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第278話【塔の上の実験室】

俺は今現在バーバラの洞窟に居た。


グレーテの毒を食らってから四日が過ぎている。


そろそろ行動を起こす時だ。


俺はヒルダに手伝ってもらい防具を装備していた。


片腕なので装備すらままならないのだ。


体にはいつも通りレザーアーマー+3を着込み、その上からウィザードローブ+3を纏った。


両足にプレートブーツ+2を履いて、片手にはディフェンスガントレット+2を右手にだけ装着した。


本来ならば、左腕にはプレートメイルの左腕+3とバックラー+1を装備していたのだが、その左腕が肩から無くなっているのだ、なので装着もできない。


それと、プレートメイルの左腕とバックラー+1には毒針が貫通して穴が開いていたのだが、いつの間にか穴が塞がっていた。


マジックアイテムには自己修復機能が有るとは聞いていたが、穴ぐらいなら塞がるのね、凄いや。


だが、俺の左腕は勝手に生えてこない。


しかし、あと少しでレベル30になる。


レベル30になったらボーナスタイムがあるのだ。


悔しいが今回ばかりは糞女神に懇願して左腕を元通りに治してもらうつもりである。


それまでは右腕一本で頑張らんとならん。


俺は腰にセルバンテスの黄金剣をぶら下げた。


もう、本気モードである。


余裕なんて見せてられない、


「よし、行くか~」


俺はヒルダに手伝ってもらい防具を身に付け終わると、そう言いながら腰を左右に振った。


俺の背骨が柔軟運動でコキコキとなる。


「アスランさま。わたくしはどういたしましょう?」


「ヒルダは異次元宝物庫内に待機していてくれ。万一の時だけ、助けを頼むかもしれないからさ」


「畏まりました」


ヒルダはお辞儀をすると異次元宝物庫の中に消えて行く。


「アスランは、これからどうするの?」


俺が持ち込んだ長ソファーに寝転んでいたバーバラが訊いて来たので俺は答えた。


「魔法使いの塔に行って、ベェノムに寄生された魔法使いをぶった押す」


「でも、魔法使いの塔には入れないわよ?」


「それは、お前たちだけだろ」


「え?」


「俺は人間だ。だから結界に阻まれないんだよ。だから壁を越えて森にも入ってこれたんだ」


「あー、そうかー」


「よし、じゃあ出発するぞ、バーバラ」


「えっ、私も? だって塔には入れないんだよ」


「道案内だ」


「あー、そうか。分かったわ」


バーバラは柔軟な体をクルリと回転させると、良く分からない体術でソファーから立ち上がる。


「じゃあ行きましょうか~」


「おう」


バーバラが笑顔で洞窟を出て行ったので、俺はその後ろに続いた。


「でぁぁあああ!!」


「とりゃぁぁあ!!」


二人で洞窟を出たところで蠍男爵婦人のグレーテと百足女郎のアイラが戦っていた。


あれ、喧嘩かな?


「あいつら、何しとん?」


「お母様たちは永遠のライバルですからいつものことよ。あんな戦いを、私が産まれる前から繰り広げているらしいから」


「呑気な話だな……」


なるほどね。


仲がいいんだ。


この毒の森が見た目以上に平和なわけだわな。


まあ、戦いたいならば、好きなだけ戦っていればいいさ。


俺が戦うべき相手はベェノムだがな。


「じゃあ行こうか、バーバラ」


「うん」


俺はバーバラと並んで毒の森を進んだ。


目指すは魔法使いブライの塔だ。


道中確かに巨大昆虫の気配は何度か有ったが、流石は蠍美少女バーバラの同行があったから、巨大サソリにも巨大ムカデにも襲われなかった。


そんなわけですんなり魔法使いの塔に到着できた。


下から上を見上げれば、塔の高さは25メートルほどの高さだろうか。


太い柱状態の塔の周りに螺旋階段が巻き付き最上階まで伸びている。


最上階には古城のような屋敷が建造されていた。


「私はここまでよ。私たち昆虫の眷族は、塔に登れないし近付けもしないわ」


虫除けの結界のせいだろう。


「そうか……」


ここからは一人か……。


ちょっと寂しいな……。


まあ、しゃ~ないか。


バーバラのビキニアーマーが名残惜しいぞ。


兎に角、最上階を目指そうかな。


「じゃあ行って来るぜ、バーバラ」


塔に向かって歩き出した俺にバーバラが言う。


「気を付けてね、アスラン。ベェノムはずる賢くって危険よ……」


「大丈夫だよ。慣れてるから」


うん、ズル賢いヤツには慣れているもんな。


何せ俺が一番ズル賢いんだもの……。


思想が同じヤツと戦うのは面倒臭そうだぜ。


なんだろう……。


同族嫌悪ってやつかな?


まあ、どうにでもなるだろう。


ベェノムがどんだけズルいか知らんが、俺よりズル賢くないだろうさ。


兎に角だ。なにがなんでも勝ってやる。


俺は塔の階段の手前で上を見上げた。


「さて、登ろうかな」


螺旋階段の幅は1メートルも無い。


それに手摺すら無い。


しかし、登るにつれて高さを増して行く景色は綺麗だった。


森の木々より高く上がると爽快な景色が広がっているのだ。


「こう高い場所から見渡すと、なんだか遠くに来たんだって感じだわな〜」


俺が呑気に景色を楽しみながら螺旋階段を登って行くと、最上階のテラスに到着した。


俺は古城の門前に立つ。


そんな巨大な門でもないが、一般の家庭には無いサイズの扉だ。


俺は両開きの扉を片手で開けた。


ギィギィーーっと奇怪な音を鳴らしながら扉が開くと、最上階の内部が伺える。


そこは古城内部が丸ごと一部屋の広い構造だった。


「ワンルームか〜」


なるほどね~。


使い勝手やインテリアにこだわらない魔法使いらしい部屋だわ。


至る所に本棚が並んで、テーブルの上と言う上に試験管やらなんやらの実験器具が蹂躙していた。


部屋の中に有るのは本棚から溢れた本の山と、丸められた羊皮紙の束、それと実験器具ばかりだ。


まさに実験室だな。


しかもかなりマッドサイエンティストっぽい実験室だわ。


さて、件のベェノムさんはどこかな?


居ないぞ?


本に埋もれているのかな?


あっ、ベッド発見。


ここに寝てるのかな?


ベッドの上のシーツには、大きな膨らみが出来ていた。


シーツにくるまって寝ているのかな?


「それっ!」


俺が思いきってシーツを捲ったが、シーツの中は本や羊皮紙の山だった。


「あれ、居ないぞ?」


何処に居るんだ?


ベェノムどころかブライの遺体すら無いぞ?


マジ、どこ行ったんだ?


トイレかな?


んー?


なんだろう、あれ?


部屋の奥に大きなシーツを被せられた巨大な物が在った。


高さは3メートルほどある巨大な物体にシーツが被せられているのだ。


どれどれ、好奇心に誘われるままにシーツを剥ぐって見るかな。


「そーーれ!!」


俺は片手でシーツを剥ぎ取った。


そして、シーツの中から現れたのは、巨大な水槽だった。


中には人が浮かんで居た。


直立不動の男性で、頭はスキンヘッドで眉毛も無い。


体格はマッチョマンだ。


股間を見てみればチ◯毛が生えてなかった。


ツルンツルンな上に、チ◯コも生えて無かった。


「生殖器が無いじゃんか……。哀れなヤツだな……」


んっ?


水槽の下にラベルが貼ってあった。


何か書いてある。


「実験体-18号……」


へぇ~、18号なんだ~。


俺がラベルから視線を外して上を見上げた時である。


水槽の中の男と目が合った。


「へっ……?」


目が合っちゃったわ~……。


キモ……。


すると水槽の中の男が腕を上げた。


その手の中にはボタンがあるのだ。


「ボタン……?」


俺が大人しく見ていたら、男は水槽の中でボタンを押した。


すると水槽の天井が自動で開く。


プシューと音を鳴らして扉が開くと、水槽の中から男が出て来る。


「ぐっはぁぁああーー!!」


上半身だけ水槽から出した男は、必死な表情で口から液体を吐き散らす。


うわ、汚いな!!


そして何度か液体を吐いて落ち着いた男は俺を見ながら言った。


「いらっしゃい……」


「ど、どうも……」


「でぇ、誰やねん?」


「冒険者アスランです……」


「へぇ~~」



【つづく】

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