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第317話【落とし穴】

ひゅ~~~~~んん。


「落ちるもんかぁぁあああが!!」


俺は1.5×1.5メートルほどの落とし穴を落下し続けた。


壁に手は届かない。


だが、藁でも何でもいいから捕まって、落下を止めなければならない。


このままでは地面に激突してグシャリだわ!!


「ならばっ!!」


俺は両手のロングソードを左右に伸ばして壁に突き立てた。


ガリガリと耳障りな音を鳴らしながらも急降下を続ける俺の速度が緩んで行く。


俺の両サイドの壁でロングソード二本が壁を削りながら火花を散らしていた。


「何糞ぉおお!!」


両腕を力ませブレーキに奮闘する俺の降下が緩み出す。


「もうちょいだ!!」


止まった。


やっと止まったぞ。


「と、止まってくれたか……」


しかし、まだ高いな……。


両腕を左右に伸ばして宙に浮く俺の足元を見れば、落とし穴の深い深い闇がまだまだ続いていた。


俺は空中でブランブランとしている。


こりゃあ落ちたら木っ端微塵だな……。


さて、どうするか……。


上に登るか、下に降りるかだ。


だいぶ落ちたから上に登るのはキツそうだな。


何せ今こうして落下しないで耐えているだけでも大変なのに、登るなんて出来ないだろう。


だが、底の見えない奈落に降りて行くのも怖いもんだ。


しかし、ダンジョンの出口は上に在る。


やはり上には戻らなければならない。


「これは、困ったぞ……」


そして、俺が悩んでいると、頭上から唸り音が聞こえて来る。


空気の振動?


なんだ?


スゲー、ゴゴゴゴゴッて聞こえて来ますよ……。


なに!?


水っ!!


「ぶぁあぉあぁああ!!!」


突如である。


頭上から大量の水が降ってきたのだ。


それはまるで滝だった。


やべやべやべ!!


落ちる落ちる落ちる!!


でも、耐える!!!


ひぐぅぅううう!!!


くーーー!!


と、止まった……。


水が止まったぞ……。


危ないところだったぜ。


まるで人を汚物のように流すつもりかよ!!


もう、(ふん)っだ!!


兎に角、また水が降って来たら溜まらんから早く降りよう。


俺は水から逃げるように、ゆるゆると下に降りて行った。


ロングソードに入れる力を少し緩めるとズルズルと下がって行くのである。


こえ~、この方法で落とし穴を降りるのが怖いよ……。


そして、どのぐらい降りたころだろうか。


底は見えてこないが、壁に人が屈んで通れそうなぐらいの横穴が一つ空いていた。


うむ、これはここに入ろうかな。


何が有るか分からんが、このまま落とし穴の底まで降りるよりマシだろう。


俺は横穴に飛び込んだ。


そして四つん這いでハイハイしながら進んで行く。


かなりの上り坂だな。


兎に角進もう。


んん、Yの字に出たぞ。


正確には逆Yの字だな。


俺が上って来た道と、もう一つ上る坂が交わって、一本の坂道に続いている。


うん、これは迷うことは無いだろう。


上るしかない。


何せ出入り口の見えない扉が在るのは上の階だもんな。


でも、そろそろ手と膝が痛くなってきたわ……。


何せずっと赤ちゃんのようにハイハイしながら、かなり急な坂を上っているのだものな。


まあ、しゃあないか。


くだらない落とし穴なんかに引っ掛かった俺が悪いのだ。


だが、落とし穴に落ちるほど俺に矢を撃って来たラットマンどもが、もっと悪い。


悪はラットマンどもだ。


絶対に仕返ししてやるぞ。


それにしても、この坂は長いな。


坂もだんだんと急になってないか。


そろそろ上るのも辛くなって来たぞ。


んん?


まただ……。


また、ゴゴゴゴゴッて音が聞こえますよ……。


水かな?


水が流れて来るのかな?


うひゃーーー!!


やっぱり来たーーー!!


水が流れて来たぞ!!


そして俺も流れてます!!


流されてます!!


ヤバイ、このままだと水に流されて、また落とし穴まで戻されるぞ!!


そうだ!!


逆Yの字で別のほうに流されよう。


少なくとも同じ落とし穴には流されまい。


あっ、逆Yの字が見えて来たぞ!!


上手く逆側に流されなくては!!


「それっ!!」


キィーーーーン!!


あっ、ああ……。


逆Yの字の分かれ道に股が引っ掛かった。


金玉を打ったわん……。


そうか……。


逆Yの字じゃなくて、人の字だな、この通路は……。


自分の状態で分かったわ……。


でも、スゲーいてー……。


まあ、でも、なんとか止まったぞ……。


あー、でも、水が止まらないわ……。


駄目だ……。


金玉の痛みで力が思うところに入らない……。


な、流されちゃう……。


また、(ふん)のように流されるよ……。


せめて逆側に流されなくては……。


うう~~んしよ。


よし、上手く行ったぞ……。


でも、駄目だ……。


流されてますわ~……。


もう少しダメージからの回復に時間が掛かりそうだ……。


あ、ヒール掛けてみるかな……?


でも、金玉の痛みにヒールって効くのかな……?


まあ、試してみるか……。


「セ、セルフヒール……」


おお、効いた!!


金玉の痛みが消えたぞ!!


ヒールって、金的のダメージも回復してくれるんだ!!


すげー、万能だな!!


でも、水に流される俺は止まりませんがな。


俺はどこまで流されるの!?


あっ、出口だ!!


そして、ダイブ!!


それからの~~、着地失敗!!


床に叩き付けられました!!


いてーー!!


着地失敗で延髄から落ちましたわ!!


ジャーマンスープレックスを喰らい慣れしてなかったら死んでたぞ!!


あれ、ここどこだ?


今度はどこに出ましたかな?


10メートル四方の部屋だ。


天井は30メートルほどある。


そして、20メートルぐらい上のほうから幾つか穴が空いていて、そこから水がチョロチョロと流れ出ていた。


俺はその穴のどれかから落ちて来たのだろう。


「ここは、なんの部屋だ?」


周りを見回したが、俺の目線には出入り口は無い。


流れて来た水を排水する小さな穴が幾つか有るだけだ。


その穴は10センチ程とかなり小さい。


「これは、閉じ込められたかな……?」


壁を良く良く見れば、若干だが反り返っているうえに、途中にネズミ返しのように段差まで有りやがる。


これは登れないように工夫されていやがるぞ……。


なんか、スゲー、意地悪されてますよね……。


これ、登れるかな……?


難しいよね……。


壁が濡れててヌルヌルだしさ。


俺、完全に閉じ込められましたか?


なんか、今回は散々だよ……。



【つづく】

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