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第422話【閉鎖ダンジョンに再チャレンジ】

俺は現在のところ閉鎖ダンジョンの入り口から入って最初の螺旋階段を下って進んでいた。


「ここはまだ前のままだな……」


俺はその晩のうちから閉鎖ダンジョンに潜ることになったのだ。


ほとんど幼女テイアーに追いやられるように閉鎖ダンジョンに入ることになったのだが……。


まあ、地上で幼女テイアーの暴力に堪えるよりはマシである。


何よりドラゴンブレスは懲り懲りだ。


それで懐かしの詰所から地下に向かったのである。


詰所には新しい番兵が居たのだが、俺とは一言も言葉を交わさなかった。


なんとも真面目で無愛想である。


だからキャラの外観説明すらしてやらないんだから、フンッだ。


そして、入り口まで見送りに来たベルセルク坊やに言われたのだ。


「先月のことだ。年に三回ある解禁日に、閉鎖ダンジョンへ挑んだパーティー数は七組じゃ。総勢四十三名が挑んだ。だがしかし、帰って来たのは半数の二十二名だわい」


「半分もやられたのか?」


「今回の年末大移動後の閉鎖ダンジョンは、今までの中でも最強クラスだとか……。帰って来なかった人数も最高数だったわい」


「それなら丁度いい話だ。俺も前より強くなっているからな。やり応えが有るってもんだ」


強がりでは無い。


本気だ。


「まあ、気を付けろ……」


あの餓鬼は貴族のボンボンジジイだろ。


冒険のなんたるかも知らんで言ってるのだろうさ。


兎に角俺は確実に強くなっている。


あのころよりも沢山の経験を積んだ。


今ならエクスプロイダー・プロミスだって、黄金剣のセルバンテスだって、ワンパンで決められるはずだ。


んん~~……。


それはやっぱり舐め過ぎかな……。


だが、あの二人にだって確実に勝利出来るだけの実力は備えたはずだ。


だから今回は絶対に余裕だぜ。


兎に角、出来るだけ早くテイアーの研究室を見つけ出して、件のポーションを持ち帰らなければ。


期限は十日だ。


一日経つことに報酬がマイナス100000Gされる。


十日で1000000Gが無くなることになる。


最低でも500000Gは報酬として頂きたいものだ。


前回は一週間ぐらい潜ってたからな。


今回は五日以内にクリアしたいぜ。


だから今回は研究室に辿り着くまで地上には戻らないことにする。


まあ、ダンジョン内で野宿でもいいし、最悪は転送絨毯で魔王城キャンプまで帰っても良いのだ。


それにヒルダやプロ子も居るから飯には困らんはず。


保存食で過ごさなくても良い。


前回とは条件が違う。


便利なマジックアイテムも増えているからな。


兎に角、真っ直ぐ帰らずテイアーの研究室を目指すぞ。


出来るだけ短時間でのクリアを目指す。


そして、螺旋階段の最下層が見えて来た。


「あれ──」


俺は螺旋階段を下りると部屋に出た。


5×5メートル四方の部屋で、俺が下りて来た階段から入って三方の壁に通路が有る。


十字路の部屋だ。


確か昔来たときは、螺旋階段を下りたら左右に伸びる通路だったと思う。


いきなりダンジョンが変わってるんだな。


これだと前の記憶は一切通用しないぞ。


「こりゃあ、一からマッピングだな……。面倒臭いな、もう……」


それでも俺は羊皮紙にマップを画きながら進んだ。


螺旋階段から見て左の通路はしばらく真っ直ぐ進むと坂道の通路になっていたが、やがて行き止まりとなる。


隠し扉などを注意したが何も無かった。


「ハズレか──」


今度は戻って右の通路に進む。


そして、右の通路を進んでいると、天井部分に大きな丸い穴が空いていた。


直感で、なんだか不吉な穴に思えた。


真下に立って覗き込むのもヤバそうだ。


俺は恐る恐る穴の下に近付いた。


ソロリと覗き込む。


ゴボゴボゴボ──。


「なーーんか、嫌な音が聞こえますな……」


配水管がヘドロで詰まったような音である。


「なんか居るぞ?」


その刹那だった。


何かがドロリと流れ落ちて来る。


「ヤバッ!!」


俺は身を引いて穴の下から退避した。


すると天井の穴の中から紫色の汚物がドシャリと降って来る。


その量は大量。


紫色の汚物は床に落ちたが水のようには広がらなかった。


プルンと固体として立ち上がる。


「スライムか?」


そうだ、ネーム判定だ。


【アシッドスライムです】


スライムか──。


しかもアシッドって酸だよな。


武器や防具を溶かす系のモンスターだね。


そして、アシッドスライムは俺のほうに向かって迫って来た。


以外に移動速度が速いな。


人間が歩行する程度の速さだけれどね。


そして、ジルジルジルって音を鳴らしながら蛇のように触手を伸ばして来る。


いきなりの攻撃だ。


「うわ、危ない!」


俺は後方に飛んで身を躱した。


それでもアシッドスライムは俺を追いかけて来る。


この野郎は視力で俺を見ているわけじゃあないだろう。


目とか鼻は見当たらない。


おそらくなんらかの感覚で俺を関知しているのだろうさ。


それにコアっぽい物も見当たらないな。


プルンプルンのフニャフニャの葛餅のようだった。


俺は虫除けのランタンを床に置くと異次元宝物庫からラージクロスボウ+2を取り出した。


矢は前回余った氷の矢を装填する。


「食らえっ!」


俺は引鉄を引いて矢を放つ。


氷の矢が光ながら発射されるとアシッドスライムにズブリと深く突き刺さった。


「決まったかな?」


しかし、矢は体内にめり込んだがダメージを与えたようすが見られなかった。


それどころかアシッドスライムの体内にとどまる氷の矢が溶け始める。


「あらら、溶けちゃってるよ……」


これは美少女の衣類を溶かす能力だろう。


だが、鏃部分だけが残っている。


マジックアイテムの本体部分は溶かせないのね。


ならばマジックアイテムの剣で斬れば良いのか?


いや、たぶん駄目だろう。


おそらく矢が効かなかったんだ、斬撃が通じるとは思えない。


このモンスターは、物理ダメージ無効化能力を持っているのだろう。


うんうん、本当にスライムっぽい能力だよね。


ならば魔法で攻撃だぜ。


しかも炎が効果的だろう。


「食らえ、ファイアーシャード!」


炎の礫がアシッドスライムを攻め立てる。


魔法がヒットするとジュッと音を鳴らした。


ドロドロの体がビクンっと跳ねる。


酸が何かを溶かしている音ではない。


それは液体が熱で蒸発している音だった。


「効いてるのかな?」


更に──。


「ファイアーシャード!」


ジュッ!


再び炎の礫がヒットすると、アシッドスライムが逃げ出した。


「効いてる効いてる~」


俺は追いかけながら魔法を連打する。


「ファイアーシャード! ファイアーシャード! ファイアーシャード!!」


ジュッ!


ジュッ!!


ジュッ!!!


逃げるアシッドスライムは炎の礫を食らう度に小さくなって行った。


蒸発して体が小さく縮んでいるのだ。


まるで塩を掛けられたナメクジだな。


そして六発目のファイアーシャードを浴びたアシッドスライムは、形が保てなくなったのか、デローンとくたびれる。


まるで酔っぱらいの嘔吐のように床に広がって動かなくなった。


「よし、楽勝だぜ!」


俺の勝利だ。


そして俺は虫除けのランタンを拾うとアシッドスライムが落ちて来た天井の穴を改めて覗き込んだ。


「穴と言うより窪みだな」


天井の穴は低かった。


1メートルほどの高さで石の天井が見える。


たぶんここに潜んで下を誰かが通り過ぎたら降って来るのが必勝パターンなのだろう。


良くあるスライムのハンティングスタイルだな。


「さて、先に進むか──」


こうして俺は新たに姿を変えた閉鎖ダンジョンの奥を目指した。


探して目指すはテイアーの研究室である。


確か青いポーションを持って帰るんだったよな。


あれ、赤いポーションだったっけな?


んー、まあ、どっちでもいいか。


なんなら二つとも持ち帰ればいいんだもの。



【つづく】

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