーで麗しい乙女かも知れない。


いや、その可能性は十分に有るぞ!!


可能性が有るなら助けるべきだな。


よし、さっさと黒騎士たちを倒しちゃうぞ。


「掛かって来やがれ、野盗ども!!」


殺気!?


俺が黄金剣を両手で構えると、強い殺気を背後から感じ取った。


「ふんっ!!」


「おっと!?」


俺は瞬間的に頭を下げて不意打ちを回避した。


俺の頭上をロングソードの一振りが過ぎて行く。


攻撃を仕掛けて来たのはピンクプレートの乙女だった。


「やっぱりグルかよ!!」


俺は横に飛んで四人から間合いを作る。


ピンクプレートの乙女が言う。


「よくぞ今の一撃を躱しましたね!」


「テメー、不意打ちなんて卑怯だぞ。それでもナイトか!?」


「ナイト?」


「違うの?」


「我々は歩兵連隊であって貴族でも騎士でもないわ!」


「だからって不意打ちや騙し討ちがOKなのかよ!?」


「我々はこう見えても歴としたモンスターだからな。人間のルールには縛られないのです!!」


「あー、分かったよ。ならば全員ぶっ殺すぞ、いいな!!」


「こうなったからには剣を交えるのみだわ!!」


結局殺し合いで勝敗を付けることになった。


また、相手は暗闇エリアを支配しているハイランダーズだ。


戦うしか無い──。


「「「いざ、参る!!」」」


三人の黒騎士から斬り掛かって来た。


フルプレートなのに動きが軽やかだな。


そこそこ腕が立ちそうだぞ。


「ならば!」


俺は正面から迫る三人の黒騎士にファイアーボールを投げ付けた。


「ファイアーボール!!」


「ぬおっ!?」


三人がファイアーボールの爆風に巻き込まれた。


俺も爆風に飛び込んで行く。


横に一撃目の一振り。


縦に二撃目の一振り。


最後に袈裟斬りの一振り。


たったの三振りの攻撃で、三人の胸を切り裂いた。


「ぐあっ!」


「ぐはっ!」


「や~ら~れ~た~!!」


ファイアーボールの爆煙が晴れるころには三人の黒騎士たちは床に倒れていた。


チョロいぜ。


まあ、ざっとこんなもんだな。


ファイアーボールの爆炎を目眩ましに敵を斬る。


今や俺の上等作戦である。


「さて、もう一人になったぜ、お嬢さん。どうするよ?」


「それはどうかしらね!」


あれ、まだ強気だな。


可笑しいぞ?


ガシッ。


「あっ?」


右の足首を捕まれた。


斬り倒したはずの黒騎士の一人に足首を捕まれたのだ。


「まずっ!!」


この野郎、まだ生きてやがったのか!?


これは不味いぞ!!


って……。


残りの二人も立ち上がる。


斬り伏せたはずの黒騎士たちが全員生きてやがった。


これはますます不味いぞ。


「うりゃ!!」


「そりゃ!!」


二人の黒騎士が左右から斬り掛かって来た。


「スマッシュウェポン! スマッシュウェポン!!」


左右に連続で放たれるスキル技の二撃が斬り掛かって来た黒騎士の腕を順々に斬り飛ばす。


右から攻めて来た黒騎士は両腕を同時に切断。


左から攻めて来た黒騎士は右手を肘の辺りから切断。


ライトの魔法で光り輝くショートソードを掴んだままの腕が飛んで行く。


「おっ、おのれ!!」


俺の足首を掴んでいた黒騎士が、下からショートソードを突き立てて来る。


「甘いぜ!!」


俺はその手首を斬り飛ばした。


すると、立っていた黒騎士たちが音を鳴らして崩れ落ちる。


更に俺の足首を掴んでいた手も緩んだ。


三体の黒騎士たちが動かなくなったのだ。


「えっ……?」


「おのれ、おのれ、おのれ!!」


憤怒を表しながらピンクデブプレートの乙女が斬り掛かって来る。


「ふっ!!」


重く鋭い一振りだった。


俺は剣を受けるのを避けて回避に専念する。


「逃げるな、人間!!」


「や~だ~よ~~」


走って逃げる俺。


ピンクプレートの乙女は光るロングソードをメチャクチャに振り回しながら追いかけて来る。


あー、なるほどね。


やっぱりこいつら騎士じゃあねえんだ。


ただの歩兵だわ。


剣のいろはを分かっちゃいねい。


ただ力任せに武器を振り回しているだけだ。


しかも戦術のなんたるかも分かってないぞ。


弱い。


こいつら見た目よりも弱いぞ。


俺は振り返ると同時に追って来ていたピンクプレートのヘルムを剣の腹で素早くぶん殴った。


ヘルムの顔面に刀背打ちがヒットする。


ガンっと音が響いた。


「きゃ!?」


よろめくピンクプレートの乙女。


やっぱり弱いぞ。


斬るまでも無いかな。


まあ、相手はモンスターでもボイスは可愛らしい乙女だから見逃してやろうか。


「それっ!!」


今度は剣の腹でロングソードを持った右手首を狙って攻める。


刀背打ちが手首にヒット。


再びガンっと激しい音が響く。


するとピンクプレートの乙女はロングソードを地面に落とした。


「まあ、命だけは助けてやるから、俺の前から消えやがれ。お嬢さんよ」


俺がクールを気取って言うと、突然重厚なピンクプレートを纏った体が崩れ落ちる。


「えっ!?」


驚いた俺がしばらく呆然とピンクプレートを見詰めていたが、彼女が動き出す気配は無かった。


「あれれ、死んじゃったの……?」


俺、殺しちゃったのかな?


てか、手首を打っただけだよ?


せいぜい手首が折れた程度じゃんか?


それで死んじゃうかな、普通さ。


HPがすっごく低いのかな……?


「もしも~~し……」


俺は黄金剣の先でピンクプレートの体を突っついた。


しかし反応は無い。


「し、死んでるの……?」


俺はしゃがみ込んでピンクヘルムの覗き窓を開くと顔を確認してみた。


「な、無い……」


顔が無いのだ。


俺はピンクヘルムを両手で持ち上げる。


すると首から胴体と頭が離れてしまう。


「か、空だ……」


ヘルムの中も、胴体の甲冑の中もからである。


「こいつら、リビングアーマーか?」


いや、モンスターネーム判定では暗闇のハイランダーズと出ていた。


だからリビングアーマーでは無いはずだ。


俺は改めて周囲を確認のために見渡した。


グッタリと横たわる三体の黒騎士たちの鎧。


その側に光り輝くショートソードが在った。


ピンクプレートの側にも光り輝くロングソードが落ちている。


「んん~」


俺は再びしゃがみ込むと落ちているロングソードを凝視した。


「んんん~~~?」


「…………」


なんかロングソードの柄の部分に顔が装飾されてるぞ。


俺はその装飾を人差し指で突っついた。


「つんつんっと」


「…………」


なんか、プニプニしているな。


俺は更に人差し指でグリグリした。


「ほれほれっと」


「ぬぬっ……」


なんか、呻きやがったぞ。


俺は人差し指で鼻の穴をほじくってやる。


「ぐりぐりぐりっと」


「ぬぬぬぬぬっ!!」


なかなか我慢強いな。


ならばと俺は鼻の穴をほじっくった人差し指を口にねじ込んでやった。


「やめーーーーい!!!」


「うわっ、叫んだ!?」


「あなた、わざとらしいぞ!!」


どうやらハイランダーズとは、剣が本体のモンスターのようだな。



【つづく】

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