第401話【自作ダンジョンの戦利品】
いま俺は魔王城前の開拓地キャンプに来ている。
時刻は昼前だ。
「わはー、わはー、仕事だー」
「皆で丸太を運ぶぞー」
「「「わっしょい、わっしょい!!」」」
俺はテントの中に居るのだが、外からビキニノームが仕事に励む掛け声が聞こえてくる。
小人でも力を合わせれば丸太ぐらい運搬できるようだ。
いま現在ソドムタウンで雇われた大工たちが大型転送絨毯を敷いとくためのハウスを作っている。
それが完成したら、当分そこが本拠地となって町の開発が進行するだろう。
それまで俺の寝床もこのテントだ。
そして、俺はテント内にヒュパティア婆さんの自作ダンジョンでゲットしてきたマジックアイテムや魔法のスクロールを並べていた。
お約束の新スキルとマジックアイテムのチェックタイムである。
まずは新スキルからだ。
今回は多いぞ。
計四個も新スキルを取得しているのだ。
では、早速一つ目から行こうか。
まず一つ目は──。
【ロックピッキングスキル。一般の鍵を、道具などを使って開けられるようになる】
はい、来ました。
やっとだよ。
これで鍵開けが短時間で済むようになるだろうさ。
続きまして二つ目のスキルは──。
【パッシブ・アイアンハンマーマスタリー。金槌器系武器の戦闘技術が向上】
うんうん、ウォーハンマーのマスタリークラスだね。
これはコレクションって感じのスキルだ。
正直あってもなくっても、どっちでもいいマスタリーだわ。
まあ、もらっておくけれどね。
さて、三つ目は──。
【シークレットドア発見スキル。3メートル以内にある隠し扉や隠し金庫を発見できる確率が向上する】
おお、これが来たか。
まあ、自作ダンジョンで隠し扉ばっかり探したもんな。
こんなスキルだって覚えるさね。
さて、四つ目は──。
【斬撃耐性スキル。斬撃攻撃に対して耐久力が向上する】
おっ、これはいいね。
今回はヒューマンキラーでだいぶ切られたもんな。
これはありがたいぞ。
よし、今回の新スキルはこんなもんだ。
さてさて、続きましてはマジックアイテムの鑑定だぜ。
今回ゲットしたマジックアイテムの数々はこれだ。
マジックアイテムと魔法のスクロールを一気に行くぜ。
【ジャイアントウッドクラブ+2。攻撃力の向上。腕力の向上】
【ビキニアーマー+2。攻撃速度向上。耐火向上】
【ヒューマンキラー+2。人間以外は透化する。命中率向上】
【モンスター女体化リング+1。指輪を装備したモンスターが人間の女性の姿に変化する】
【リラクレイション枕+1。安眠できる】
【白いバスローブ+1。湯上がりの魅力向上】
【魔法の羽ペン+1。文字が綺麗に書ける】
【煩悩を叶える水晶玉+1。水晶玉の中に手を入れた人物が望んだ卑猥な衣装が取り出せる】
【神々のスコップ+3。望んだ鉱物の在りかを示す。堀当てた鉱物が二倍に増幅する。知能が有りアドバイスをくれる】
【魔法サンダーエンチャントウェポン。武器に雷属性の効果を与える。効果時間は5分。回数は本人レベルが4おきに、一日一回ずつ使える。発動条件は魔法名を口に出す】
【魔法ホーリーエンチャントウェポン。武器に聖属性の効果を与える。効果時間は5分。回数は本人レベルが3おきに、一日一回ずつ使える。発動条件は魔法名を口に出す】
【魔法キュアパラライズ。麻痺を回復させる。一日に術者のレベルの15おきに一回使える】
【魔法ホーミングアロー。攻撃力は小。無属性。射程距離15メートルの飛翔体魔法。障害物に隠れている相手にもホーミングして当たる。回数は本人レベルが10おきに、一回ずつ撃てる。発動条件は魔法名を口に出す】
おお、魔法のスクロールは珍しく一枚もかぶらなかったぞ。
すべて覚えていない魔法ばかりだ。
ラッキー。
でも、マジックアイテムは、どこからツッコンでいいのか分からないぐらいだな……。
まずヒューマンキラーは問題無い。
期待通りだからな……。
ビキニアーマーもこんなもんだろ。
リラクレイション枕……。
白いバスローブ……。
魔法の羽ペン……。
これは触れないでおこう。
まあ、どうでもいいや……。
神々のスコップ?
こんなもん、どーでもいいわ!!
どうせ金でも堀当ててウハウハしろってんだろ!!
はっ、くだらねえーよ!!
それよりも問題は……。
モンスター女体化リングってなんだよ!?
モンスターが人間の女性に変化するって、ある意味でロマンを感じますよ!!
これは使いどころに困りますな~!!
いろいろムハムハで期待できぃぃいいでぇええええ!!!
ぐほっ、心臓が!!
落ち着け!!
俺、落ち着けってばよ!!
こ、これはあとでゆっくり検討しよう。
それがいいな……。
そしてやはり大問題なのは、煩悩を叶える水晶玉だろうさ!!
【煩悩を叶える水晶玉+1。水晶玉の中に手を入れた人物が望んだ卑猥な衣装が取り出せる】
これ、やばくね!?
この水晶に手を入れて願うだけで、パンティ~でもブラジャ~でもゲットし放題ってことだろ!!
JKのパンティ~とか、魔乳のブラジャ~とか、指定できるのぉおおおおがあががが!!!
やーべー!!!
心臓がぁぁあああ!!!
糞呪いがぁぁあああ!!!
ぜぇはー、ぜぇはー……。
ふぅ~~……。
これで理解できたぞ。
何故にあのダンジョンがビキニアーマーで満ちていたかが!!
ルイレアールのヤツがこの水晶玉からビキニアーマーを出しまくったんだ!
絶対にそうだぞ!!
ならば、俺が望めば……。
うぐぐぐぅぅ……。
畜生……。
俺が水晶に手を入れようとすると心臓が痛み出しやがる……。
ならば、仕方無いな。
別の人に託してみるか──。
俺は水晶を両手で持ってテントを出た。
するとテント前ではいろいろな人物が工事作業に励んでいる。
俺は目の前を走り過ぎようとした一匹のビキニノームを呼び止めた。
こいつで実験してみよう。
「おい、ビキニノーム。ちょっといいか?」
「な~んですか?」
「この水晶に手をツッコンで見ろ」
「それはもしかして煩悩を叶えてくれる水晶だべか?」
「ああ、そうだ。知ってたか」
「昔それからビキニアーマーを貰っただ」
「じゃあもう一度くれてやる。さあ、手を入れろ」
「やったー」
喜んで水晶に手を伸ばすビキニノーム。
するとビキニノームの手が水晶の中にスルリと入って行く。
まるで水中に手を入れるかのようにスムーズだった。
そして何かを掴んだのか、手を水晶から引っこ抜く。
その手には新品のビキニアーマーが握られていた。
「わーい、新品のビキニアーマーだ~。やったー、やったー」
ビキニノームは喜びながら走り去って行った。
なるほど、説明通りだ。
本当に煩悩のままの衣装が水晶から取り出せるようだな。
ならば──。
「なあ、ゴリ……」
「なんだ、アスラン?」
俺は作業中のゴリに声を掛けた。
「この水晶に手を入れてみろ。何らかの衣類が取り出せるマジックアイテムだからよ」
「なんか珍しい物を拾ってきたようだな。面白い、試してみよう」
ゴリは疑うことを知らずに水晶玉に手を入れた。
「おっ、なんか在るぞ?」
「それを掴んで引っこ抜け」
「ああ、分かった」
ゴリが水晶から手を引っこ抜くと、その手には黒い布切れが握られていた。
「なんだ、これ?」
ゴリがそれを両手で広げる。
「アスラン、なんだよこれ。ブーメランパンツじゃあねえか?」
「そのようだな……」
なんだ、自分用か?
もしかしてこの水晶から取り出せる物は、自分用なのか?
いや、まだサンプルが少なすぎる。
まだゴリとビキニノームだけだ。
結論を出すのは早いだろう。
よし、もっと試してみよう。
俺はゴリと分かれて凶介の元に近寄った。
そして凶介にも水晶に手を入れさせる。
凶介は水晶内から引っこ抜いた物を広げて見せた。
「なんですか、アニキ。これ、褌ですか?」
「褌だな……」
やはりそうだ……。
この水晶は、それを取り出す人物が着用する煩悩を具現化しているんだ。
ならば──。
俺は焚き火の前で昼飯の準備をしている女性グループを見た。
そこにはスカル姉さん、スバルちゃん、ユキちゃん、凶子の四人が居る。
「よし、今度は女の子たちで試そうかなぁあがあかわががが!!!」
やーべー、心臓がぁぁあああ!!!
【実験は次回につづく】