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第304話【分かれ道】

俺は逃げ出すようにイソップ亭を飛び出して、すぐさまターナー村をアキレスで走り出た。


流石に店のマスターのパンツ内に激辛熱々唐辛子地獄風石鍋スープを容赦無く注ぎ込んだのだ。


もう穏やかな処理は出来ないだろう。


悶絶していたマスターが激痛から回復すると、双眸を真っ赤に染め上げて包丁を振り回しながら俺に襲い掛かって来たのだ。


マスターは血走る眼光で包丁を振り回して危なかったので、俺は低いタックルで腰元に滑り込むと、素早く回るようにバックを取り直してからジャーマンスープレックスで投げ飛ばしたのである。


しかも豪快に投げっぱなしでだ。


もう、その後は全速力で逃げましたよ。


捕まって牢獄に繋がれたら堪らないものね。


まあ、あんな小さな村に番兵も居ないだろうし、牢獄すら無いだろうけれどさ。


兎に角騒ぎを起こしたのだ。


結論、ここは逃げるしかない……。


そんな感じでアキレスをしばらく全速力で走らせた俺は、スピードを緩めると後方を確認した。


もうターナー村は見えない。


よし、追手も居ないな。


逃げきれたぜ……。


畜生めが、朝から酷い目にあったな。


いや、もう昼か……。


あー、飯を食いそびれたわ~。


しゃあねえか、保存食でも噛りながら先を急ぐかな。


あっ、そうだ。


レベルアップもしてたんだ。


まあ、三日月傷のケルベロスを倒したあとに、数匹のケルベロスも倒したもんな。


経験値的にもレベルが上がる寸前だったんだろうさ。


それにしても酒場のマスターに激辛勝負で勝っただけでレベルアップするとは思わなかったぜ。


よしよし、気分転換に、とりあえず新スキルチェックでもしてみようかな~。


「ステータス画面かもーん!」


あらら~……。


今回は一つしか覚えてないよ。


イケズだな~。


どれどれ~。


【激辛耐性スキル。激辛による我慢態勢が向上する】


くそっ!!


今回はネタかよ!!


怒りのあまり俺は手綱を強く引っ張った。


すると驚いたアキレスがヒヒィ~ンっと叫んで仰け反った。


「危ねえ!!」


おおう……。


危うく振り落とされるところだったぜ。


こんなところで詰まらない理由で事故ってられないわん。


まあ、今回のスキルは諦めて先に進むかな……。


そんな感じで俺がアキレスで森の中の道を進んでいると、二股に分かれる峠に行き当たった。


上り坂と下り坂だ。


二つに分かれる道の間には、粗末な看板が立てられている。


看板は木の板でボロボロだったが、書かれた文字はハッキリと読み取れた。


「なになに、右が遠回りだが安全な道。左は危険だが近道になるトンネルだって?」


上がトンネルで、下が遠回りか……。


うむ、この先に次の村であるザナドゥーがあるのか。


まあ、この看板を見るからに進む道は決まったな。


右が遠回りで安全。


左が近道で危険なトンネルだ。


ならば迷うことは何も無いだろう。


右でも左でも無く、ド真ん中を進むべきだ!!


そうだ、真ん中を突き進めばイーブンだぜ!!


迷う必要が無くなるってもんだ!!


よーし、レッツらゴーだべさ!!


こうして俺は道無き道を真っ直ぐに突き進んだ。


しかし、森の中は険しい。


やがてブッシュが濃くなり、馬での歩行も厳しくなる。


「ここまでか、アキレスから降りよう……」


俺はアキレスをトロフィーに戻すと徒歩で山の中を突き進んだ。


ショートソードで邪魔な藪を切り進む。


「畜生が……。あの看板は嘘ばかりだぜ。こんな険しい道が中間レベルの道だとは思えないぞ……」


ついつい独り言が漏れてしまった。


愚痴っても仕方がない。


それにしても失敗だったわ……。


これってもしかしてさ、真ん中が一番厳しい道じゃあね?


てか、もう道なんて無いしさ。


もう山の道無き道を奮闘中だぜ。


そもそも道が無かったもんな。


これは今後の教訓になるだろう。


看板の警告は守りましょうねってさ。


兎に角だ。


今から右か左に曲がったら、正道に戻れるかな?


戻れなかったら、また森で遭難かな?


それはやだな、早く道を正そう。


それにしても、だいぶ手間取ったから日が落ち始めたぞ。


空が暗くなり始めたわ。


これは早く正道に戻らねばなるまい。


そうなると、右か左かだ……。


遅れを取り戻すために左かな~。


遠回りより近道のトンネルで冒険だよね。


よし、ここから左に直角に曲がるぞ!


こうして正道を目指した俺は、運が良かったのか、暗くなる前に山道に出れた。


しかし、周囲は暗くなり始めている。


それにトンネルは見当たらない。


空を見上げれば、もうそろそろ夜が来そうである。


「しゃあないか……。安全そうな場所を探してキャンプでも張るかな。今日はここら辺でソドムタウンに帰ろうか。……ん?」


山の中腹から麓のほうを見下ろした俺は、少し下のほうに明かりを見つける。


「人かな?」


俺は双眼鏡を異次元宝物庫から出すと明かりを覗き見た。


「家だな。サイズからすると宿屋サイズの家かな?」


それは、そこそこ大きな家だった。


だが、森の中にポツンと一軒だけ建っている。


外観からして宿屋の可能性も高そうだ。


金持ちが住んでそうな見栄を張った外観ではないのだ。


だが、今日の俺は迷わず諦める。


「うん、距離も有るし無理はよそう。それに何だか嫌な予感がする。あそこには魔女が居そうな気がするんだよね~」


俺はこうして安全そうな岩陰を探し当てると、その陰にキャンプを張った。


ソドムタウンに転送絨毯で帰れば温かい飯も温かいベッドも有るのだ。


そう、無理する必要はない。


特に今日は、無理は禁物だわ。



【つづく】



ちなみに予感は正解である。


あそこには少女Aが巣くっていました。

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