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第321話【ラットマンの群れ】

さてさて、俺VSラットマンの群れだ。


「軽く蹴散らしますか~」


俺は部屋の中央まで歩むと腰の鞘からロングソード二本を両手で抜いた。


本来なら通路に入って戦うのが一対多のセオリーなのだが、通路にはレイラ姫様とルークさんが隠れている。


インビシブルの魔法で潜んでいるとはいえ、あの二人を戦闘に巻き込めないだろう。


それに相手はラットマンだ。


ラットマンは体格も戦力もゴブリンと同等ぐらいの下級モンスターのはず。


かなーーり、弱い。


ならば百匹だろうと千匹だろうと俺一人で十分だ。


無双できる。


それはイルミナルの町に来る前のトンネルで証明されているのだ。


だからこれは戦闘と言うより経験値稼ぎの作業だろう。


ロープレでも有るよね。


それだよそれ。


いや、経験値稼ぎにもならないだろうさ。


兎に角、雑魚過ぎる。


さて、気楽に行きますか。


「チュー、チュー!!」


俺が双剣を構えて睨みを効かせていると、一匹のラットマンがショートボウを撃って来た。


だが、矢は俺の寸前で不自然に曲がり狙いを外す。


「チュチュー!?」


更にラットマンが二発目の矢を放ったが、それも不自然なカーブを描いて狙いを外した。


それは、躱鎧のしたに下げたマジックアイテムの効果である。


【シルバーネックレス+2。矢の直撃を一回だけ避ける。矢の直撃を一回だけ避ける】


このマジックアイテムは、矢を自動で二回だけ避けられるのだ。


前にお尻に矢を食らったから、今回はちゃんと装備しましたわん。


「チューーー!!」


癇癪を起こしたラットマンがショートボウを地面に叩きつけると腰からショートソードを引き抜いた。


そして、憤怒のまま飛び掛かるように襲い掛かって来た。


「血気盛んだな! よっと!!」


俺は双剣を振るわずに右足を振るう。


ハイキックで飛び掛かって来たラットマンの顔面を横から蹴り殴った。


「ジューーー!!」


空中で顔面をハイキックで蹴られたラットマンの体が風車のようにクルクルと三度回って頭から床に落ちた。


ドシャリっと鈍い音が鳴る。


KO!!


それを切っ掛けに、室内が静まり帰った。


「チュ、チュー……」


ラットマンたちが唖然としている。


一蹴りで俺の戦力が鑑みれたようだな。


逃げるなら追わないぜ、逃がしてやるよ。


少ない経験値のためにカロリーを消費するのも馬鹿らしいからな。


だが、次の瞬間である。


俺の足が床に沈み始めた。


「な、なんだ!?」


俺の足がズブズブと石の床に沈んで行くのだ。


もう膝まで埋まっている。


まるで泥の沼地に飛び込んだようだった。


「な、何これ!?」


俺が慌てて居ると、ラットマンたちが怪しく微笑みながら間合いを詰めて来る。


「ちゅー、ちゅー!!」


うわ、やば!?


なんだ、これは!?


ラットマンたちが間合いを詰めて来る中で、俺がキョロキョロしていると、一匹のラットマンと目が合った。


そのラットマンは、仲間の輪から離れている。


そして、俺と目が合うと、気まずそうに目を反らしたのだ。


あーやーしーいー!?


そいつは木のスタッフを着いている。


ラットマンメイジかな?


俺がネーム判定をすると、そいつは【ラットマンウィザード】と出る。


うん、間違いない。


あいつが俺の足元を沼地に変えているヤツだわ。


ならばと俺はラットマンウィザードに攻撃魔法を放つ。


「ライトニングボルト!!」


青白い電撃が、光の速さで室内を走った。


「ジューーー!!」


ラットマンウィザードは一撃で黒焦げと成る。


黒焦げのネズミは立ったままプスプスと煙りを上げていた。


それを別のラットマンたちが見て固まっている。


ビックリして固まってるのかな?


そして、俺の埋もれた足は石畳の上にあった。


もう、埋もれていないのだ。


幻術だったのかな?


とりあえず一番の邪魔者は倒したぞ。


さて、雑魚どもはどうするかな?


軽く脅してやるか。


「ファイアーボール!!」


俺が無作為に火球を投げると数匹のラットマンが爆風に巻き込まれて吹っ飛んだ。


するとラットマンたちは武器を投げ捨てて別の通路から逃げて行く。


「チューーー!!!」


よし、逃げたかな。


まあ、武器を捨てて逃げたってことは戦意喪失の降伏宣言だから、生かして置いてやるか。


追ってまで殺す理由もなかろう。


「レイラ姫様、ルークさん、敵は去ったから、出て来ていいよ~」


俺が言うと、透明になっていた二人が姿を現す。


「つ、強いね、アスランくん……」


「が、がるる……」


「それほどでもないさ。それよりも出口に向かおうぜ」


「あ、ああ……」


「がるる……」


こうして再び俺たちはダンジョンを進んだ。


そして、しばらく歩くとダンジョンに入って来た部屋に到着する。


ダンジョンに入って十一時間は過ぎただろう。


兎に角これで二人は外に出れる。


「なあ、ルークさん」


「なんだい?」


「俺はここに残るよ」


「えっ、何故!?」


「このダンジョンで調べたいことがあるんだ」


「でも、このダンジョンはランダムだ。いつ姿が変わるか分からないんだぞ!!」


「まあ、なんとかなるさ」


「もしも形が変わって、出口が分からない場所に移動したらどうするんだい!?」


「それは対策が有るから大丈夫だ」


そう、大丈夫である。


何せ俺には転送絨毯が有るからな。


いざとなったらソドムタウンに帰ればいいだけだ。


「でも、しかし……」


「ルークさん、あんたはレイラ姫様を町まで送ってやりなよ。それがあんたの役目だろ。このダンジョンから呪いを解く鍵を探し出すのはプロの冒険者に任せなってばよ」


「だ、だが……」


「だがもしかしもね~よ。ほら、さっさと素人は帰れって!」


俺は見えない扉の前に立つルークさんを押してダンジョンの外に追いやる。


「さあ、レイラ姫様も帰りな」


俺がレイラ姫様に促すと、彼女は黙って見えない扉のほうに進んだ。


そして、見えない扉を潜りながら彼女が最後に言った。


「お気をつけて……」


「えっ!?」


その一言を最後にレイラ姫様はダンジョンを出て行った。


あれ?


しゃべれるの??



【つづく】

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