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第416話【ジャイアントサンライズとの決着】

「ヒルダ、パスだ。受けとれ!」


『はい』


俺は走りながら異次元宝物庫内のヒルダに氷の矢が何本も刺さった壺をパスした。


そして走り続ける俺の背後には巨躯のジャイアントサンライズ(雌)が追いかけて来ている。


「でも、足は遅いな」


ジャイアントサンライズの全長は4メートルほどの球体だ。


その体に長くて細い八本足が生えている。


だが、体重が重いらしく足の運びは遅い。


しかしながら人間の移動速度と比べると一歩一歩の歩幅が広い分だけ移動距離の総合スピードは速い。


人間と比べれば、やはり巨人と競争しているのに近かった。


「よっと──」


『アスラン様、氷の矢です』


「センキュー!」


俺はラージロングボウの弦を引くと異次元宝物庫内のヒルダから氷の矢を受け取った。


「発射っ!!」


そして俺は走りながら前方に光る矢を放つ。


すると真っ直ぐ前方に飛んだ光る矢は、数メートル飛ぶとVの字に曲がると俺の頭を越えて後方に飛んで行く。


ジュッ!!


あー、駄目だ~。


やっぱり冷却水に浸していても氷の矢ではジャイアントサンライズにヒットしないわ~……。


所詮は格安で購入した消耗品のマジックアイテムだぜ。


更なる攻撃力の追加が必要のようだ。


俺は首だけで振り返ると後ろを確認する。


「少し距離が作れたな」


どうやら移動速度は俺のほうが少し速いようだ。


俺はラージロングボウを異次元宝物庫に投げ込むと、代わりに【ロングボウ+1。攻撃力向上】を取り出した。


更にロングボウにフォーカスアイとアイスエンチャントウェポンの魔法を施す。


「さてさて、攻撃力向上の弓に冷却水で冷やした氷の矢。それに氷属性のエンチャント魔法だ。更に弓系のスキルを乗せたらどうなるかな!」


俺は振り返ると立ち止まり弓矢を引いた。


「食らえ、スマッシュアロー!!」


【スマッシュアロー。すべての弓矢で、強打力と攻撃飛距離が1.25倍された一撃を放てるようになる。一日に撃てる回数は、本人レベルの5おきに一回追加される】


ロングボウから発射された矢が飛翔してジャイアントサンライズに飛んで行く。


その矢が燃え上がった。


駄目か!?


「キィーーーー!!」


いや、刺さった!


でも、刺さった矢が燃え尽きる。


しかしながらジャイアントサンライズの移動が止まった。


俺を追い回していた足が止まる。


「効いてるな!」


刺さって直ぐに燃えて無くなったが、ちゃんとダメージは与えているようだ。


俺は更なる矢を構えた。


「もう一丁食らえ、スマッシュアロー!!」


二発目の矢もジャイアントサンライズに刺さってから燃え尽きる。


それでも確実にダメージを与えていた。


行ける!


このまま矢で蜂の巣にできるぞ。


だが、三発目の矢を構えた時に、ジャイアントサンライズが苦しむ以外のリアクションを見せる。


赤々と燃え上がる球体の真ん中に大きな穴が広がりだした。


「えっ、なに……?」


口かな?


口を開けたのか?


その黒い穴からジャイアントサンライズが火を吹いた。


「やばっ!!」


怒涛の火炎が大津波のように迫って来る。


俺は兎に角身を丸めて背を向けた。


熱い!!


その思いすら声に出来ない。


口を開けて叫べない。


息すらできない。


一呼吸でもしたら炎を吸い込んで肺が焼けてしまうだろう。


「くそ……」


ファイアーブレスはほんの一秒程度の時間だった。


だが、俺の白装束はあちらこちらが焦げている。


戦いの前に、念のためにと白装束を冷却水に浸けといて良かったぜ。


じゃなければ、今の攻撃で丸焦げの消し炭だったかもしれないぞ。


「よし、今度は俺の反撃だ!」


もう一発スキルを乗せた氷の矢を食らわせてやる!


「あっ……」


しかし、意気込んで俺がロングボウの弦に手を伸ばすと、スカリと空を切る。


「ロングボウの弦が、燃え落ちてるよ……」


そんなバカな~……。


ロングボウが壊れた。


「ええい、気落ちしている場合じゃあねえ!!」


俺は弦の切れたロングボウを異次元宝物庫に投げ込むと、代わりにショートスピア+2を取り出した。


【ショートスピア+2。攻撃力の向上。インセクト特効】


できればジャイアントサンライズが虫なのを祈る。


虫系ならインセクト特効が効くはずだ。


「しゃ~ねぇ~かぁ~……」


ここから俺は接近戦を覚悟する。


「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、アイスエンチャントウェポン!」


俺は出来るだけのエンチャント魔法を施すと異次元宝物庫内のヒルダに叫んだ。


「ヒルダ、頭から冷却水をぶっ掛けてくれ!!」


『畏まりました、アスラン様』


異次元宝物庫内から手を伸ばしたヒルダが壺に入った冷却水を頭から並々と掛けてくれた。


「冷たっ!!」


でも、ひんやりしていて気持ちいい。


「行くぞ、この太陽野郎!!」


俺はショートスピアを構えて飛び込んだ。


そこにジャイアントサンライズが炎を吹いた。


火炎の波に再び俺は包まれる。


熱い!!


全身が燃える!!


目が開けられない!?


前が見えない!!


だがしかし、俺は矢を真っ直ぐに構えたまま飛んで行った。


もう自分本体が弾丸だ。


そのまま闇雲に突っ込んで行く。


「ワイルドクラッシャー!!」


更にスキルを乗せる。


ズブリと感触があった。


ショートスピアの先がジャイアントサンライズの体に刺さったんだ。


しかし、腕先が焼けるように熱い!!


腕が燃える!!


駄目だ!!


俺はジャイアントサンライズの体を両足で蹴り飛ばすと後方に全力で飛んだ。


その足ですら超熱かった。


「ぐぅはぁぁ……」


マジで糞熱い!!


目を開ければ体のあちらこちらから火が上がっていた。


やべぇ!!


全身が燃え上がるぞ!!


てか、燃え上がった!!


目がぁぁあああ!?


かーおーがーー!!


「ヒルダ、水掛けて、みーずー!!」


『アスラン様、私のお小水でも宜しいでしょうか?』


「なんでもいいから速く!!」


『畏まりました、ただいまお掛けします』


熱さのあまり目が開けられないでのたうち回っていた俺の体にジョボショボと水が掛けられた。


寝転んでいる俺はシャワーのように、その水を顔面で浴びる。


冷たい~……。


気持ちいいな~……。


「ふぅ~……、助かった……」


あれ、ジャイアントサンライズの追撃が来ないぞ?


やっと目を開けられた俺が起き上がり周囲を見回して確認してみれば、燃え上がる太陽の巨躯がグッタリと沈み込んでいた。


動いていない。


「あれ、死んでるの……?」


【おめでとうございます。レベル41に成りました!】


ああ、勝ったようだ。


ジャイアントサンライズとは、思ったよりも脆弱なモンスターのようだ。


HPが低いのだろう。


灼熱対策さえ万全ならば、どうにでもなるっぽい。


「まあ、兎に角勝ったんだ……」


俺はショートスピアを杖代わりに立ち上がった。


「あ~、まだ熱い……」


兎に角俺はこの場を離れたかった。


ジャイアントサンライズは息絶えても燃えているのだ。


脱皮してから一ヶ月ほど種火として燃えているんだから、死んだ遺体が燃え続けるのも無理はないだろう。


兎に角今は村に帰ろう。


今は水浴びがしたくてしたくて仕方なかった……。



【つづく】

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[一言] 一刻を争う事態にも間髪入れず自分のフェチをぶっこむヒルダさんマジやばい!
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