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第287話【繁殖期】

俺はソドムタウンの郊外に借りたログハウスで朝食を頂いていた。


テーブルには一緒に住んでいる面々が並んでいる。


スカル姉さん、ガイア、ゴリ、バイマン、オアイドスだ。


朝食を作ってくれたのはミイラメイドのプロ子である。


目玉焼きにソーセージとパン。


ドジっ娘でも作れる簡単な料理である。


俺が目玉焼きを頬張ると、口の中でガリっと固い音が鳴った。


卵の殻だな……。


流石はドジっ娘だわ……。


突っ込む気にもならん……。


そう言えば──。


「スカル姉さん、あのさ?」


「なんだ、アスラン?」


「狼たちはどうした?」


スカル姉さんは、皿の上のソーセージをフォークで突っつきながら答えた。


「いま皆で食べてるじゃあないか」


ガシャン!


スカル姉さん以外全員がフォークを皿の上に落とした。


男たちは顔を青くさせ、ガイアは涙を浮かべて泣きそうな顔をしている。


「ほら、家は大飯喰らいが多いじゃんか」


皆がゴリを見詰めた。


「えっ、俺のせいか……」


「冗談だよ。外の納屋に居る。数が増えたからな」


「へぇ……?」


数が増えたって、なんだろう?


俺は盾から狼たちを召喚してないぞ。


それとも誰かが勝手に盾から狼を召喚したのか?


いや、それはないぞ。


だって盾は異次元宝物庫内に在るのだから。


「どう言うことだ、スカル姉さん?」


「何が?」


「数が増えたって?」


「あー。子供を産んだんだ」


「えっ、マジ……」


「しかも三匹が三匹も産むから、九頭も増えたぞ」


「マジか……」


「だからそろそろ間引いてソーセージにでもするか?」


ガシャン!!


またスカル姉さん以外がフォークを皿の上に落とした。


「冗談だよ。本気にするな」


俺はパンを咥えながら席を立つ。


「はっふはふはふぅ~」


「立ちながら喋るな。それと喋りながら食べるな。あと、座って食べる」


スカル姉さんに注意された俺は、席に戻るとコーヒーでパンを流し込んだ。


「ちょっと狼たちを見て来るわ」


「いってらっしゃい」


「ガイアも行く~」


俺とガイアは食卓を離れて外の納屋を目指した。


まあ、貧乏一家なので納屋には馬が一頭も居ないんだけどね。


だから狼専用の納屋になっているのか。


俺が納屋に入ると藁の上で三匹の狼が子供たちに乳をあげていた。


どうやら狼たちも朝飯のようだ。


「本当だ、子供を産んでやがるわ……」


「赤ちゃん、かわいいね~」


駆け寄ったガイアがしゃがみ込んで、乳を吸う子犬を撫で回す。


あー、子犬じゃなくて子狼かな。


それにしても一気に九頭も増えるのか……。


これはまずったかも知れんな。


まさか雄と雌が三頭ずついるとはおもわなかったぜ。


てか、盾を使って二回召喚したので雄と雌の数が揃ったのか。


それでカップルが丁度三組できたわけだな。


偶然って怖いわ~……。


てか、こいつらやっぱり魔法の生命体じゃあないぞ、普通の狼と一緒だわ。


このままではドンドン増えかねない。


矯正手術か!?


チ◯コ抜くか!?


うわー、でもそれは可哀想だな……。


同じ雄としてチ◯コをもがれるのは想像したくないわ……。


てか、あれ?


そう言えば雄の三匹はどこに行ったんだ?


「ガルゥ」


うわ!!


びっくりした!!


俺が振り返れば三匹の雄狼たちが立っていた。


三匹は口にウサギやヘビの死体を咥えている。


なに、こいつら?


狩りでもしてきたのかよ?


逞しいな……。


ちゃんと嫁や子供たちを養ってやがるぜ。


あれ、一匹だけ微妙に大きくね?


いや、やっぱり大きいよね。


こいつが群れのボスかな?


「じゃあ、お前が群れのリーダーね。アーノルド」


「バウッ!」


返事をしたよ……。


こいつがやっぱりリーダーなのね。


しかも名前がアーノルドなのも当たりなのかな?


早朝の勤務から帰って来た雄狼たちは、自分の嫁の元に行くと、狩って来た獲物を渡す。


嫁たちは、その獲物をハグハグと食べていた。


スカル姉さんは、ちゃんと餌をあげてるのかな?


それとも足りてないのかな?


いや、本能的に狩りをしているのか?


まあ、なんでもいいや。


せっかく増えた家族だから、成長を暖かく見守ってやるかな。


でも、増えすぎるのは問題になるぞ……。


これは早く魔王城をゲットして、こいつらが伸び伸びと走り回れるほどのスペースを、確保してやらねばなるまい。


そうだよ!


魔王城周辺の警護は、こいつらに任せれば良くね?


それなら数が増えても問題なかろう。


ナイスアイデアかな!?


んー……。


でも、安直すぎるかな?


まあ、子狼の仕付だけはちゃんとやって貰わないとならんだろ。


飼い主がペットに噛まれたら堪らんからな。


何せ相手は大型犬以上のダイナウルフ級だもの。


噛まれたら簡単に腕がもげそうだわ……。


今度スカル姉さんに、ブリーダーの知り合いが居ないか訊いてみるか。


いや、相手がダイナウルフ級だからモンスターテイマーかな?


でも、モンスターテイマーなんてクラスは、冒険者ギルドでも見たことが無いぞ……。


これはギルガメッシュの専門だな。


よし、これから冒険者ギルドに行って訊いてみるかな。


何せ久しぶりだしさ。


たまには顔を出さないと死んだと勘違いされかねんからな。


「ガイア、俺は出掛けてくるわ~」


「ガイアも行く~」


うわ~、面倒臭いな……。


幼女は付いてくるなよ。


「ガイアは留守番だ。パンダと遊んでろよ」


「パンダはパンダで飽きた」


意味が分からんが、飽きたのね。


ならば~。


「じゃあこれで暇潰しをしていろよ」


「ぬにゅ?」


俺は異次元宝物庫から首を振るう赤べこ+1を取り出してガイアに手渡した。


【首を振るう赤べこ+1。首を揺らすと暇潰しになる】


「それで遊んでろ」


「うん……」


ガイアは赤べこを床に置いて首を突っつき揺らして遊び出す。


幼女はぼぉ~っとした眼差しで、揺れる赤べこの頭を狼たちと一緒に眺めていた。


流石はプラス1のマジックアイテムだな。


マジで暇潰しになってるよ……。


こうして俺は、朝から冒険者ギルドに向かった。



【つづく】

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